トルコ鞍部肉腫:94例のシステマティックレビュー

公開日:

2020年12月28日  

最終更新日:

2020年12月29日

Sarcomas of the sellar region: a systematic review

Author:

Guerrero‑Pérez F  et al.

Affiliation:

Department of Endocrinology, Bellvitge University Hospital, Barcelona, Spain

⇒ PubMedで読む[PMID:32785833]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2020 
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

トルコ鞍部に発生する肉腫は極めて稀である(文献1).バルセロナのGuerrero‑Pérezらは,本腫瘍の病態を明らかにするために既報のトルコ鞍及びトルコ鞍周囲の肉腫94例を塊集しシステマティックレビューを行った.58.5%が男性で,平均年齢は39.2±17.2(SD)歳.62%が軟部組織の肉腫,38%が骨の肉腫であった.66%は原発性,31.9%は放射線後に発生し,7.4%は転移性であった.放射線照射から肉腫発生までの期間の中央値は10.5年.原発性では軟骨肉腫と横紋筋肉腫(文献2)が多く,放射線後の発生では線維肉腫が多かった.

【結論】

放射線後発生の肉腫の方が腫瘍径は大きかった(平均46.3 vs. 29.1 mm,p=0.004).
主要な症状は視機能障害(87.9%),頭痛(61.5%),動眼神経麻痺(24.1%)であった.骨の肉腫は軟部組織の肉腫より若年で出現した(34.4 vs. 42.6歳,p=0.034).
骨の肉腫は軟部組織の肉腫より全摘出の頻度が高かった(41.3 vs. 4.4%,p=<0.001).手術後,肉腫の残存と再発は82.3%で認められた.死亡率は44.6%,生存期間中央値は6.5ヵ月であった.

【評価】

トルコ鞍部の肉腫は極めてまれで,1施設で経験した1,367例のトルコ鞍部/傍トルコ鞍部腫瘍では3例(0.2%)のみであった(文献1).本稿は,この稀な腫瘍に関するシステマティックレビューである.
トルコ鞍部の肉腫は,40歳前後の比較的若年に発生し,約1/3が放射線照射後の発生で,約6割が軟部組織由来の肉腫,約4割が骨由来の肉腫であった.
ちなみに軟部組織由来の肉腫には線維肉腫,横紋筋肉腫,平滑筋肉腫,未分化多型肉腫などが,骨組織由来の肉腫には軟骨肉腫,骨肉腫,Ewing肉腫などが含まれている.

術前診断の決め手はないが,トルコ鞍内に限局したものは9%のみで,他の大部分はトルコ鞍周囲や鞍上部への進展が認められていること,症状としては下垂体腺腫では殆ど認められない動眼神経麻痺が24%も認められるといったあたりが鑑別のポイントになろうか.

治療法としては9割で手術が選択され,そのうち約65%で経蝶形骨洞手術が実施された.しかし,多くの場合全摘出は困難で,約8割で腫瘍は残存した.残存腫瘍に対しては約半数で放射線治療が,約3割で化学療法が施行されたが,45%の患者が6.5ヵ月の生存期間中央値で死亡した.なかなか厳しい治療転帰である.
本シリーズの化学療法で最も一般的に使用されたのはドキソルビシン,イホスファミド,シクロホスファミド,エトポシド,ゲムシタビン,ビンクリスチンである.近年,他部位の進行性軟部肉腫に対して,新規薬剤(パゾパニブ,エリブリン,トラベクテジン,免疫チェックポイント阻害剤など)の導入が進み,組織型,遺伝子型,バイオマーカーによっては有効性が示唆されている(文献3,4).

将来,他部位の肉腫に対する治療の進歩に伴い,トルコ鞍部肉腫の治療効果も改善する可能性はある.今後に期待したいところだが,もともと極めて稀な腫瘍であるので,多施設での症例登録に基づく検討が必須である.
本文中の考察では,トルコ鞍部肉腫についての包括的なレビューが記載されており,同様の症例に出会ったときには役に立ちそうである.

執筆者: 

有田和徳