成長ホルモン産生下垂体腺腫と非機能性下垂体腺腫に進展の違いはあるか

公開日:

2022年5月18日  

最終更新日:

2022年5月19日

Growth hormone secreting pituitary adenomas show distinct extrasellar extension patterns compared to nonfunctional pituitary adenomas

Author:

Pangal D  et al.

Affiliation:

USC Brain Tumor Center, Keck School of Medicine, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:35334028]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2022 Mar
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

成長ホルモン産生下垂体腺腫と非機能性下垂体腺腫の周囲組織への進展,浸潤に違いはあるのか.この問いに答えるため,UCLA脳腫瘍センターは過去10年間に経験した非機能性下垂体腺腫139例と成長ホルモン産生下垂体腺腫40例のMRI所見を比較した.

【結論】

成長ホルモン産生腺腫は非機能性下垂体腺腫と比較して有意にトルコ鞍内に留まった(50 vs 26%,p<.001).トルコ鞍より下方のみへの進展は成長ホルモン産生腺腫で多かった(20 vs 2.8%,p=.001).トルコ鞍より上方のみへの進展は非機能性下垂体腺腫で多かった(60 vs 28%,p<.001).トルコ鞍より下方と上方への両側進展は非機能性下垂体腺腫で多かった(25 vs 3%,p=.011).海綿静脈洞方向のみへの進展(Knospグレード3,4)は成長ホルモン産生腺腫でやや多かったが,有意差はなかった(8 vs 3%,p=.39).

【評価】

従来から,成長ホルモン産生下垂体腺腫はトルコ鞍底を破壊して下方の蝶形骨洞内や斜台に進展しやすいことが報告されている(文献1,2,3,4,5).これらの報告では,成長ホルモン産生腺腫の下方進展は50-88%と高率である(文献1,3).本研究では,非機能性下垂体腺腫に比べればその頻度は有意に高いが,成長ホルモン産生腺腫のトルコ鞍より下方への進展の頻度は20%に留まっている(20 vs 2.8%).これは本研究での下方進展の定義が従来の報告よりも厳密で,トルコ鞍の下方への拡大(バルーニング)のみのものは含まれず,蝶形骨洞内や斜台への腫瘍の進展・浸潤と定義されているためかも知れない.
本稿では,何故成長ホルモン産生腺腫において下方進展が多いのかについては明らかにしていない.推定される機序として,下方進展ではトルコ鞍底や斜台骨への浸潤が前提になることから,細胞外マトリックス蛋白分解酵素(MMP)の過剰発現,特異的免疫細胞調節障害,特異的ケモカイン・プロフィール,染色体不安定性が影響している可能性が指摘されている(文献1,2,6,7).こうした可能性については10年も前から指摘されているが,まだ機序解明のブレークスルーは起きていなさそうである.

執筆者: 

有田和徳