非機能性下垂体腺腫に対するガンマナイフ治療後の下垂体機能:三者負荷試験による評価

公開日:

2019年4月26日  

最終更新日:

2019年4月27日

Hypopituitarism after Gamma Knife surgery for postoperative nonfunctioning pituitary adenoma.

Author:

Oh JW  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Yonsei University Wonju College of Medicine, Wonju, Seoul, Korea.

⇒ PubMedで読む[PMID:30544293]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2018 Dec
巻数:129(Suppl1)
開始ページ:47

【背景】

非機能性下垂体腺腫に対するガンマナイフ治療は通常の治療手段であるが,下垂体機能を正確に評価した研究は少ない.韓国延世(Yonsei)大学のOhらはインスリン,TRH,LHRHの3者負荷試験で,ガンマナイフ治療前後の下垂体前葉機能を評価した.彼らが2001~2015年に経蝶形骨洞手術を実施した971例の非機能性下垂体腺腫中76例(7.8%)にガンマナイフ治療が施行された.ガンマナイフ後の追跡期間は53.5 ± 35.5ヵ月で,腫瘍制御率は96%.ガンマナイフ治療前に汎下垂体下垂体機能障害であった22例と脱落症例1例を除外して,53例を検討の対象とした.

【結論】

ガンマナイフ後13例(24.5%)に新たな下垂体機能障害が出現した.ガンマナイフ後下垂体機能障害出現の頻度は,ガンマナイフ前の下垂体機能正常の患者群の方が何らかの障害があった患者群より多かった(41.7%,10/24 vs. 10.3%,3/29:p=0.024).照射ターゲットとなった腫瘍の体積(大きい),腫瘍と下垂体茎の距離(短い),下垂体茎への照射線量(カットオフ:平均線量7.56 Gy,最大線量12.3 Gy),下垂体への線量(カットオフ:最大線量13.9 Gy,最小線量5.25 Gy)はガンマナイフ後の下垂体機能低下の予測因子であった(p<0.05).

【評価】

非機能性下垂体腺腫では,海綿静脈洞内などへの腫瘍残存,あるいは再発に対してガンマナイフ治療を行うことは多く,その効果は高い.一方で,照射による有害事象として,視機能障害,下垂体機能障害,悪性腫瘍の発生などのリスクが報告されている.下垂体機能障害については過去にいくつかの報告があったが,本研究の優れた点は,下垂体前葉機能評価のゴールドスタンダードである負荷試験を,ガンマナイフ治療の前後で行い,その機能を正確に評価している点である.負荷試験を避けてワンポイントのホルモンレベル測定だけで,下垂体機能を評価した気になっている最近の風潮に対して,毅然と立ち向かっているように見える.喝采を送りたい.
本シリーズでは,ガンマナイフのタイミングは,経蝶形骨洞手術後1~2年毎のMRIによる定期的フォローアップで再発が認められた時であるが,手術後早期でも,残存腫瘍が視路に近い場合などは,その後の腫瘍増大によって,再発時の視路へのガンマナイフ照射線量が上がることを予想して,再発以前に照射を行っている.経蝶形骨洞手術からガンマナイフまでの期間は,手術によって肉眼的全摘が達成出来た腫瘍では平均91.6ヵ月,手術が亜全摘に終わった腫瘍では平均40.2ヵ月であった.ガンマナイフ後,新たに下垂体機能障害が出現した13例では,成長ホルモンの障害が最も多く,33.3%にみられ,続いてTSH,ACTH,プロラクチン,ゴナドトロピンが続いた.その大部分は非症候性で,補充療法の対象となったのは4例のみであったという.
本研究で示された,新たな下垂体機能障害に関わる下垂体茎と下垂体への照射線量のカットオフ値については今後の前向き研究で検証されるべきである.
一方,本研究の問題点として,負荷試験による下垂体機能の評価はガンマナイフ後6~12ヶ月に行われているが,その後の追跡期間における機能低下については言及されていない.放射線照射後の下垂体機能障害は照射後数年間の経過で徐々に増加することは良く知られているところである(文献1).
また,本研究ではガンマナイフ前に何らかの下垂体機能障害があった群より,全く無かった群の方が新たな下垂体機能障害出現の割合が高かった,一見逆説的な結果の理由について考察されていない.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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