家族性単発性下垂体腺腫患者や若年下垂体腺腫患者におけるAIP遺伝子変異検索に臨床的意義があるか

公開日:

2020年11月16日  

最終更新日:

2020年11月17日

Significant Benefits of AIP Testing and Clinical Screening in Familial Isolated and Young-onset Pituitary Tumors

Author:

Marques P  et al.

Affiliation:

Centre for Endocrinology, William Harvey Research Institute, Barts and the London School of Medicine and Dentistry, Queen Mary University of London, London, UK

⇒ PubMedで読む[PMID:31996917]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2020 Jun
巻数:105(6)
開始ページ:e2247

【背景】

家族性に発生する下垂体腺腫のうち,MENなどのように他の内分泌臓器の腫瘍を伴っていないものは家族性単発性下垂体腺腫(FIPA)と呼ばれ,そのうち約20%にはAIP遺伝子の生殖細胞変異が認められる(文献1).この変異は,孤発性下垂体腺腫患者でも3~4%で認められる(文献2,3).本稿は,下垂体腺腫におけるAIP遺伝子変異スクリーニングの意義についての欧州中心の多施設研究である.FIPA患者と30歳以下の若年発症の孤発性下垂体腺腫患者を対象にAIP変異を検索し,さらに同遺伝子変異陽性患者の一親等血族を対象にAIP変異を検索した.1,477例の下垂体腺腫でAIP遺伝子変異の有無が明らかになった.

【結論】

AIP変異陽性腺腫(167例)は,陰性腺腫(1,310例)に比較して,発症・診断時年齢がより低く,家族例,男性例,GH過剰分泌,下垂体卒中,鞍上部進展症例が多く,放射線照射を含む集学的治療がより必要であった.AIP変異陽性腺腫患者の一親等血族のうちこれまで腺腫が指摘されていなかった者の中で187例がAIP変異陽性であった.この187例のキャリアーを詳細に検査したところ22例に新規に下垂体腺腫が発見された.この22例は既知のAIP変異陽性腺腫145例に比較して,腫瘍はより小さく,鞍上部進展や海綿静脈洞浸潤が少なく,治療転帰も良好であった.

【評価】

従来,AIP変異陽性下垂体腺腫は陰性腺腫に比較して,若年で,浸潤性のGH産生腺腫が多く,集学的治療を要するとされているが(文献4),今回の結果はそれを裏付けるものとなった.ちなみに30歳以下の若年発症の孤発性下垂体腺腫患者777例におけるAIP変異陽性患者の割合は6.7%であった.
一方,AIP変異陽性腺腫患者の一親等血族の中で187例がAIP変異陽性と判定され,そのうち22例(11.8%)に下垂体腺腫が発見された.これらの腫瘍は,既知の臨床的なAIP変異陽性下垂体腺腫に比較して,小型で,浸潤性は少なく,治療も容易であった.なお,この22例中の3例は,最初はネガティブであったが,5-7年の経過中で腺腫の出現をみとめたという.
著者等はこの結果を受けて,家族性単発性下垂体腺腫患者や若年下垂体腺腫患者のスクリーニングによるAIP変異陽性患者の検出とその陽性患者家族へのスクリーニングは,未知であった比較的小型の治療しやすい下垂体腺腫患者の発見につながると言っている.
うーん,そうかなーという結論である.
本稿を簡単にまとめると,30歳以下の若年発症の孤発性下垂体腺腫患者を対象にAIP変異のスクリーニングをして,約7%のAIP変異陽性患者を見つけて,陽性者の家族をスクリーニングするとほぼ同数のAIP変異陽性キャリアーが発見され,そのキャリアーを精査すると約10%に下垂体腺腫患者が発見されたというストーリーである.
そうすると,30歳以下の若年発症の孤発性下垂体腺腫患者を対象にAIP変異のスクリーニングをして,あらたな下垂体腺腫患者の発見にいたる可能性は1%前後になる.AIP変異スクリーニングにかかる費用や人手がどのくらいかは本稿には記載されていないが,下垂体腺腫が比較的予後良好な疾患であることを考慮すれば,1%の新規患者を発見するのにどれだけの医療資源,費用,人材を投資すべきなのかは慎重に考慮しなければならないように思う.
もしかすると,GH高値の浸潤性腫瘍を有する30歳以下の男性くらいにまでスクリーニングの対象を限定すれば費用対効果は上がるかも知れない.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

髙橋裕

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する