視神経圧迫が見られるが視野障害のない非機能性下垂体腺腫の自然史

公開日:

2020年7月1日  

最終更新日:

2020年7月6日

The Outcomes of Conservatively Observed Asymptomatic Nonfunctioning Pituitary Adenomas With Optic Nerve Compression

Author:

Hwang K  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, Seoul National University Bundang Hospital, Seoul, Republic of Korea

⇒ PubMedで読む[PMID:32502994]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 Jun
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

無症候性の非機能性下垂体腺腫はしばしば発見され,基本的には経過観察が行われる.では,既に相当の鞍上部進展があり,視神経の圧迫が認められる症例ではどうなのか.ソウル大学のHwangらは関連2施設で発見された無症候性の非機能性下垂体腺腫のうち視神経の圧迫が認められた81例(年齢中央値58歳)を中央値60ヵ月間追跡して,その自然史を解析した.

【結論】

この間,腫瘍径は平均23.7から26.2 mmに増大した.腫瘍増大は63%で認められたが,視機能悪化があったのは17.3%に過ぎなかった.12.3%が下垂体機能の悪化を示した.14例(17.3%)で,視機能悪化(12例)か下垂体機能悪化(2例)を理由に手術が施行された.術後全例で,視機能あるいは下垂体機能の改善が得られた.
81例全体での2,3,5年の非治療生存率は,96.1%,93.2%,85.6%と高かった.多変量解析では海綿静脈洞浸潤のみが治療必要性の独立予測因子であった.

【評価】

無症候性の非機能性下垂体腺腫に対しては基本的には経過観察が推奨されている.一方,非症候性であっても鞍上部進展(視路に接触あるいは視路の挙上)がみられれば手術(おもに経蝶形骨手術)が薦められている(文献1).これは,視路の圧迫がある症例では早晩視機能障害を起こすし,強い視機能障害が起これば,手術で減圧が達成出来ても,視機能の完全な回復を達成出来ない可能性があるという予測に基づいている.
しかし,本研究では,無症候性非機能性下垂体腺腫は,視路への圧迫があっても,視野障害がなければ経過観察が可能で,5年間の非治療(無症候)生存は85.6%と高く,新たに視機能障害や下垂体機能障害が発生した段階で摘出手術を行っても,全例で視機能や下垂体機能の改善が得られることを示した.今後,多施設の前向き研究で検証すべき重要な発見である.RCTが実施可能かも知れない.
一方で,回復不可能な視機能障害や下垂体機能障害が出る前の比較的軽微な症状出現を捉えることは意外に困難である.定期的なMRI,下垂体ホルモンチェック,視野検査(Humphrey視野検査が必要)が不可欠であるが,それに関わる患者の負担,不安を考慮すると,比較的若年者では症状が出ないうちに手術という選択は間違いではないように思う.
本研究の問題点としては,追跡期間中央値が5年と短いことが上げられる.無症候性下垂体腺腫は視路への圧迫があっても経過観察で大丈夫と言い切るためには,少なくとも10年間のフォローアップのデータが欲しいところである.また,視路への圧迫程度と経過観察中の視機能障害の新規出現の関係も不明である.今後の前向き研究では視路圧迫の程度のスコア化も必要であろう.
なお本研究では海綿静脈洞浸潤が有症候化(視野障害出現)の独立した予測因子であることを明らかにした.この理由について,著者等は明らかにしてはいないが,下垂体腺腫の海綿静脈洞浸潤とKi-67インデックス高値の相関は良く知られているところであり(文献2,3),腫瘍増殖能の高さを反映している可能性がある.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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