男性プロラクチノーマに対するアロマターゼ阻害剤アナストロゾールの有効性

公開日:

2021年8月23日  

最終更新日:

2021年8月25日

Anastrozole as add-on therapy for cabergoline-resistant prolactin-secreting pituitary adenomas: real-life experience in male patients

Author:

Ceccato F  et al.

Affiliation:

Endocrinology Department of Medicine DIMED, University of Padova, Padova, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:34173929]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2021 Jun
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

プロラクチノーマに対する治療の第一選択はドパミンアゴニスト(DA)であるが,男性のプロラクチノーマではDA抵抗性で浸潤性の発育を示すものが多い(文献1,2).このためWHO2017の分類では男性プロラクチノーマはアグレッシブ下垂体腺腫の1つに組み入れられている(文献3).ラットに対するエストロゲン投与はプロラクチン産生細胞の増殖とプロラクチン産生腺腫の成立をもたらす(文献4,5).男性プロラクチノーマでもエストロゲン受容体が発現していることが知られている(文献6).エストロゲンは女性では卵巣で産生されるが,男性では副腎由来のアンドロゲンがアロマターゼによってエストロゲンに変換される.

【結論】

イタリア・パドヴァ大学内分泌学科はカベルゴリン抵抗性の男性プロラクチノーマ4例(中央値:血中プロラクチン値7,730 μg/L,腫瘍径26 mm)にカベルゴリン(3~4.5 mg/週)に加えてアロマターゼ阻害剤のアナストロゾール投与(1 mg/日)を15-56ヵ月間行い,その効果を評価した.
その結果,プロラクチン値は中央値で70%(range:-44/-97%)減少し,1例で正常化した.腫瘍径は中央値で47%(-24.5/-68%)減少した.

【評価】

ドパミンアゴニスト,手術,時に放射線照射でもコントロール出来ないアグレッシブなプロラクチノーマに対する薬物療法としては,ソマトスタチンアナログ(オクトレオチド,パシレオチド),チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ),mTOR阻害剤(エベロリムス),アルキル化剤(テモゾロミド)の臨床使用が報告されている(文献7,8).
アロマターゼ阻害薬のアナストロゾール経口剤の投与はエストロゲン受容体が発現している閉経後の乳がんに対する治療法の1つとして確立している.
プロラクチノーマに対するアナストロゾール経口剤の使用の最初の報告は2002年にMolitchらによってなされている(文献9).この症例は巨大プロラクチノーマの若い男性患者で,カベルゴリンでプロラクチン値の低下を得たが,腫瘍の縮小が得られず,性腺機能は戻らなかった.この患者にテストステロン注射を3回行ったところプロラクチン値が再上昇した.そこでアナストロゾール経口剤を併用したところプロラクチン値の低下とカベルゴリン使用量の減少が得られたと報告されている.
本論文の4症例ではアナストロゾール1日1 mgの内服を15-56ヵ月継続し,プロラクチン値で70%,腫瘍径で47%の低下が得られている(いずれも中央値).
乳がんに対するアナストロゾールの使用中に認められる副作用としては,ほてり,頭痛,吐き気,関節痛などが知られているが,重篤なものは少ない.本論文の4症例でも重篤な有害事象は認められず,2例で体重増加(91→104 kg,96→101 kg)が認められた.体重増加は従来アナストロゾールの副作用としては注目されていない.本2例において体重増加がアナストロゾールによるものか,合併した下垂体機能の低下や補充療法の影響か,腫瘍による視床下部障害によるものか,その機序に関しては言及されていない.
本論文のアナストロゾールによるプロラクチン値の低下率や腫瘍縮小率を見ると,これがカベルゴリン抵抗性の男性プロラクチノーマや閉経後の女性プロラクチノーマに対する決定打とはならないような気がするが,著効を示す症例もあるようなので,選択肢が増えた感はある.特に,最初のMolitchらの報告のように性腺機能低下に対するテストステロン筋注によって,プロラクチン値が再上昇するような症例は良い適応かも知れない.症例の蓄積を待ちたい.

執筆者: 

有田和徳

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