骨関節症は先端巨大症の寛解後も進行する

公開日:

2021年1月26日  

最終更新日:

2021年3月5日

Progression of acromegalic arthropathy in long-term controlled acromegaly patients: 9 years of longitudinal follow-up

Author:

Pelsma ICM.  et al.

Affiliation:

Dept. of Medicine, Division of Endocrinology, and Center for Endocrine Tumors Leiden, Leiden University Medical Center, Leiden, the Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:33099640]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2021 Jan
巻数:106(1)
開始ページ:188

【背景】

先端巨大症患者で頻繁に認められる骨関節症(文献1)は,寛解後どうなるのか.ライデン大学のPelsmaらはベースライン時で2年以上寛解=生化学的なコントロール状態(正常IGF-1,糖負荷後GHの抑制が正常)にある先端巨大症患者31例(平均60歳)を対象とした長期的観察研究でこの問題を検討した.患者の半数には手術単独が実施され,残りは放射線やソマトスタチン作動薬が使用されていた.X線上の関節症の評価にはKellgren and Lawrence(KL)スコアを用いた.ベースライン時,中央値で2.6年後,9.1年後に調査を行った.

【結論】

ベースライン時に全患者で1関節以上で骨関節症が認められた.先端巨大症寛解患者では他の臨床徴候の進行は少ないのに骨関節症は進行しており,全期間におけるKLスコアの進行は,膝関節で29%,股関節で48%,手関節で84%,体幹関節で94%に認められた.手指のこわばりと痛みと機能の悪化は32.3%と35.5%で認められた.股関節の骨関節症進行と相関していたのは活動性先端巨大症の期間,治療前のIGF-1値,治療方法のいずれでもなくベースライン時の股関節のKLスコアであった.他の関節では相関因子は見いだせなかった.

【評価】

手術後寛解した先端巨大症患者を永らく診ていると,高血圧,糖尿病などの合併症は落ち着いているのに,次第に骨関節症が顕著になって手指のこわばり,歩行障害,姿勢異常を起こしQOLが低下する患者がいる事に気がつく.本報告を読んで,本当にそうだよねーと同感出来る.
活動性の先端巨大症患者で認められる関節症の特徴は関節間隙の拡大(関節軟骨の肥厚)と強い骨棘の増成である(文献2,3).寛解患者では骨棘の増成は進むが,関節間隙は一般の関節症と同様に狭小化するという(文献4).
一般の骨関節症患者でも加齢による進行は知られているので,先端巨大症寛解患者で見られた経年的な関節症の進行がこの患者群に特異的な現象であるのかどうかは不明である.著者等は,一般の人口における過去の報告と比較し,手や股関節は進行が早く,膝は同じくらいの進行速度であると推定しており,関節によって異なるようである.
本研究では,治療前のGH/IGF-1,病悩期間,治療法と先端巨大症寛解後の関節症の進行には相関は示せず,何が進行の要因であるかは,現段階では不明である.先端巨大症治癒患者における関節症の進行のメカニズムは関節毎で異なっているのかも知れない.いずれにしても,先端巨大症治癒患者の関節症については長期にわたる丁寧な経過観察と治療的介入が必要と思われる.
最近イタリアからは,先端巨大症患者の椎体骨折の頻度や抗骨粗鬆症薬の効果に関する多施設の後方視研究(BAAC)の結果がやはりJCEMに報告されている(文献5).これによれば,椎体骨折は先端巨大症寛解患者でも4年間の追跡期間では約20%で発生しており,骨粗鬆症薬の投与はその予防効果を示していないという.
活動性あるいは治癒患者にかかわらず先端巨大症患者の骨関節症の病態とコントロールに関しては,骨代謝マーカーの評価を含めた今後の多施設前向き研究に期待したい.

執筆者: 

有田和徳