造影MRIにおける下垂体前葉内の地図状低信号は免疫チェックポイント阻害剤による下垂体炎の特徴である

公開日:

2021年3月22日  

最終更新日:

2021年3月23日

MRI Findings of Immune Checkpoint Inhibitor-Induced Hypophysitis: Possible Association with Fibrosis

Author:

Kurokawa R  et al.

Affiliation:

Department of Radiolog, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, Tokyo, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:32763900]

ジャーナル名:AJNR Am J Neuroradiol.
発行年月:2020 41(9)
巻数:1683
開始ページ:

【背景】

CTLA-4阻害剤やPD-1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤による内分泌諸臓器の自己免疫疾患類似の有害事象は稀ではなく,特にCTLA-4阻害剤のイピリムマブとPD-1阻害剤の併用では下垂体炎は6.4%という高率で発生する(文献1,2).東京大学とミシガン大学放射線科のチームは,両施設で免疫チェックポイント阻害剤誘発下垂体炎と診断された20例(女性10例,全例悪性黒色腫)の下垂体のMRI上の特徴を検討した.11例がイピリムマブ+ニボルマブの投与,9例がイピリムマブの投与を受けていた.

【結論】

下垂体茎腫大は20例全例で,下垂体腫大は12例で認められた.造影MRIでは19例で前葉内に地図状(8例が線状,6例が不整,4例が結節状)の低造影領域が認められ,11例ではその領域がT2強調画像でも低信号であった.
甲状腺ホルモン欠損が19人/20人,副腎皮質ホルモン欠損が12人/17人で認められた.
地図状の低造影領域は下垂体内の線維化を反映していると考えられ,免疫チェックポイント阻害剤誘発下垂体炎の診断にとって有用な所見である.

【評価】

CTLA-4阻害剤やPD-1阻害剤などの免疫チェックポイント阻害剤は数多くの癌腫に用いられて,顕著な治療効果を上げているが,一方で過剰なT細胞の活性化は,下垂体を含む種々の臓器に自己免疫疾患類似の有害事象を引き起こしている.下垂体炎はPD-1阻害剤よりもCTLA-4阻害剤イピリムマブ投与で起こりやすい.これには正常の下垂体前葉細胞にCTLA-4が発現していることが関係している(文献3,4).
従来,免疫チェックポイント阻害剤誘発下垂体炎のMRI所見に関しては,他の下垂体前葉炎と同様に下垂体茎の腫大を伴わない,造影剤でびまん性に造影される下垂体の腫大と報告されてきた(文献5,6).本シリーズでは,下垂体造影MRIでは20例中19例で前葉内に地図状の相対的低信号が認められている.その大部分はT2* でもbloomingを示さないT2低信号であったことから,壊死,のう胞,出血などよりも線維化を示している可能性が高いという.過去の免疫チェックポイント阻害剤誘発下垂体炎のMRIの報告では,この相対的低信号領域には関心が払われておらず,本論文の著者らが,改めて過去に報告されたMRI画像をチェックすると地図状の相対的低信号領域を呈する症例がいくつか認められるという.
しからば免疫チェックポイント阻害剤誘発下垂体炎のMRI所見が,リンパ球性下垂体炎など他の下垂体炎と異なるのはなぜか.今後,組織学的な違い,障害ホルモンの違い,重症度の違いなどの観点から解析が必要である.しかし,先ずはこの前葉内の地図状の低信号という所見の診断的な意義について,外部コホートで検証されるべきである.
ひとつ気になるのは,地図状の低造影領域(geographic hypoenhancing lesions)と言いながら,約4割が線状の病変であったことで,今後より多数例での検討でこの呼称も変更される可能性はある.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

寺田一志