1日1回内服で良い新規SST2作動薬パルツソチンの登場:第1相試験の結果

公開日:

2022年1月24日  

最終更新日:

2022年1月24日

Paltusotine, a novel oral once-daily nonpeptide SST2 receptor agonist, suppresses GH and IGF-1 in healthy volunteers

Author:

Madan A  et al.

Affiliation:

Crinetics Pharmaceuticals, Inc, San Diego, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:35000098]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2022 Jan
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

米国Chiasma社の経口オクトレオチドカプセル剤(MYCAPSSAⓇ)は3相試験が終了し(文献1,2),2020年6月にFDAの承認を受けており,米国では臨床使用が始まっている.
本稿は,新規の非ペプチド系経口SST2作動薬であるパルツソチン(Crinetics社,San Diego)の健常人を対象とした偽薬対照二重盲第1相試験の結果である.
対象者は単回投与試験で,実薬41名,偽薬14名,1日1回複数日投与試験で実薬24名,偽薬12名であった.用量は単回投与試験で1.25~60 mg,漸増複数日投与試験で5 mg(×7日),10,20,30 mg(各×10日)であった.

【結論】

パルツソチンは忍容性良好で,高いバイオアベイラビリティーが得られ,1回量40 mg内服まで血中濃度が漸増し,半減期は約30時間であった.パルツソチンの1.25~20 mg単回投与はGHRH刺激下でのGH分泌を44~93%抑制した.パルツソチン5~30 mgの10日間投与はIGF-1を19~37%低下させた.
新規経口SST2作動薬パルツソチン1日1回内服は先端巨大症やその他の神経内分泌腫瘍に対する治療薬として有望である.

【評価】

これまで,先端巨大症の治療に使われてきたSST2作動薬(SRLs徐放製剤)のオクトレオチド,ランレオチド,パシレオチドはいずれもペプチドで,消化管で分解されるため,皮下注射が必要であった.SRLs徐放製剤の注射は月に1回といえども注射時の痛み,注射部硬結,炎症,瘢痕化,不安,次回注射前の先端巨大症状の再発など患者には相当な負荷を与える治療である(文献3).これらの欠点を克服するために,オクトレオチドカプセル剤OOC(MYCAPSSAⓇ,Chiasma社,Needham,MA)が開発された.OOCは胃で溶けないようにコーティングされ,かつ腸管上皮間のtight junctionの透過性を一時的に高めるエンハンサー機能(TPE)を有しており,効果的に腸管内血管にオイル懸濁オクトレオチドを送り届けることが出来る(文献1).偽薬対照二重盲試験ではOOC実薬群で,58.2%でIGF-1のコントロールが維持出来ることが示されている.しかしOOCは空腹時に1日2回の内服が必要である.
一方,パルツソチン(開発コードCRN00808)は非ペプチドSST2作動薬であり,1日1回の空腹時投与での臨床実用を目指している.
本治験では,パルツソチン内服に伴う有害事象として漸増複数日投与で,頭痛,腹痛,下痢の自覚症状が12.5~16.7%,非持続性の心室性心拍,高血糖,膵酵素の高値が8.3%で認められたが重篤なものはなかった.問題点としては,本治験参加者として男女とも募集したが,男性しか登録されず,大部分が30歳以下であった事が挙げられる.
本稿によって,健常者を対象とした第1相試験でのパルツソチンの安全性,体内薬物動態,GH/IGF-1抑制効果が公表されたわけだが,既に,先端巨大症に対するパルツソチンの2つの第2相試験も終了している.その1つACROBAT EDGEはオクトレオチドやランレオチドによってIGF-1が正常化しなかった先端巨大症患者に対するパルツソチンの安全性と有効性に関する試験である(文献4).もう一つのACROBAT EVOLVEはオクトレオチドやランレオチドによってIGF-1が正常化した先端巨大症患者に対するパルツソチンの安全性と有効性に関する試験である(文献5).まもなく,その結果が公表されるであろう.
これらの試験の結果によって,多数例の先端巨大症患者を対象とした3相試験に向けて弾みがつくものと思われる.引きつづいて展開を見守りたい.

<コメント>
先端巨大症の薬物療法における標準治療はSST2作動薬であるソマトスタチン誘導体であるが,これらは注射薬であり患者の負担は大きい.現在,SST2作動薬の経口製剤が世界で開発されつつあり,今回のパルツソチンはその一つである.経口製剤が一般診療で処方可能になれば,先端巨大症の治療も大きく様変わりすると考えられる.一方で,SST2作動薬抵抗性を示す腫瘍に対して,現在はパシレオチドやペグビソマントが使われているが,これらの経口剤の開発も待たれる.(奈良県立医科大学糖尿病・内分泌内科 高橋 裕)

執筆者: 

有田和徳