クッシング病合併妊娠をどうするか:42報55例62妊娠のシステマティック・レビュー

公開日:

2021年9月21日  

最終更新日:

2021年9月22日

Diagnosis and treatment outcomes of Cushing's disease during pregnancy

Author:

Sridharan K  et al.

Affiliation:

Department of Endocrinology and Metabolism, All India Institute of Medical Sciences, Rishikesh, Uttarakhand, India

⇒ PubMedで読む[PMID:33779937]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2021 Oct
巻数:24(5)
開始ページ:670

【背景】

クッシング病(CD)ではアンドロゲンの過剰も伴うために妊娠は困難で報告は少なく,CD合併妊娠の適切な診断・管理法は不明である.本稿は全インド医科大学の内分泌学代謝科の手による自験例報告と42報55例62妊娠のレビューである.著者らの経験例は経2産の26歳で,約2年前から典型的なCD症状と皮膚黒色菌糸症が出現していた.15週で妊娠が確認され,同時にACTH依存性高コルチゾール血症が診断された.MRIで約6 mmの微小腺腫が発見されたので,20週で経蝶形骨洞手術(TSS)が施行された.術後血中ACTH,コルチゾールのレベルは低下し,コルチゾール補充下,40週での経膣分娩で問題なく3 kg体重児を出産した.

【結論】

55例の平均年齢は約30歳で,高血圧,肥満,多毛が各6割に認められた.CDの診断は妊娠前44%,妊娠中30%,妊娠後24%であった.62%でMRIが施行され,そのうち48%で微小腺腫が発見され,34%では異常は認められなかった.診断の感度は,24時間尿中フリー・コルチゾールは63%で,深夜血中コルチゾール値は94%であった.23%が妊娠中にTSSを受け,16%が薬物療法(カベルゴリンなど)を受け,61%はCDの治療を受けなかった.全体では87%で生児を出産し,有害事象は母体54%,胎児59%に認められた.CDの治療を受けなかった群では出生体重が低く,流・死産の頻度が高い傾向であった.

【評価】

同じクッシング症候群(CS)でもクッシング病(CD)ではコルチゾールの過剰のみならずアンドロゲンの過剰も伴うため,コルチゾール過剰のみを示す副腎腺腫に比して,妊娠の可能性は少ない(文献1,2).本稿はこのように稀なCD合併妊娠の適切な管理法を明らかにするために実施されたシステマティック・レビューである.
先ず診断の問題であるが,妊娠中は下垂体ACTH細胞からの分泌増加に加えて,胎盤からもACTHが分泌されるため健常妊娠でも総コルチゾール分泌が増加する.このためガイドライン上,妊娠中の患者では,CSの診断は24時間尿中フリー・コルチゾールが非妊娠者の上限の3倍以上であることの証明が推奨されている(文献3).
一方,妊娠中でもコルチゾールの日内リズムは保たれるので,深夜血中コルチゾールレベルは非妊娠者同様に低下する.本レビューでは,深夜血中コルチゾール値が440 nmol/l(正常妊娠第2トリメスターの平均+2SD,文献4)以上であれば,93.7%(15例/16例)の感度でCDの高コルチゾール血症を診断し得た.深夜唾液中コルチゾールに関しては過去に3例しか実施されておらず,正確な評価は困難であるが,CD診断のための各トリメスター毎のカットオフ値が提案されている(第1:255,第2:260,第3:285 ng/dl)(文献5).
デキサメタゾン抑制試験は,妊娠期間中はACTH-コルチゾールの抑制が鈍っているため推奨されていない(文献3).
本シリーズでは13例(23%)で,主として第2トリメスターに経蝶形骨洞手術が施行され,特に合併症なく終了し,76.9%で寛解を得ている.9例(16%)が薬物療法(カベルゴリン4例,ケトコナゾール4例,メチラポン3例,シプロヘプタジン3例)を受けており, 7例(78%)が寛解を得ている.
生児が得られたのは手術群91.6%,薬物療法群100%,無治療群82.5%であり,何らかの治療を行った方が,生児を得る可能性は高いという結果であったが,統計学的差はない."
副腎腺腫によるクッシング症候群に比較してクッシング病合併妊娠は稀であり,統計学的な処理が出来るほど多くの報告例はまだなく,本稿も叙述的レビューに留まっている.今後より多くの症例蓄積が必要であり,現段階で言えるのは何らかの治療介入は必要そうだということぐらいである.

執筆者: 

有田和徳