経蝶形骨洞手術後の再入院:米国の最近の傾向

公開日:

2020年3月24日  

最終更新日:

2020年3月25日

National Trends in Hospital Readmission Following Transsphenoidal Surgery for Pituitary Lesions

Author:

Little AS  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Barrow Neurological Institute,Phoenix, AZ, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:31728907]

ジャーナル名:Pituitary
発行年月:2020 Apr
巻数:23 (2)
開始ページ:79

【背景】

経蝶形骨洞手術後,再入院の頻度とそれと相関する因子はなにか.Barrow Neurological Institute (BNI)のLittleらのチームは米国の全国再入院データベース(NRD)(2010~2015)を用いて検討した.6年間の経蝶形骨洞手術の登録数は44,759件で,4,658(10.4%)名が30日以内に再入院した.この頻度は6年間でほぼ一定であった.

【結論】

再入院患者は,非再入院患者に比較して,併有疾患有病率(82.5% vs. 78.4%,respectively,P<0.001),術後合併症罹患率(47.2% vs. 31.8%,P<0.001),初回入院期間(6.59 vs. 4.23 days,P<0.001)に有意差があった.再入院の原因で最も多いのはSIADH(17.5%)と低ナトリウム血症(16.4%)であった.再入院予測因子は初回入院時の尿崩症,低ナトリウム血症,精神障害,リンパ腫などであった.再入院に関わる費用は平均$12,080であった.

【評価】

本研究を実施したBNIのLittleらのチームは, 以前から経蝶形骨洞手術の再入院の問題に注目しており(文献1),再入院予防のためのパスも試みてきたが(文献2),必ずしも成功してはいない.今回は米国の27州が参加している再入院データベース(NRD)を基にした検討である.この結果,経蝶形骨洞手術後約10%が30日以内に再入院となっていることがわかった.初回入院期間は,非再入院群で4.2日,再入院群で6.6日と,日本のそれより短いことが高い再入院率の理由として推測される.なお30日に以内に3回目の入院が必要になったのは0.4~0.9%であった.
初回入院時の尿崩症,低ナトリウム血症が再入院の重要な要因であったとことは従来の報告通りで(文献3),これらは結果として低ナトリウムを理由とする再入院につながっている.経蝶形骨洞手術後の低ナトリウム血症が手術後7日目あたりをピークとして発生しやすいことを考慮すれば(文献3),その期間を過ぎてからの退院の方が安心かも知れない.
併有疾患で,糖尿病では手術後の合併症は起こりやすいであろうし,リンパ腫患者でも病態そのものと化学療法で血栓塞栓性合併症が起こりやすそうである.精神障害が再入院の予測因子であったのは何故か.クッシング病や頭蓋咽頭腫などで精神症状を呈している重症患者のことであれば,何となく了解は可能であるが,詳細は述べられていない.一方,ハイボリュームセンター(毎年26例以上の経蝶形骨洞手術経験)では,ローボリュームセンターよりも再入院率が少し高かったが,多変量解析では有意差はなかった(p=0.26).
今回明らかになった予測因子に配慮した入院期間の設定や特殊ケアを含むプロトコールを用いた前向きスタディーが行われるべきである.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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