のう胞性下垂体腺腫とラトケ嚢胞の鑑別には造影3D-FLAIRが役にたつ

公開日:

2021年9月28日  

最終更新日:

2021年10月6日

Added Value of Contrast-enhanced 3D-FLAIR MR Imaging for Differentiating Cystic Pituitary Adenoma from Rathke's Cleft Cyst

Author:

Azuma M  et al.

Affiliation:

Department of Radiology, Faculty of Medicine, University of Miyazaki, Miyazaki, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:33487606]

ジャーナル名:Magn Reson Med Sci.
発行年月:2021 Jan
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

のう胞性下垂体腺腫(CPA)とラトケ嚢胞(RCC)のMRIによる鑑別は時に難しいことがある.宮崎大学のAzumaらは両者の鑑別における造影3D-FLAIRの有用性について検討した.対象はRCC6例とCPA6例.全例で3TMRIを用いて,造影剤投与の前後でT1強調像と3D-FLAIR像を得た.臨床情報にブラインドの2人の放射線科医がのう胞壁の造影程度を3段階(グレード2:のう胞壁全体とのう胞内縁全周が造影される,グレード1:のう胞壁かのう胞内縁の一部が造影される,グレード0:いずれも全く造影されない)に分けた.続いて臨床情報にブラインドの1人の放射線科医がこれらの所見に基づいて,診断を下した.

【結論】

T1強調画像,3D-FLAIRともに造影程度のグレードの検者間一致度は高かった(K=1.00と0.885).造影T1では造影グレードは2群間で差はなかった.しかし,造影3D-FLAIRでの造影グレードはRCCでグレード0が1例,グレード1が5例であったのに対して,CPAでは6例すべてがグレード2で著明な差を示した(p<.05).特にCPAの3例では,のう胞内縁を中心にドーナッツ状の分厚くかつ強い増強効果が認められた.造影3D-FLAIRに基づく診断精度は,造影T1に基づく診断精度より高かった(感度,特異度,正確度の順で1.00,0.83,0.92と1.00,0.50,0.75).

【評価】

のう胞性下垂体腺腫(CPA)とラトケ嚢胞(RCC)のMRIでの鑑別には,造影T1画像やダイナミック造影T1画像における腫瘍実質と下垂体の判別,のう胞内隔壁の有無,のう胞内小結節(waxy nodule)の有無,T1,T2像におけるのう胞内容液の信号強度などが用いられてきたが(文献1,2,3),正確な判別は必ずしも容易ではない.
本研究はCPAとRCCの画像診断において,造影T1に比較して,造影3D-FLAIRがより高い精度を示すことを明らかにした.
既に,下垂体腺腫における造影FLAIRの有用性に関しては,極く微少なACTH産生腺腫の優れた検出能が報告されている(文献4).
3D-FLAIRはT1画像やMPRAGEに比較して, 低いガドリニウム濃度と遅い血流速度に対してより高い感受性を示すことが知られている(文献5).一方,高いガドリニウム濃度や早い血流速度に対しては低い感受性を示す.すなわち血流速度が早く,結果として投与されたガドリニウムが流入しやすい下垂体は造影されない.このためのう胞壁が下垂体であるRCCでは3D-FLAIRでのう胞壁の造影所見は得られない.一方,腺腫組織では血管外に漏出する低濃度のガドリニウムを3D-FLAIRが鋭敏にとらえるため造影効果が高い.
既に著者らは,造影3D-FLAIRがCPAとRCCの鑑別に有用である可能性を示唆しているが(文献6),本研究はCPAとRCC各6例ずつを用いて造影3D-FLAIRの診断精度が高いことを改めて示したものである.
加えて本報告では,前報では触れられていない所見として,のう胞内縁に沿った分厚い造影効果(ドーナッツ・サイン)がCPAの半数(3/6)に認められることを報告している.これは造影T1画像では認められない所見である.著者らは腫瘍内梗塞の結果生じたのう胞ではその内腔への低濃度のガドリニウムの漏出があり,そのために3D-FLAIRで分厚い造影効果を示したのではないかと示唆している.
確かに代表症例として提示されたCPAの3D-FLAIR画像は印象的で,CPAののう胞内壁の内側に分厚い辺縁不明瞭な強い造影効果が認められている.ただしドーナッツ・サインにはのう胞に面した腺腫組織も含んでいるように見える.
いずれにしても興味深い発見であり,是非とも外部コホートで検証されるべきである.
一方,ラトケのう胞も単純な繊毛円柱上皮からだけで成り立っているのではなく,重層扁平化したり,時に炎症を伴うものもある.このようなラトケのう胞でも造影3D-FLAIR画像では造影効果を示さないのか,検討すべきである.さらにラトケのう胞における下垂体前葉機能低下と造影3D-FLAIR画像の関連も重要なテーマであると思われる.

<著者コメント>
以前の我々の検討では,正常下垂体前葉は増強効果を示さない傾向を示した.充実成分のみの下垂体腺腫の場合でも,造影3D-FLAIRでの増強効果あまり目立たず,あっても軽度である.一方,のう胞構造を伴った下垂体腺腫の場合,造影3D-FLAIRでは,のう胞壁に強い増強効果を認める.これは,造影3D-FLAIRによる造影剤の染み出しを利用した画像所見と考えられる.ドーナッツ・サインは,のうほう胞壁内側に沿うように厚みをもって描出されており,染み出した微量の造影剤を反映していると思われる.(宮崎大学放射線科 東美奈子)

執筆者: 

有田和徳