初回手術後残存あるいは再発したクッシング病に対する治療:37報告989例のメタアナリシス

公開日:

2022年8月10日  

Treatment of recurrent and persistent Cushing's disease after first transsphenoidal surgery: lessons learned from an international meta-analysis

Author:

Perez-Vega C  et al.

Affiliation:

Department of Neurologic Surgery, Mayo Clinic, Jacksonville, FL, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:35508745]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2022 Jun
巻数:25(3)
開始ページ:540

【背景】

初回経蝶形骨洞手術後に残存したり,再発したクッシング病に対する最適な治療は何か.本稿はMayoクリニック(FL, USA)脳外科による37報告989例のメタアナリシスである.平均年齢は29.9歳から47.9歳.再治療としては,再度の経蝶形骨洞手術が31報告669例(67.7%),定位放射線治療(SRS,辺縁線量:20~28 Gy)が8報告320例(32.4%)で実施されていた.再手術例のうち5報告は朝の血中コルチゾール値を,他の26報告では24時間尿中遊離コルチゾール値を寛解基準としていた.SRSの8報告では,24時間尿中遊離コルチゾール値を寛解基準としていた.

【結論】

寛解率は,再手術群で59%(95%CI:0.49~0.68),SRS群では74%(95%CI:0.54~0.88)で2群間に有意差はなかった(p=.15).寛解率は,再発に対する再手術群で53%(95%CI:0.32~0.73),術後残存に対する再手術群では41%(95%CI:0.28~0.56)で差は無かった(p=.36).

【評価】

クッシング病の初回経蝶形骨洞手術による寛解率は60~90%と報告によって差が大きいが(文献1),最近のメタアナリシスでは80%(95%CI:77~82)(文献2)と報告されている.本稿はクッシング病の初回経蝶形骨洞手術後の残存=非治癒(persistent disease)や再発に対する再手術とSRSの成績を比較したものである.その結果,寛解率は数値上はSRSの方が高いが,再手術と統計学的に差はなく(74 vs 59%),共に有効な治療手段であることを示している.ただし,再手術での合併症は,髄液漏20.9%,下垂体機能低下19.9%,永続的尿崩症3.5%,術後出血1.5%と稀ではない.SRSでも新規ホルモン分泌障害は30.7%で認められている.
一方,経時的な変化(12~84ヵ月)については,統計学的に有意ではないが,再手術群では徐々に寛解率が低下し,SRS群では徐々に寛解率が上昇する傾向を示している.
術後残存や再発のクッシング病では,初回手術による局所の瘢痕化などのため,残存・再発腺腫の術前画像診断,術中の局在特定は困難になるので(文献3),再手術による治癒率が低下し(文献4),手術合併症率が高くなるのは当然と言える.同様の事はSRSでも当てはまり,腺腫辺縁の正確な決定は困難となる.
こうした初回手術後の残存・再発のクッシング病に対する再治療の困難さを考慮して,ワシントン大学のMaybergらのチームは,手術後6時間毎に血中コルチゾール値を測定し,その値によって非寛解と判断された患者では初回手術から数日以内に再手術を実施するという2段階手術プロトコールを実施している(文献4).この2段階手術による術後寛解率は92.1%と高い.早期手術の利点として,手術後の線維化,瘢痕化が起こる前に再手術することによって微小腺腫や残存腺腫の発見が容易となることが挙げられている.また同一の入院期間で治療が完結するという利点もある.一考すべき治療戦略かも知れない.
一方,最近明らかになったクッシング病の原因遺伝子変異(USP8,USP48,BRAF)が,残存・再発の腺腫に対する薬物療法を含めた治療選択に与える影響については,今後検討すべき課題と思われる(文献6,7).

執筆者: 

有田和徳