非機能性下垂体腺腫に対してカベルゴリンを試すべきか:誌上ディベート

公開日:

2021年9月21日  

最終更新日:

2021年9月22日

Cabergoline should be attempted in progressing non-functioning pituitary macroadenoma

Author:

Greenman Y, Bronstein MD (Co-first)  et al.

Affiliation:

Institute of Endocrinology, Metabolism and Hypertension, Tel Aviv-Sourasky Medical Center and Tel Aviv University, Tel Aviv, Israel Neuroendocrine Unit, Division of Endocrinology and Metabolism, Hospital das Clinicas, University of Sao Paulo Medical School, Sao Paulo, SP, Brazil

⇒ PubMedで読む[PMID:34288884]

ジャーナル名:Eur J Endocrinol.
発行年月:2021 Aug
巻数:185(4)
開始ページ:D11

【背景】

非機能性下垂体腺腫(NFPA)にカベルゴリン(CB)を投与すべきだろうか.本稿はこのテーマに関する誌上ディベートである.
[賛成]NFPA術後腫瘍残存例のうち55例には術後早期から,24例には増大確認後からCBを投与したところ,腫瘍コントロール(縮小か不変)は術後早期群で87%,増大確認後群で49%であった(p<.0001)(文献1).NFPA術後腫瘍残存116例に対するRCTでは,腫瘍増大はCB群で5%,非投与群で16%であった(p=.01)(文献2).この2報を含めた6報281例では腫瘍縮小はCB群38%で,非投与群5%であった.CBの副作用の多くは一過性で,投与中止によって回復する.

【結論】

[反対]NFPAに対するCBの有効性に関する報告を読む時に,NFPAが自然史でも11%,あるいは0-30%が縮小すること(文献3,4),報告されているCBによる縮小の相当の割合が先行手術後1年以内に起こっており,手術後の自然経過をみている可能性があることには注意が必要である.また,報告例にはプロラクチノーマが含まれている可能性がある.さらに長期経過観察のデータが欠如している,D2受容体の発現など効果予測因子との関連が明らかになっていないなどの問題が指摘出来る.CBによる病的ギャンブル,常同行動,衝動的ショッピングなどの強迫性行動障害や,長期大量投与時の心弁膜障害の問題は軽視されるべきではない.

【評価】

一般に非機能性下垂体腺腫手術後の増大に対しては再手術が検討されるが,初回手術に比較して新規の下垂体機能低下,脳神経症状,髄液漏などのリスクは高く,手術死亡も0.3~0.5%と決して無視し得ない(文献5).定位放射線照射も選択肢ではあるが,これもまた長期的には下垂体機能低下などの有害事象と無縁ではない(文献6).そこで薬物療法の登場が待ち望まれているのであるが,現段階で有効性のエビデンスが高いものは少ない.
本稿はその中で,プロラクチノーマに対する第1選択薬になっており臨床家にはなじみの深いカベルゴリンの使用についてEJE誌上で展開された誌上ディベートで,PRO[賛成]の著者はテルアビブ大学のGreenman,CON[反対]の著者はサンパウロ大学のBronsteinである.
本稿のまとめ(おそらくPRO,CON両者の合意)では,これまでの報告は,経過観察期間,効果の評価方法などいくつかの警告条項(caveats)がつくが,カベルゴリンは非機能性下垂体腺腫術後残存腫瘍のかなりの割合のコントロールに有用であることを示していると述べている.その上で,再手術や放射線照射に伴うリスクと他に有効な薬物療法がないことを考慮すれば残存腫瘍の増大例に対する試用には同意できると結論している.
非機能性下垂体腺腫は生物学的には一様でなく,下垂体細胞分化系統(lineage)毎に分けられ,免疫染色における転写因子と下垂体前葉ホルモンの発現に基づいて8亜型が分類されている.その中で,最も多いのがゴナドトロピン産生腺腫,続いてサイレントACTH産生腺腫であるが,カベルゴリンが効くのはこれら8亜型のうちのどれなのか,あるいはどれにも一様に効くのか,今後この観点からの解析が必要である.さらに,残存腫瘍に対する治療適応を考慮する際にはKi-67を含めたバイオマーカーによるアグレッシブさの予測(文献7),あるいはD2受容体を含めたカベルゴリン感受性の予測も必要である.
今後新たに臨床研究を行うとすれば,手術後の自然縮小のケースを排除するために,手術後一定期間(例:1年以上)を経過した症例のみを対象とするなどの配慮も必要になろう.一方で,定位放射線治療の装置・手技も進化しているので,対照治療群も慎重に設定される必要性がある.

執筆者: 

有田和徳