薬物療法後で寛解が得られなかったプロラクチノーマに対する手術はどのくらい有効か?:10文献816例のメタアナリシス

公開日:

2021年11月8日  

Surgical outcomes of medically failed prolactinomas: a systematic review and meta-analysis

Author:

Yagnik K  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Mayo Clinic, Rochester, MN, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34580821]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2021 Dec
巻数:24(6)
開始ページ:978

【背景】

プロラクチノーマに対する治療の第1選択は薬物療法であるが(文献1,2),薬物療法単独での寛解が得られない例もある.本稿はドパミン作動薬で寛解が得られなかったプロラクチノーマに対する手術療法の効果に関するメタアナリシスである.対象は2008年以降に発表され,PRISMA声明に基づいて抽出された10報816例で,このうち657例に手術が施行されていた.38%は観察期間中央値49ヵ月で手術単独での寛解状態であった(p<.001,I2統計量=67%).62%は観察期間中央値53ヵ月で集学的治療(薬物治療再開や定位放射線治療8%を含む)による寛解状態であった(p<.001,I2=93%).

【結論】

16%は術後早期寛解後平均27ヵ月で再発した.46%は最終追跡時においてドパミン作動薬の再投与が行われていた(p<.001).
サブグループ解析ではマイクロアデノーマでは手術単独での寛解は66%で手術効果は有意であったが(p=.01),マクロアデノーマでは手術単独での寛解は22%で手術効果は有意ではなかった(p=.49).マクロアデノーマの43%は集学的治療で寛解状態であった(p<.001).

【評価】

プロラクチノーマに対する治療の第1選択はドパミン作動薬で,なかでもカベルゴリンはその高い効果,作用時間の長さ,少ない副作用によって,1990年代以降は薬物療法の中心となってきた(文献2,3,4,5).しかし,カベルゴリンの大量かつ長期の投与によっても,プロラクチン値の正常化が得られない症例があり,そのような症例には手術療法が選択されてきたが,その効果については充分に明らかになっているとは言えない.
本稿はドパミン作動薬で寛解が得られなかった症例で比較的最近(2006~2021年)に手術が施行された症例に関する報告のメタアナリシスである.
対象はブロモクリプチン15 mg/日あるいはカベルゴリン1.5~3.0 mg/週でもプロラクチン値の正常化が得られないか,副作用のため,ドパミン作動薬が継続出来ない症例であった.
解析の結果,38%は手術単独での寛解が,62%は手術に加えてガンマナイフや再度のドパミン作動薬の投与などの集学的治療で寛解が得られることが明らかになった.手術による利益が得られなかったのは14%のみであった.一方,マクロアデノーマに関しては手術単独による寛解の獲得は統計学的には有意ではなかったが,その後の集学的治療で43%で寛解がえられ,手術の効果が確認出来ている.マクロアデノーマでは海綿静脈洞浸潤を伴うものが多く手術単独による寛解は困難であるが,そのような症例でも手術による腫瘍の減量でその後の治療によって寛解を得られやすくなることを示唆している.

<コメント>
本研究の最大の問題点は,手術の対象がカベルゴリン投与量3mg/週まででプロラクチンの正常化が得られなかった症例であったことで,最近はカベルゴリン10mg/週くらいの大量投与でプロラクチンの正常化が得られる症例もあることが報告されている(文献1).また,対象例の約38%が男性であったが,男性例あるいは閉経後女性例でも挙児希望の妊孕期女性と同じようにプロラクチン値の正常化を目指さなければならないのか,カベルゴリンで視路や脳への圧迫が無くなれば良いのではないかという考え方もある.したがって,薬物療法を受けているプロラクチノーマの患者で本当に手術が必要となる患者はかなり稀ではないかという印象を持っている.
その他の問題としては,薬物療法の対象となった全患者に占める手術実施患者の割合,手術までに使用されたドパミン作動薬の総量,使用期間などのデータが示されていないこと,腫瘍の周囲組織への浸潤の有無,Ki-67値,腫瘍径などの因子と手術後寛解獲得との関係が不明であることが挙げられる.これらは主としてメタアナリシスに採用した報告の不均質性によるものであるが,今後の前向き研究で解決されなければならない課題である.(鹿児島大学下垂体疾患センター 藤尾信吾)

執筆者: 

有田和徳