成長ホルモン産生腺腫で下垂体性甲状腺機能低下が少ないのはなぜか

公開日:

2019年8月2日  

最終更新日:

2019年8月6日

Central Hypothyroidism related to Pituitary Adenomas: Low incidence of Central Hypothyroidism in patients with Acromegaly.

Author:

Takamizawa T  et al.

Affiliation:

Division of Endocrinology and Metabolism, Department of Internal Medicine, Gunma University Graduate School of Medicine, Japan,

⇒ PubMedで読む[PMID:31188431]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2019 Jun
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

下垂体腺腫は中枢性甲状腺機能低下症(CeH)の原因の一つである.しかし,実際の頻度については詳細でない.群馬大学のTakamizawaらは,非機能性下垂体腺腫(NFPA)139例と成長ホルモン産生腺腫(GHPA)150例をもとにその頻度を求めた.

【結論】

NFPAの24%にCeHが認められ,その発生は腫瘍径,年齢・性と相関していなかった.
一方,GHPAではCeHは8.7%に過ぎず,TSH値は,GHPA-CeHの半数が正常で,半数が低下していた.
GHPAでは,NFPAに比較してTSH値は有意に低く,fT4とfT3値は有意に高かった.GHPAの約1/4ではTSH値が低く,fT4値は正常であった.
全対象患者で,GHならびにIGF-1値は,fT4値とは正に,TSH値とは負に相関していた(p<0.001).
GHPAにおいてCeHが少ないのは,GH/IGF-1によって,甲状腺が刺激されていることが原因と思われた.

【評価】

中枢性甲状腺機能低下症(CeH)の原因の6割は下垂体腺腫であるが,原発生甲状腺機能低下症のようにTSH高値を診断基準に使うことが出来ず,fT4値,時にfT3値が唯一の診断マーカーである.実際,CeHにおけるTSH値は低いものから高いものまで様々である.従来の報告では下垂体性のCeHの頻度はNFPAで8~81%と非常にばらついている(文献1,2).これには,対象に治療後のものがふくまれている,TSH,fT4,fT3の測定が無い,TSHの感度が低い時代のものが含まれているなどの問題が背景にあると推定される.著者等は高感度の測定法を用いて治療前の下垂体腺腫患者の甲状腺機能を評価した.その結果,NFPA(24%)に比較してGHPAでは甲状腺機能低下患者(fT4低値症例)は少ない(8.7%)ことを明らかにした.全対象患者のGH,IGF-1値は甲状腺ホルモン値(fT3,fT4)と強く逆相関することから,著者等はGHPA患者で中枢性甲状腺機能低下患者が少ない理由を,過剰なGH/IGF-1によって甲状腺が刺激されT3,T4の産生が亢進するためと推測している.実際,GHPA患者では,25~70%で甲状腺腫が認められ,14.3%の患者で中毒性甲状腺腫が認められている(文献3).
またNFPA患者に比較してGHPA患者でTSH値が相対に低いのは,高GH/IGF-1によって甲状腺外でのT4→T3変換が促進され,過剰なT3が下垂体におけるTSH産生を負に制御していることが主要な原因であると推測している.
実地臨床でCeHが問題となるのは,治療後の長期管理においてであるが,監修者の有田は術前同様に,手術後もCeHが少ないような印象を持っている.高GH/IGF-1環境下での甲状腺過形成の影響が続いているのであろうか.今後,術前,術後の甲状腺機能の変化に焦点をあてた検討が必要である.その場合は,甲状腺が高GH/IGF-1環境の影響を離脱する数年という単位での追跡が必須であろう.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する