第2世代ソマトスタチン/ドパミン・キメラ化合物(TBR-065)は第1世代キメラ(TBR-760)より強いGH抑制効果を示す

公開日:

2021年2月3日  

最終更新日:

2021年3月5日

Characterization of the ability of a, second-generation SST-DA chimeric molecule, TBR-065, to suppress GH secretion from human GH-secreting adenoma cells

Author:

Cuny T  et al.

Affiliation:

Service d'Endocrinologie, Aix Marseille University, Marseille, France

⇒ PubMedで読む[PMID:33433890]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2021 Jan
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

GH産生細胞にはソマトスタチン受容体2(SSTR2)とドパミン受容体2(D2R)が存在し相互作用しているので,それぞれの受容体に結合するキメラ・アゴニストを投与すれば,強いGH産生抑制と細胞増殖抑制をもたらすはずであり,20年前からそのようなキメラ分子に関する研究が行われてきた(文献1).しかし,第1世代キメラ分子であるTBR-760(ドパスタチン)は先端巨大症患者での臨床試験で有用性を示せなかった(文献2).
エクス・マルセイユ大学のCunyらは,第1世代の問題点を克服した第2世代キメラ分子TBR-065(文献3)のヒトGH産生腺腫とGH/PRL産生腺腫の初代培養細胞に対する効果を検討した.

【結論】

TBR-065によるGH抑制効果は第1世代のTBR-760よりも強力で(Emax=57 ± 5.6% vs. 41.1 ± 12.5%,p<.001),オクトレオチド+カベルゴリン同時投与よりも強力であった(Emax=56.8 ± 7.2% vs. 44.4 ± 9.4%,p<.001).TBR-065の生体内代謝産物であるBIM-133はTBR-065の効果に影響を与えなかった.

【評価】

ソマトスタチン受容体2(SSTR2)とドパミン受容体2(D2R)はともにG蛋白共役受容体であるために両方の受容体に対するアゴニスト結合によって2量体化し,結果としてアゴニスト結合能が高まり,細胞内情報伝達が活性化され,受容体ターンオーバーを促進する.オクトレオチド抵抗性ヒトGH産生腺腫初代培養細胞において,第1世代SSTR2/D2Rアゴニスト・キメラ分子であるTBR-760(ドパスタチン)の投与は,ソマトスタチン作動薬,ドパミン作動薬,あるいはその両者投与よりも強いGH抑制効果を示すことが示されている(文献4).しかし,先端巨大症患者における臨床試験では充分なGH/IGF-1低下作用を示せず,薬品開発は中止となっている(文献2).これは生体内では,TBR-760がD2Rに強い親和性を示す代謝産物となり蓄積して,この代謝産物がD2Rとの結合においてTBR-760に競り勝ってしまうためとされた.
第2世代キメラ分子TBR-065は,in vivoにおけるTBR-760の弱点を克服するために,D2R親和性の強い代謝産物の生成を抑制するために構造変更を行ったものである.
本研究の結果,第2世代のTBR-065は第1世代のTBR-760よりもオクトレオチド+カベルゴリンよりも強いGH抑制効果を示し,その代謝産物BIM-133がTBR-065に競合することはなかった.
同様の研究結果は2020年にスペインからも報告されており,種々のホルモン産生腫瘍の初代培養細胞,マウスACTH産生腺腫株(AtT-20)において,BIM-065(TBR-065に同じ)が各種ホルモンの産生を抑制し,腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することが示されている(文献5).また,やはり2020年に韓国からGH産生腺腫マウスモデル(in vivo)におけるBIM-065の腫瘍成長抑制効果が報告されている(文献6).
今後,in vitro/in vivoでのさらなる効果の確認と初期臨床試験の結果に期待したい.また,GH産生腺腫以外の下垂体腺腫への効果も興味深い.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

高橋裕