先端巨大症患者のインスリン抵抗性(HOMA-IR)はどう変化するのか:15報告655例のメタアナリシス

公開日:

2021年4月12日  

HOMA-IR in acromegaly: a systematic review and meta-analysis

Author:

Biagetti B  et al.

Affiliation:

Diabetes and Metabolism Research Unit, Universidad Autónoma de Barcelona, Barcelona, Spain

⇒ PubMedで読む[PMID:33085039]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2021 Apr
巻数:24(2)
開始ページ:146

【背景】

HOMA-IRはインスリン抵抗性の指標であり,インスリン抵抗性が先端巨大症患者における2型糖尿病の主要な原因とされてきた.しかし,インスリンとIGF-1との交叉反応性やソマトスタチン作動薬によるインスリン分泌抑制のためにHOMA-IRが必ずしも先端巨大症患者のインスリン抵抗性を反映しないという指摘もなされてきた(文献1).本研究はこうした疑問に応えるため,先端巨大症患者におけるHOMA-IRならびに耐糖能の変化を既報の15研究655例を対象に,糖尿病患者を含む一般人口をコントロールとして解析したメタアナリシスである.

【結論】

ランダム効果モデルに基づけば,未治療の先端巨大症患者のHOMA-IR平均値は一般人口より+2.04(95%CI:0.65~3.44)高く,糖尿病がない先端巨大症患者でも一般人口より+1.89(1.06~2.73)高かった.手術やソマトスタチン作動薬投与によってHOMA-IRは低下した(−2.53と−2.30).しかし,ソマトスタチン作動薬によるHOMA-IRの低下には血糖値の低下を伴わなかった.

【評価】

著者らはこの結果を受けて,インスリン抵抗性の上昇は,治療前の先端巨大症における耐糖能異常の早期変化であることが確認出来たと結論している.さらに手術でもソマトスタチン作動薬でもHOMA-IRは低下したが,手術では血糖値は10.72 mg/dl低下する(p<.01)のに対して,ソマトスタチン作動薬では1.41 mg/dlしか下がらなかった(p=.55).すなわち,ソマトスタチン作動薬治療中の患者におけるHOMA-IRはインスリン抵抗性の適切な指標にはならない可能性があることを示唆していると述べている.
ソマトスタチン作動薬はSSTR2及び5に結合する可能性があるためGH以外にインスリン,グルカゴン,インクレチン分泌も同時に低下させる可能性がある(文献2,3).インスリン分泌が低下すればHOMA-IRは下がるが,結果として血糖値が下がらないのは当然と言える.この結果は,ソマトスタチン作動薬で治療している患者では耐糖能障害のモニタリングにはHOMA-IRではなく血糖ならびにHbA1Cを重視すべき事を示している.
このメタアナリシスの最大の問題点はHOMA-IRとIGF-1やGH濃度,治療による寛解の有無との関係が明らかでないことで,対象となった15報告の方法論の不均一がその理由と記載されているが,消化不良で後味の悪いシステマティックレビューとなっている.

<コメント>
ソマトスタチン作動薬で治療中の患者の耐糖能評価にHOMA-IRが適切な指標にならないことが示唆されたことは先端巨大症の薬物治療を担当している者たちにとっての重要な問題提起となっている。特に脳外科医には不慣れな分野であることから、知識の整理が必要である。
ソマトスタチン作動薬で治療中の患者でHOMA-IRが低下しても空腹時血糖が低下しないという本研究の結果については、前向き研究で検証される必要性がある。同時に先端巨大症患者における耐糖能異常のより詳細なメカニズムが解明される事を望みたい。 (米永理法)

執筆者: 

米永理法   

監修者: 

藤尾信吾