3 mm細径プローブを用いた経蝶形骨洞手術中超音波モニタリング:非使用例との比較

公開日:

2021年10月11日  

Utility of intraoperative ultrasonography for resection of pituitary adenomas: a comparative retrospective study

Author:

Alshareef M  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Medical University of South Carolina, SC, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33403430]

ジャーナル名:Acta Neurochir (Wien).
発行年月:2021 Jun
巻数:163(6)
開始ページ:1725

【背景】

経蝶形骨洞手術に術中超音波検査が導入されて四半世紀が経つが(文献1,2),この間に機器の改良も進んでいる.サウス・カロライナ大学脳外科チームは最近4年間に術中超音波モニターを用いた経蝶形骨洞手術を受けた34例を,用いなかった104例と比較した.
超音波診断システムはHitachi社製で,径3 mmの硬性でバイオネット型のエコープローブ(UST-5311)を用いた.本プローブの手元側にはニューロナビゲーション用のマーカーが装着可能で必要に応じてプローブ先端の位置と向きが3D表示出来た.トルコ鞍底開放前,開放後,摘出術中,摘出後にスキャンして内頚動脈を含む腫瘍周囲の構造や残存腫瘍を描出した.

【結論】

術中超音波検査使用群と非使用群で性,年齢,ホルモン産生腫瘍の割合,腫瘍径,Knospグレードなど背景因子に差はなかった.多変量解析では,超音波検査使用群の方が腫瘍全摘率が高く(44 vs 7%,p=.0008),手術時間が短く(74 vs 146 min,p<.0001),出血量が少なく(119 vs 284 cc,p<.0001),入院期間が短かった(2.9 vs 4.2日,p=.001).その他, 血管損傷,髄液漏,術後下垂体機能低下,術後出血などの手術合併症も超音波検査使用群の方が少なかったが有意差はなかった.

【評価】

経蝶形骨洞手術の術中画像モニタリングとして,術中MRIや術中CTの導入が進んできたが,特殊な手術室と装置が必要なため,一般化はしていない.また,撮像まで20~30分を要することもあり,即時性に欠ける.一方,手術前の画像情報に基づくナビゲーションシステムは,あくまでも仮想現実の上に手術部位をポイントとして表現させるに過ぎない.術中超音波検査は術野に小型の超音波探プローブ(例:小児用経食道エコープローブ)を挿入するだけで,1分以内のタイムラグで術野の裏の解剖学的情報を明瞭に示す.カラードップラー表示をさせれば,血管系の描出も容易である.術中超音波検査を用いた下垂体腺腫手術の既報のプール解析ではGTR率67.1%(63.5~77.8%),内分泌学的寛解率88.4%(76~100%)という数値になっている(文献3,4,5,6).ただし,超音波非使用例との比較のデータはなく,その有用性のエビデンスレベルは未だ低かった.
本論文は単一施設で,術中超音波検査使用の34例と非使用の104例を比較した点でユニークである.またこれまでの報告では,径約7~10 mmエコープローブの使用が多かったが,本研究では最近導入された細径(約3 mm)のエコープローブを用い,術中ナビゲーションと連動させている.
その結果,多変量解析で,腫瘍全摘率,手術時間,出血量,入院期間の全てにおいて,術中超音波検査使用群の方が有意に優れた結果が得られている.
少し気になるのは術中超音波検査使用群で内視鏡下手術は8.8%,非使用群では76.9%と大きな差があったことで,これは著者らの施設では手術方法(内視鏡あるいは顕微鏡)と術中超音波検査使用が独立した3人の術者の好みに任されていたことが原因である.多変量解析を行ってはいるが,術者によるselection biasが本研究結果をゆがめている可能性は否定出来ない.
経蝶形骨洞手術における術中超音波使用の有用性の正確な評価のためには,やはり多数例を対象とした多施設でのRCTが必須である.
なお,本研究で使用されたUST-5311プローブは米国等で椎間板ヘルニア等の内視鏡下手術で使用されているディスポ製品で,現段階で我が国では薬事認証を取得していない.今後の認証に向けた動きに期待したい.さらに, 経蝶形骨洞手術の特性を反映した専用プローブの開発も待たれる.

執筆者: 

有田和徳