ADC値の低い非機能性下垂体腺は再発しやすい

公開日:

2019年5月24日  

最終更新日:

2019年5月30日

Prediction of recurrence in solid nonfunctioning pituitary macroadenomas: additional benefits of diffusion-weighted MR imaging.

Author:

Ko CC  et al.

Affiliation:

Section of Neuroradiology, Department of Medical Imaging, Chi-Mei Medical Center, Tainan

⇒ PubMedで読む[PMID:30717054]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2019 Feb
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

非機能性下垂体腺腫のうち一群では,早期のうちに残存腫瘍の増大や全摘出後の再発(P/R)が起こる.本研究は台湾のChi-Mei Medical Centerで手術された非機能性下垂体腺腫を対象に,P/Rに関わるMRI上の特徴,特にADC値の意義を検討したものである.対象は良性で充実性の非機能性下垂体腺腫30例.このうち19例(63.3%)でP/Rが認められた(P/Rまでの期間中央値24ヵ月).

【結論】

術前画像での海綿静脈洞浸潤,腫瘍の高さ,腫瘍の大きさ,DWIでの高信号,低いADC値と低いADC比(橋中心部との比較),ならびに手術によって視交叉への圧迫が取れていないことが,P/Rと相関した(p<0.05).P/Rを予想するADC値とADC比のカットオフは0.77 × 10-3 mm2/secと1.01であり,AUCは0.9と0.91であった.多変量解析では低いADC値はハザード比14.07でP/Rの危険因子であった(p<0.05).

【評価】

腫瘍組織の拡散制限を示すDWIにおける高信号とADC値の低下は腫瘍の悪性度を反映しているのは良く知られたところで,グリオーマなどの脳実質腫瘍では標準的に用いられているバイオマーカーの一つである.当然下垂体腺腫の生物学的活性の予測に用いることは可能であるが,下垂体腺腫は比較的小さいこと,嚢胞成分が多いこと,隣接する空気(蝶形骨洞)による磁化率アーチファクトのためにDWIの正確な評価は困難であった.本論文では,2010~2016年に手術が行われた非機能性下垂体腺腫188例のうち,MRI画像の質の問題で検討対象から除外された症例は36例であったと記載されている.その他,大きな嚢胞を有する症例や出血を伴う症例などが除され,最終的に検討の対象となったのは,30例(16%)に過ぎない.
このような限られた症例であるが,術前のMRIにおける腫瘍のADC値と比は,高い精度で摘出手術後の増大や再発を予測し得ることを明らかにした.DWI信号の評価は,同一患者の橋中心の信号との比較で高,等,低信号に分けており,ADC比もやはり,腫瘍のADCを橋中心のADCで割ったものとした.
腫瘍細胞のKi-67値は下垂体腺腫の生物学的活動性指標として良く知られており,腫瘍増大や再発との関連が報告されている.以前は3%以上の陽性率が異型下垂体腺腫の定義に組み込まれていたが,その後の検討において明白な閾値を設定出来ないこともあって,WHO 2017内分泌腫瘍では,異型下垂体腺腫のカテゴリーそのものが消滅している.それでもなお,Ki-67値は腫瘍のアグレッシブさの指標として重視されている.さらに,非機能性下垂体腺腫のKi-67値はADC低下と相関する傾向があること,またADC低値は病理学的な異型性や浸潤性と関連することも知られている(文献1,2).
一方,下垂体腺腫においては,DWI高信号とADC低下,すなわち拡散制限は細胞外マトリックス(ECM)における膠原線維の増生を反映するという報告もある(文献3,4).また,豊富な膠原線維を含むECMは,一部の充実性の癌の腫瘍発生に貢献していること,ECM中の繊維芽細胞が下垂腺腫の骨浸潤に関係していることも指摘されている.さらに,腫瘍内の豊富な膠原線維は,手術による根治性を妨げる可能性があり,結果として,肉眼的あるいは顕微鏡的な腫瘍残存につながる可能性がある.
本研究ではKi-67陽性率についても腫瘍内膠原線維の量についても全く評価されておらず,不十分な解析で終わっているが,今後の研究の方向性を示したという意味では意義がある.また,本研究ではADC値はEPIを用いたDWIで測定されているようであるが,下垂体という磁化率アーチファクトの多い部位でのADC評価に最近導入されているPROPELLER,3D turbo field echoなどの撮像法ではどうなるのか,興味深い.
なお,著者らは,手術前のMRIでADC値が低い腫瘍では,積極的な摘出術の後,術後放射線照射,さらに綿密な経過観察を示唆しているが,今後より多数例で,また長期追跡に基づく検討が必須である.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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