小児下垂体腺腫患者には過体重/肥満が多いか:メッシナシリーズ101例

公開日:

2021年4月12日  

最終更新日:

2021年4月12日

Long-term cardiometabolic outcome in patients with pituitary adenoma diagnosed in chilhood and adolescence

Author:

Giovinazzo S  et al.

Affiliation:

Endocrine Unit, University Hospital ‘G. Martino’, Messina, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:33469831]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2021 Jan
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

下垂体腺腫における18歳以下の小児の割合は2〜10%とかなり稀である.小児では従来,浸潤性が高い,手術による根治性が低い,再発が多いなど治療上の課題が指摘されてきたが(文献1,2,3),成長や代謝に与える影響も大きい.メッシナ大学内分泌科のチームは,1990~2017年に同大学で治療した101例(女性79例)の18歳未満の下垂体腺腫患者の代謝像を中心にその臨床像をまとめた.内訳はPRL58例,GH5例,ACTH13例,FSH1例,非機能性腺腫24例.全体では女児が多かった(79:22).ACTHのみ男女ほぼ同数であった.

【結論】

下垂体ホルモン低下は11.9%でその出現は腫瘍径と相関した(p<.001).診断時26.7%が過体重(標準の85~95パーセンタイル,成人ではBMI≧25≦30に匹敵)で,15.8%が肥満(>95パーセンタイル,成人ではBMI>30に匹敵).ACTHあるいはGH産生腺腫では肥満患者の頻度は健常児の2倍以上であった.下垂体ホルモン分泌障害の数とBMIは相関した(p=.039).プロラクチノーマで最終追跡時にまだ薬物療法中の患者では,BMIは初診時よりも高かった.

【評価】

著者らの施設(シチリア島メッシナ)を受診した小児下垂体腺腫患者では26.7%が過体重で15.8%が肥満であったが,これは患者たちが住む南イタリアでは普通のことのようで,一般人口でも25%が過体重で15%が肥満であるという.ちなみに日本の小児では両者を合わせても概ね10%くらいとされている.
一方,GHとACTH産生腺腫では過体重あるいは肥満患者は80%と70%であった.また下垂体ホルモン分泌障害がある患者では,無い患者に比較してBMI-SD値が高かった(平均値1.52 vs. 0.88,p=.042).ACTH産生腺腫患者では,手術等による寛解後BMI-SDは低下した(平均値1.73 vs. 0.75,p=.028).PRL産生腺腫患者では,最終追跡時に未だカベルゴリンなどの薬物療法が続けられていた患者ではBMI-SD値は治療前に比較してむしろ増加していた(平均値0.98 vs. 1.26,p=.041).
著者らの主張は,小児下垂体腺腫患者でも同地域の一般小児と過体重や肥満の割合は変わらないが,GH産生腺腫,ACTH産生腺腫の患者,下垂体ホルモン分泌障害を有する患者,PRL産生腺腫患者で薬物療法を受けている患者ではBMIが高く,丁寧なメタボリック・マネージメントが必要だという.
ちなみに,2019年の英国のSethiらの報告では,BMI-SD>2の肥満患者の割合は小児下垂体腺腫患者全体の約4割で,このメッシナシリーズより高い(文献4).これには,Sethiらの患者群でACTH産生腺腫患者が多かったことが反映されているようだ(13例/全24例).
小児の下垂体腺腫は稀であり,単一施設からのケースシリーズではバイアスが大きすぎて,その臨床像を正確に把握することは困難である.欧米とはメタボリックな背景が大きく異なる日本の小児を対象とした多施設共同研究が必要である.

執筆者: 

有田和徳