頭蓋内胚腫治療後の成長ホルモン補充療法は安全か:73例,14.3年の追跡から

公開日:

2022年9月25日  

最終更新日:

2022年9月26日

Influence of growth hormone therapy on germinoma survivors

Author:

Kinoshita Y  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:35986827]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2022 Aug
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

頭蓋内胚腫(ジャーミノーマ)患者に対する成長ホルモン補充療法(GHT)による腫瘍再発や二次性腫瘍の発生のリスクに関するエビデンスは未だ充分とは言えない.広島大学のKinoshitaらは,1985年以降に治療を行った自験の頭蓋内胚腫の連続78例中,1年以上の経過観察が可能であった73例(年齢中央値15歳,男性61例)を対象に,成長ホルモン補充が胚腫再発や二次性腫瘍の発生に与えるリスクを検討した.追跡期間中央値は14.3年(1.2~32.5).16例(21.9%)がGHTを受けた.GHT群では,神経下垂体に病変を有し,複数の下垂体ホルモン補充を受けている患者が有意に多かった(ともにp<.0001).

【結論】

通常,GHTは,CR導入2年後から開始するように配慮した.胚腫再発の頻度はGHT群で6.3%(1/16),非GHT群で15.8%(9/57)で,二次性腫瘍発生の頻度はGHT群で6.3%(1/16),非GHT群で8.8%(5/57)で,いずれも差はなかった(p=.4226と p>0.9).二次性腫瘍が出現した6例では,そうでない67例と比較して照射線量が高く(中央値47 Gy vs. 24 Gy),経過観察期間が長かった(同24.4年 vs. 13.9年)(p=.0016とp=.0251).カプラン・マイヤー解析では,PFSとOSは,GHT群と非GHT群間で差はなかった.

【評価】

癌生存者(cancer survivor)の成長ホルモン欠損症に対するGHTの安全性については大規模なメタアナリシスやレビューなどが数多く報告されている(文献1,2,3).一方,頭蓋内胚腫(ジャーミノーマ)は比較的稀であり,また欧米ではさらに稀少ということもあり,GHTが胚腫再発や二次性腫瘍の発生に及ぼす影響に関する研究は少ない.本研究は73例という多数の頭蓋内胚腫を中央値14.3年という長期間にわたって経過観察したデータの後方視的解析である.その結果,GHTを受けた患者群と,GHTを受けなかった患者群では,再発や二次性腫瘍の発生率に差はなかった.
著者らのシリーズでは,頭蓋内胚腫患者に対するGHTは,胚腫再発リスクを考慮して,通常CR導入2年後から開始するように配慮している.しかし,幼児期の発症が多い髄芽腫の患者に比べて,胚腫患者では年長者が多く,このため,診断から骨端盤閉鎖までの猶予期間はあまりない(文献3,4).このことは,治療担当者や患者家族にとって大きなジレンマであり,早くGHTを開始して身長を伸ばしてあげたいという気持ちと,腫瘍再発のリスクへの危惧の間で逡巡することになる.本シリーズでも,実際には8例が,2年を経ずに,GHTが開始されている.それにも関わらず,GHTが胚腫再発や二次性腫瘍の発生率を上昇させていないという事実は,治療担当者や家族にとっては大きな福音である.今後,頭蓋内胚腫のCR導入後のGHT開始時期については,より大規模のコホートで前向きに検討されるべきである.

執筆者: 

有田和徳