OGTTに対する奇異反応を示す成長ホルモン産生腺腫にはGNAS変異はなく,GIPRが異所性に発現している

公開日:

2019年7月3日  

最終更新日:

2019年7月8日

Hypermethylator Phenotype and Ectopic GIP Receptor in GNAS Mutation-Negative Somatotropinomas.

Author:

Hage M  et al.

Affiliation:

Institut National de la Sante´ et de la Recherche Me´ dicale U1185,Le Kremlin Bicêtre, France

⇒ PubMedで読む[PMID:30376114]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2019 May
巻数:104(5)
開始ページ:1777

【背景】

最近立て続けに,経口糖負荷試験(OGTT)で成長ホルモン値(GH)が抑制されず,むしろ上昇を示す(奇異反応)成長ホルモン産生腺腫の臨床像に関する報告がJCEM上で発表され,注目を集めている(文献1,2).しかし,血糖上昇によってGHの産生・分泌が高まる理由は不明であった.今回,フランスHageらのグループは,それが本来膵β細胞に存在するGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体(GIPR)の異所性発現によるものであるという事実をつかんだ.対象は成長ホルモン産生腺腫41例(末端肥大症38例,巨人症3例).

【結論】

41例中10例(24.3%)が奇異反応を示した.全症例の32%(13/41)おいて腫瘍細胞にGIPRが認められ,このうち10例は奇異反応症例(基礎値の50%以上のGHの上昇)であった.41例中11例(25.6%)にGNAS変異が認められた.GIPRが発現している腫瘍13例の全てがGNAS変異なしであった.GIPR発現は,4倍体遺伝子の2例を除いて,GIPR遺伝子の単一アレルの転写活性に基づいていた.19qの遺伝子重複に加えて,GIPR遺伝子座の微小増幅が認められた.さらにGIPR発現群では,GIPR遺伝子本体(プロモーター部分ではなく)の高メチル化状態が観察された.

【評価】

炭水化物や脂肪が腸管に流入すると,その刺激を受けてインクレチン(GIP,GPL-1)が小腸から分泌され,インスリン分泌を促進,グルカゴン分泌を抑制して食後の過血糖を抑制している.このうちGIPは小腸上部などのK細胞から分泌され,膵β細胞に発現しているGIPRに結合して,インスリン分泌を促進させる.GIPRは脂肪細胞や骨芽細胞にも発現しており.脂肪やカルシウムの蓄積を促進している.
以前から,副腎皮質細胞に異所性にGIPRが発現すると,食事のたびにコルチゾールの過剰分泌がおこり食事依存性クッシング症候群が起こることが知られていた(文献3).最近,著者らのグループは,この副腎皮質における異所性GIPR発現が染色体再配列に伴ったGIPR 遺伝子を含む19q13.32の重複であることをつかんだ(文献4).こうした遺伝子学的な発展を背景に,著者等は今回,一部のGH産生腺腫症認められる(本シリーズでは24%)OGTTに対する奇異性反応のメカニズム,その遺伝子的な背景の解明に挑んだ.その結果,OGTTに対する奇異反応はGH産生腫瘍細胞に異所性に発現した GIPRによって引き起こされており,それはhypomorphicな転写活性化によって起こっており,またGIPR遺伝子の微小重複とGIPR遺伝子本体のDNAメチル化異常によって駆動されているらしいことを示した.また奇異反応例にはdensely granulated phenotypeのGH産生腫瘍が多い(69%)ことも示した.
糖経口負荷によって小腸上部から分泌されたGIPがGH産生腫瘍細胞のGIPRと結合すると,細胞内cyclic AMP濃度の上昇,PKAの活性化を通して,GHの産生・分泌が亢進するメカニズムが想定される.開発中のGIPR阻害剤の効果が期待される.
既に大阪大学からはOGTT奇異反応群はそうでない症例に比較して,術前のIGF-1のSDスコアが高く,オクトレチドやブロモクリプチン投与後のGHの低下率が大きいことが報告されている(文献1).イタリアの多施設共同研究では,奇異反応群はそうでない症例に比較して,より高齢で,腫瘍径が小さく,海綿静脈洞浸潤が少なく,腫瘍体積当たりのGH値が高く,高プロラクチン血症の合併が少ない,またソマトスタチン誘導体LAR長期投与に良く反応することが示されている(文献2).
本研究では,治療薬に対する反応性は検討されてはいないが,OGTTに対する奇異反応がGIPRの異所性発現によること,その遺伝子学的な背景を示したところに意義がある.そして何よりも刺激的であるのはGIPRの発現とGNAS変異陽性が相互排他的であったことである.現在,成長ホルモン産生腺腫の原因遺伝子変異としてはGNAS変異の他に,少数のAIP,GPR101,MEN1,CDKN1Bの変異があるが全てを合わせても6割を超えることはない.もしかすると,GIPRが残り4割の成長ホルモン産生腺腫の腫瘍発生のブラックボックスを開く鍵になるのかもしれない.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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