Knospグレード4は,上方侵入型の4A,下方侵入型の4B,上下侵入型の4ABの3型に分けられる

公開日:

2023年1月19日  

最終更新日:

2023年1月20日

Subclassification of Knosp Grade 4 Pituitary Adenoma: Bringing Insights Into the Significance of Tumor Growth Pathways

Author:

Xiao L  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, The First Affiliated Hospital of Nanchang University, Nanchang, China

⇒ PubMedで読む[PMID:36519865]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2023 Jan
巻数:92(1)
開始ページ:213

【背景】

下垂体腺腫の側方進展の評価方法としてはKnospグレード(KG)が普及している(文献1).その中で,KG4は腫瘍が内頚動脈を取り囲んでおり,根治的な摘出が困難な場合が多い.中国・南昌大学脳外科は,KG4の下垂体腺腫を3つのサブタイプに分類し,局所解剖と臨床的意義を検討した.4Aは内頚動脈の上方から海綿静脈洞(CS)内に侵入し内頚動脈・外転神経を下方に押し下げながら増殖するもの.4Bは内頚動脈の下方からCSに侵入し内頚動脈・外転神経を上外側に押し上げながら増殖するもの.4ABは内頚動脈の上下からCSに侵入し内頚動脈を取り囲みながら増殖し,外転神経は内頚動脈に併走するもの.

【結論】

最近5年間に経験したKG4の下垂体腺腫は129例であった(このうち非機能性腺腫:67%).サブタイプ別の内訳は4A:33.3%,4B:24.8%,4AB:41.9%であった.CS内の腫瘍に対しては,経蝶形骨洞的に先ずトルコ鞍内からCSへの腫瘍進入路を辿って,さらに経上顎洞-経翼状突起的に内頚動脈の前下方あるいは外側の腫瘍摘出を行った.各タイプ別の肉眼的全摘(造影病変なし)の割合は,4A:51.2%,4B:87.5%,4AB:87%で,4Aで有意に低かった(p=.0004).全症例の視機能改善,脳神経症状改善,ホルモン過剰症の寛解の頻度は85.1,83.3,85.7%であった.

【評価】

Knospによる下垂体腺腫の側方進展のグレーディングでは,下垂体腺腫が内頚動脈の海綿静脈洞部分と海綿静脈洞上の部分の外側縁を結んだ線より外側に進展したものはGrade 3であり,腺腫が内頚動脈の海綿静脈洞部分を完全に取り囲んでいるのがGrade 4である(文献1).
既に,Knospとその後継者であるMickoは,Knospグレード3を内頚動脈の上方スペースに進展したGrade 3Aと下方スペースに進展したGrade 3Bのサブタイプに分けており(文献2),3Aは3Bに比較して有意に海綿静脈洞浸潤が少なく,肉眼的全摘出率が高いことを明らかにしている(文献3).
本報告はMickoらの着想をKnospグレード4に利用したものと言える.著者らは海綿静脈洞内の腫瘍はそれぞれのサブタイプにおける海綿静脈洞への侵入路を辿るかたちでのトルコ鞍内からの摘出とともに,経上顎洞-経翼状突起アプローチでの内頚動脈の前下方部分や外側部分の腫瘍も積極的に除去している.この結果,肉眼的全摘率(造影病変なし)の割合は全129症例では75.2%で,従来報告されているKnospグレード4に対する肉眼的全摘率0~53.8%(文献4~7)と比較すれば,かなりの好成績である.
ただし,内頚動脈の上方から海綿静脈洞に侵入するサブタイプ4Aでは,4B,4ABよりも肉眼的全摘率が有意に低かった(51.2% vs 87.5% and 87%).著者らによれば,サブタイプ4Aでは内頚動脈が前下方に圧排されているため,海綿静脈洞前壁との間にスペースがなくなり,海綿静脈洞壁の前方からの開放が困難になることと,腫瘍が後上方に伸びて,動眼神経三角,大脳脚周囲,側頭葉方向に進展することが多いので,取り残しになりやすいという.一方,サブタイプ4B,4ABでは,前下方に進展した腫瘍によって内頚動脈と海綿静脈洞前壁間のスペースが豊富なため,海綿静脈洞前壁の開放が容易であり,外転神経も視認しやすいために,安全に腫瘍摘出が進められる.
Knospグレードのこのサブタイプ分け(4A,4B,4AB)の臨床的意義については,今後多施設コホートで検証されるべきであろう.
一方,本シリーズでは手術による合併症の頻度は,一過性脳神経麻痺7.8%,恒久的脳神経麻痺3.9%,恒久的尿崩症4.7%,汎下垂体機能低下症2.3%,髄液漏1.5%,内頚動脈損傷0.7%であった.問題は,海綿静脈洞内腫瘍の積極的な摘出に伴うこのリスクをどう捉えるかである.同様のサブグループとサイズの症例を対象としたガンマナイフなどの定位放射線治療との比較も必要である.

<コメント>
本稿はKnospグレード4の下垂体腺腫を腫瘍の海綿静脈洞(CS)への侵入の仕方と内頚動脈(IC)との位置関係から3亜型に細分類し,それぞれでの手術アプローチ,切除方法,手術成績を報告した論文である.概要は本サマリーの通りだが,理解が困難な方には,原著にあたられることをお勧めしたい.各亜型の詳細な解説,代表症例が,解説図とともに提示されており,容易に分類の理解が可能である.
本論文には記載されていないが,部分的CS浸潤腫瘍とは異なり,Knosp 4の腫瘍では,一般にCS内の操作中,困難な静脈性出血に遭遇することは殆どないこと,初回手術例では腫瘍は一般に柔らかく,吸引が容易であることが手術上の利点として挙げられる.MRI所見に基づいて,本論文のようにKnosp 4を細分類する事はそれなりに意味はあるが,手術の実際にはなかなか結びつかないかも知れない.大切な事は,論文中でも述べられているが,CS前面の硬膜面を広く露出することである.さらに,IC外側のCS,下方の斜台部ICも外側まで露出することも重要である(そのためには上顎洞後壁上内側,pterygoid processの基部を削り,十分に蝶形骨洞外側まで露出する必要がある.この論文で紹介されている経上顎洞-経翼状突起アプローチである).鞍内の腫瘍をまず切除した上で,CS前面の硬膜をICに注意しつつ外側まで切開し,CS内の脳神経,ICの走行、靭帯を意識しつつ腫瘍を吸引除去し,ICの分枝は引き抜かないように凝固と鋭的切断が必要である.またIC周囲の交感神経もvariationが多く,外転神経との連続性があり,実際の手術ではそれらの同定は必ずしも容易でないため,各種術中モニタリングは必須である.また術前のICの血行動態の評価(必要に応じて閉塞が可能かどうかなど)も欠かせない.
本論文の問題点としては,症例の多くが非機能性腺腫であること(何故ここまで全摘にこだわるのか?),機能性腺腫の治癒判定は最新の基準を用いたと記載されているが詳細が不明であること,全摘率が高すぎること(症例にはKnosp 3Aや3Bの重症のものが多く含まれている可能性がある)が挙げられる.少なくとも4Bとして提示されているFig. 3の症例はKnosp 3Bともとれる.
しかし,CS浸潤は下垂体腺腫の手術成績に最も強く影響する因子であり,この部分に対する安全で効果的な手術が強く望まれている現在,このような論文が数多く出てくることは喜ばしいことである.(森山記念病院脳神経外科 山田正三,石田敦士)

執筆者: 

有田和徳