下垂体腺腫に対する一次治療としてのガンマナイフの効果と下垂体機能障害:1,381例のメタ解析

公開日:

2022年5月18日  

最終更新日:

2022年5月19日

Endocrine disorders after primary gamma knife radiosurgery for pituitary adenomas: A systematic review and meta-analysis

Author:

Palmisciano P  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University of Cincinnati, Cincinnati, OH, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:35349010]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2022 Mar
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

術後残存下垂体腺腫に対するガンマナイフ後に,下垂体機能障害が出現する頻度は20~30%と稀ではない(文献1,2,3).最近,手術療法が困難あるいは手術による根治が困難と予想される下垂体腺腫に対して最初からガンマナイフを行うという治療戦略も出現している(文献4,5).本稿はこのような一次ガンマナイフの効果と照射後の下垂体機能障害に関する24報告1,381例を対象としたメタ解析である.腫瘍の内訳はプロラクチノーマ32.4%,成長ホルモン産生腺腫31.5%,非機能性腺腫20.9%,ACTH産生腺腫13.4%などであった.腫瘍体積中央値は1.6 cm ³で,83.8%がマクロアデノーマであった.

【結論】

腫瘍の辺縁線量中央値は22.6 Gy,下垂体茎,視路,視交叉への最大線量中央値はそれぞれ9,7,5 Gyであった.5年間での内分泌学的正常化率は48%,腫瘍コントロール率は97%であった.一方,11.4%で中央値45ヵ月後に新規下垂体機能障害が出現した.新規下垂体機能障害の内訳は二次性甲状腺機能低下42.4%,二次性性腺機能低下33.5%,汎下垂体機能低下19.6%であった.
術後ガンマナイフに比較すると一次ガンマナイフによる下垂体機能障害発生は少ない可能性がある(11.4 vs. 18~32%[既報]).下垂体や下垂体茎への照射線量を最低限に抑えることと,照射後長期にわたる経過観察が重要である.

【評価】

既報の多施設研究では,成長ホルモン産生腺腫に対するガンマナイフによる10年目までの初期寛解率は69%であった(文献6).本メタ解析では,成長ホルモン産生腺腫に対する一次ガンマナイフ後の内分泌学的正常化率は56.9%(182/320症例)にとどまっている.また,先行するバージニア大学等世界7施設からの報告では,成長ホルモン産生下垂体腺腫に対する一次ガンマナイフ26例と術後ガンマナイフ26例の比較(傾向スコアマッチング法)では,治癒率(19.2 vs. 36.5%,p=.12),IGF-1正常化率(69 vs. 76.9%,p=.46)には統計学的に差はなかったと記載されているが,両者とも実数では術後ガンマナイフの方が高い(文献5).少なくとも,機能性下垂体腺腫に関しては,やはり術後ガンマナイフの方が寛解率は若干高そうで,手術が可能な患者では安全な範囲内での経鼻内視鏡下摘出後にガンマナイフ照射を行うのが良さそうである.
本稿で注目されるのは,既報の術後ガンマナイフに比較して,一次ガンマナイフの方が下垂体機能障害発生は少ない可能性が指摘された点である.確かに,下垂体への侵襲が手術によって既に加わっている術後ガンマナイフ照射に比較すれば,一次ガンマナイフでは新たな下垂体機能障害の発生が少ない事は理解出来る.
上述の成長ホルモン産生下垂体腺腫に対する一次ガンマナイフと術後ガンマナイフの比較でも(文献5),新たな下垂体機能障害出現は一次ガンマナイフの方が若干低いと報告されている(15.3 vs. 19.2%,p=.67).
しかし,下垂体機能温存という点での一次ガンマナイフのメリットが,内分泌学的寛解を代償とするものであれば,その戦略は容易には肯定出来ない.患者のQOL,費用効果,社会経済的な長期的な負荷の観点から,術後ガンマナイフとの総合的な比較が行われるべきであろう.
また本研究では,一般に下垂体ホルモンのうちで最も障害されやすい成長ホルモンの分泌障害の出現は下垂体ホルモン分泌障害が出現した患者中で10.8%と他のホルモンに比較して低かった.これは,メタ解析の対象となったほとんどの研究では成長ホルモン分泌機能の評価がなされていないことを反映している.成人における成長ホルモン分泌障害が患者の代謝,心血管系,諸臓器機能,QOLなどにもたらす悪影響は良く知られており,一次ガンマナイフが成長ホルモン分泌に与える影響に関しては,今後厳密に評価されるべきである.
一方,最近,大型腺腫などを対象に寡分割定位放射線照射が導入されつつあり,周囲組織への障害を低減させていることが報告されている.しかし,下垂体腺腫に対する一次寡分割ガンマナイフ照射による下垂体機能障害の頻度,重症度に関するまとまった報告はない.これも今後の課題である.
いずれにしても,著者らも言うように,術後ガンマナイフ同様,下垂体腺腫に対する一次ガンマナイフ後の患者でも10年,20年という長期の内分泌学的モニタリングは必須であろう.

<コメント>
本研究は,ガンマナイフを一次的治療とした下垂体腺腫の治療成績のシステマティック・レビューである.まず,プロラクチノーマが34.2%を占めているが,プロラクチノーマに対するガンマナイフの内分泌寛解率が悪いことは報告されており(文献7),現在であれば薬物療法で治癒可能な症例も含まれていると思われる.また,治療線量に関してmedian marginal doseが22.6 Gyと記載されているが,通常,機能性下垂体腺腫では20 Gy以上で,非機能性下垂体腺腫では14~15 Gyで治療されることが多い.機能性腺腫と非機能性腺腫を一つのカテゴリーで議論するのは問題である.
今回の研究では,成長ホルモン産生下垂体腺腫に対する内分泌寛解は56.9%で得られたとされているが,成長ホルモン産生下垂体腺腫に対するガンマナイフの治療成績も,最新のシステマティック・レビューでは内分泌寛解は44%と報告されている(文献7).さらに本報告では腫瘍制御は97%で得られていると報告されているが,鞍上部進展例が26%含まれている.鞍上部進展はガンマナイフによる腫瘍制御の不良因子と考えられており(文献8),やはり十分な腫瘍減圧の後にガンマナイフ治療を行うべきと思われる.さらに,新たな下垂体機能障害は11.4%にのみに生じたとしているが,鞍上部進展した症例は下垂体・下垂体柄への被曝線量が多くなり,照射後の下垂体機能障害の出現のリスクは高くなると考えるべきである(文献9).
下垂体腺腫に対する一次ガンマナイフ治療は,腫瘍制御,内分泌的寛解,下垂体機能障害など多角的な視点から,慎重にその治療成績を評価すべきであり,この治療法はあくまでも手術適応がない症例に限るべきと考える.(富永病院ガンマナイフセンター 岩井謙育)

執筆者: 

有田和徳

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