のう胞性下垂体部腫瘤の4型への画像分類はラトケ嚢胞とのう胞性下垂体腺腫の鑑別に寄与するか

公開日:

2022年1月24日  

最終更新日:

2022年1月24日

Cyst Type Differentiates Rathke Cleft Cysts From Cystic Pituitary Adenomas

Author:

Tavakol S  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34956896]

ジャーナル名:Front Oncol.
発行年月:2021 Dec
巻数:11
開始ページ:778824

【背景】

ラトケのう胞(RCC)とのう胞性下垂体腺腫(CPA)のMRIによる鑑別は容易ではない.ブリガムアンドウーマン病院脳外科は下垂体部のう胞性腫瘤205例をMRI上4つのタイプに分けて,病理診断との関係を求めた.
タイプ1:明瞭でスムーズな辺縁,均一な内容の単一のう胞で実質成分のない68例
タイプ2:明瞭だが不整な辺縁,隔壁のある不均一な内容ののう胞で実質成分をわずかに含む72例
タイプ3:タイプ1同様に明瞭でスムーズな辺縁,均一な内容の単一のう胞であるが,周囲に明らかな実質成分がある10例
タイプ4:辺縁は不整で時に不明瞭,実質成分が主体で,その中に不均質な内容の多発性のう胞が含まれる55例

【結論】

3人の検者のタイプ分け診断は91%の症例で一致し,一致度は高かった(k=0.86).くも膜のう胞やRCCはタイプ1,2で多く,CPAや頭蓋咽頭腫はタイプ3,4で多かった(p<.0001).タイプ2と4はタイプ1に比較してCPAである可能性が有意に高かった(OR:23.7,342.6).液面形成はCPAである可能性が高かった(OR:12.7).肥満や症候性高プロラクチン血症患者ではCPAが有意に多かった(OR:5.0,11.5).ROC解析では,4つの画像タイプ,液面形成,臨床像(肥満と症候性高プロラクチン血症)からなるモデルは83.8%の症例でCPAを正確に診断した(AUC:0.922).

【評価】

のう胞性下垂体腺腫(CPA)とラトケ嚢胞(RCC)のMRIによる鑑別には,造影T1画像やダイナミック造影T1画像における腫瘍実質と下垂体の判別,のう胞内隔壁の有無,のう胞内小結節(waxy nodule)の有無,T1,T2像におけるのう胞内容液の信号強度などが用いられてきたが(文献1,2,3,4),正確な判別は必ずしも容易ではない.
本稿は200例以上ののう胞性下垂体病変を,4つの画像タイプに分けて,このタイプ分けが病理像の予測に役立つかどうかを検討したものである.その結果,辺縁明瞭ですべてあるいはほとんどが単一のう胞からなる下垂体病変(タイプ1か2)では非腫瘍性のう胞すなわちくも膜のう胞やラトケのう胞の可能性が高く,それ以外ではのう胞性下垂体腺腫や頭蓋咽頭腫の可能性が高いという結果であった.
しかし,各タイプ毎の病理診断を見ると,タイプ1でくも膜のう胞(AC)11.8%,ラトケのう胞(RCC)64.7%,のう胞性下垂体腺腫(CPA)20.6%,頭蓋咽頭腫(CP)1.5%,タイプ2でAC9.7%,RCC43.1%,CPA40.3%,CP5.6%,タイプ3でRCC30.0%,CPA70.0%,タイプ4でRCC1.9%,CPA83.3%,CP14.8%であった.すなわちタイプ4ではRCCの可能性はほとんど無く,CPAの可能性がかなり高いが,他の3つのタイプではRCCもCPAも20%以上の頻度で存在しており,4つの画像タイプのみで正しい診断を下すことはかなり難しいことがわかる.
そこで,著者らはこのタイプ分けと共に別の2要素,すなわち,のう胞内の液面形成(fluid fluid level)と臨床像(肥満と症候性高プロラクチン血症)も総動員したら,AUC0.9222という高い精度でのう胞性下垂体腺腫を診断出来たと言う.
液面形成は多くの場合は出血後の変化を反映しているので,のう胞性下垂体腺腫の可能性が高そうである.
しかし,肥満(本稿で定義は明記されていない)はどういう関係があるのか?これに関しては,やはりハーバード大学のチームが米国の約30万人の医療従事者を対象とした730万人・年の前向きコホート研究で,成人期早期におけるBMIや胴囲の高値は下垂体腺腫の発生と相関があることを,米国内分泌学会誌Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism(JCEM)に2021年に掲載している.そのメカニズムは詳細ではないが,肥満が下垂体腺腫発生に関連する疫学的なリスク因子である可能性を提起している(文献5).
一方,高プロラクチン血症を伴うのう胞性下垂体病変では,stalk effectを受けたラトケ嚢胞か,プロラクチン産生のう胞性下垂体腺腫かという鑑別が問われる.しかし,のう胞成分を除いた実質部分の体積とプロラクチン値は概ね相関するはずなので,画像タイプに頼らなくても,ある程度の鑑別は可能と思われる.
そもそも,本シリーズののう胞性下垂体腺腫95例のうち46.2%は機能性腺腫であるが,こうした症例は詳細な内分泌学検討を行えば,下垂体腺腫の診断は可能なので,本来は検討対象からは外すべきであったと思われる.
因みに本研究ではT1強調MRIの単純と造影,T2強調MRI画像のみが評価対象であり,ダイナミックスタディーやDWIは含まれてはいない.これまでにラトケ嚢胞の鑑別項目として報告されている正常下垂体の位置,のう胞内容液の性状(T1高信号/T2低信号など),のう胞内結節の有無も検討対象に入っていない.さらに最近は,のう胞性下垂体腺腫とラトケ嚢胞の鑑別における造影3D-FLAIRの有用性も報告されている(文献6).
今後,こうした各種MRI診断モダリティーと比較した時のこの4種へのタイプ分けの意義についての検討が望まれる.

執筆者: 

有田和徳