成長ホルモンはIGF-1と独立して大腸DNAの変異を引き起こす

公開日:

2019年7月2日  

最終更新日:

2019年7月5日

Growth Hormone Induces Colon DNA Damage Independent of IGF-1.

Author:

Chesnokova V.  et al.

Affiliation:

Pituitary Center, Department of Medicine, Cedars-Sinai Medical Center, Los Angeles, California, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:31002310]

ジャーナル名:Endocrinology.
発行年月:2019 Jun
巻数:160(6)
開始ページ:1439

【背景】

先端巨大症患者では種々の癌の発生率が高いことが指摘されているが(文献1),これがIGF-1を介しての作用であるのか,成長ホルモン(GH)の直接作用であるのかは不明である.Melmedが率いるCedars-Sinai pituitary centerはこの点を明らかにするために,in vitro,in vivoの実験を行った.IGF-1受容体(IGF-1R)をshRNAで阻害したヒト大腸上皮細胞(hNCCs)やIGF-IRリン酸化阻害剤(PPP)が投与されたhNCCsはGH受容体(GHR)が過剰発現し,GHの投与により強く反応するようになる.

【結論】

hNCCsにおいてもヒト幹細胞から作成した腸管オーガノイドにおいても,上記のIGF-1シグナル阻害はDNA損傷の引き金になった.このIGF-1シグナル阻害モデルにGHを投与するとDNA損傷はさらに亢進した.さらに無胸腺マウスに成長ホルモン産生能を有する異種癌を皮下に作成し,GH血中濃度を上昇させると,PPPによるIGF-1シグナル阻害にもかかわらず,マウス大腸上皮のDNA損傷は増加した.一方,GHR遺伝子欠損(-/-)マウスにPPPを投与してIGF-IRを阻害しても,DNA損傷は増えなかった.これらの結果は,GHによるDNA損傷は,GHRを介したGHの直接作用であることを示している.

【評価】

先端巨大症患者における癌の発生率は一般人口とは差が無かったという報告もあるが(文献2,3),一般的には癌の発生率は高いと信じられている.
本研究は,先端巨大症における癌発生に直接関与するDNA損傷において,GHとIGF-1のどちらが強く影響しているかを明らかにしようとする基礎研究である.その結果,少なくとも大腸上皮に関する限り,DNAの損傷には高いGH血中濃度が関与しており,IGF-1は関わっていないという事実を示した.
本論文では,この結果が,他の癌腫の発生にも当てはまるのか,また,高GHによるDNA損傷のメカニズムついては明らかにしていないが,この論文は最近のIGF-1指向型先端巨大症治療の流れ,特にGH容体拮抗薬(ペグビソマント)による治療の妥当性について一石を投じるものになっているように見える.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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