経鼻下垂体手術後の嗅覚低下にオメガ-3魚油サプリが効く:Stanford大学

公開日:

2020年1月22日  

最終更新日:

2020年1月22日

Effect of Omega-3 Supplementation in Patients With Smell Dysfunction Following Endoscopic Sellar and Parasellar Tumor Resection: A Multicenter Prospective Randomized Controlled Trial.

Author:

Yan CH  et al.

Affiliation:

Department of Otolaryngology/Head and Neck Surgery, Stanford University School of Medicine, Stanford, California

⇒ PubMedで読む[PMID:31950156]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2020 Jan
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

経蝶形骨洞手術後の嗅覚脱失は稀ではなく,8~88%と報告されている.これに対する様々な治療が提唱されているが,RCTによる効果確認は出来ていない.本研究は健康サプリメントの1つであるオメガ3脂肪酸を含む魚油カプセルを用いた研究である.対象は,トルコ鞍/鞍周囲の腫瘍に対する経鼻内視鏡手術が施行された87症例.全例で生食水による一日2回の自己鼻洗浄が指導された.治験薬群として46例にオメガ3カプセル(1000mg)が一日2回投与された.対照はオメガ3非投与の41例.

【結論】

二群間で,年齢,性,腫瘍の種類,喫煙歴,身体併存症,手術前の嗅覚スコア(UPSIT 40点満点)に差はなかった.術後の嗅覚脱失はUPSITにおける10%以上の低下と定義した.術後6週目のUPSITはオメガ3群,対照群とも低下し,嗅覚脱失症例は13例(28.8%)と10例(24.4%)であった.しかし,オメガ3群では3,6ヵ月後で著明な回復が認められ,6ヵ月後の嗅覚患者症例は2例(4.3%)と10例(24.4%)であった(p=0.01).オメガ3内服は他の因子調整後の独立した嗅覚保護因子であった(OR 0.05,p=0.03).

【評価】

経蝶形骨洞手術後の嗅覚脱失の原因としては,術野の痂皮や粘膜の腫脹による嗅裂の閉塞と炎症による嗅糸の障害が挙げられる.嗅裂の閉塞は生食水による鼻腔洗浄で早期に改善するものと思われる.
魚油オメガ3脂肪酸は多価不飽和脂肪酸に属し,EPAやDHAが含まれている.オメガ3脂肪酸による嗅覚回復のメカニズムは不明であるが,嗅粘膜上でのNF-κB系の抑制を介した抗炎症作用や神経再生促進が推察される.オメガ3脂肪酸は安全性の高いサプリメントの1つであるので,今後,他施設でも普及が進むと思う.
一方,本研究では,腫瘍径,鼻中隔粘膜フラップの使用,手術後の放射線照射は,手術後の嗅覚脱失に及ぼすリスク因子ではなかったが,機能性腺腫(GHoma,ACTHoma)が強いリスク要因であった(OR:32.7,p=0.04)ことは意外である.ただし,従来でも同様の報告は認められている(文献1).ACTH産生腺腫やGH産生腺腫における鼻腔骨構造や粘膜の肥厚,粘膜の脆弱さ,炎症の起こりやすさなどが,術後嗅覚脱失のしやすさに関与している可能性がある.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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