先端巨大症に対する薬物療法の投与間隔はもっと延ばせる:27研究35報告のシステマティック・レビュー

公開日:

2023年3月27日  

最終更新日:

2023年4月12日

A systematic literature review to evaluate extended dosing intervals in the pharmacological management of acromegaly

Author:

Fleseriu M  et al.

Affiliation:

Pituitary Center at Oregon Health & Science University, Portland, OR, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:36447058]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2023 Feb
巻数:26(1)
開始ページ:9

【背景】

臨床現場では,先端巨大症に対して,標準期間を超えての長期の投与間隔(extended dosing intervals:EDIs)で薬物治療が行われることがある.しかし,標準治療と比較した長期投与間隔の効果,安全性,医療費の差については充分に明らかではない.本研究は,2001年以降に報告された,先端巨大症に対する薬物のEDIsに関する27研究35報告のシステマティック・レビューである.実際に長期投与間隔で使用された薬剤はペグビソマント単独3研究,ランレオチド単独9研究,オクトレオチド単独4研究,ペグビソマント+SRLs(ランレオチドかオクトレオチドの標準間隔投与)11研究であった.

【結論】

患者の多くは,EDIsでの治療開始以前に標準治療によって6ヵ月以上の生化学的なコントロールが得られていた.EDIsでの実際の投与間隔は,SRLsで6~8週間に1回,ペグビソマントで週に1~2回が多かった.
ランレオチド単独の1研究,オクトレオチド単独の1研究,ペグビソマント単独投与の1研究では70%以上の患者でIGF-1の正常化が維持されていた.ランレオチド単独の3研究,ペグビソマントとSRLsの併用の4研究では70%以上の患者でIGF-1の正常化が達成された.EDIsでも安全性プロフィールは標準治療と同等であった.EDIsは患者に好まれた.EDIsでは健康関連QOLは標準治療と同等で医療費は低かった.

【評価】

本邦における添付文書上はSRLsでは4週間毎の筋肉注射(オクトレオチド)あるいは皮下注射(ランレオチド),ペグビソマントでは一日1回の皮下注射が推奨されている.ただし,ランレオチドについては,欧州・米国・いくつかのアジアの国において,4週間毎の皮下注射で良好なコントロールが得られている症例では,6~8週毎の皮下注射が許容されている.
一方,添付文書上の推奨はないが,SRLsを6週おきに投与したり,ペグビソマントを週に2回だけ投与したりすることが臨床現場で行われているのは事実である.本稿は,既報の27研究を基に,EDIsによる先端巨大症に対する薬物療法の効果,安全性,医療費を標準薬物治療と比較したものである.ただし,報告毎に,先端巨大症コントロールの基準,先行治療の期間,長期投与の間隔,追跡期間などが異なっている,あるいは記載されていないため,メタアナリシスは出来ず,記述的レビューに留まっている.
そのような制限を前提に,本稿を要約すると,既に標準薬物治療によって疾病コントロールが得られている症例では,EDIsによって引き続き7割以上の症例でIGF-1の正常状態が維持されること,コントロールが得られていない症例でもEDIsによる薬物療法によって,7割以上の症例でIGF-1の正常化が得られることが明らかになった(文献1,2,3).
また,SRLsに加えて,新たにEDIsでのペグビソマントの併用が行われた研究の大部分で,疾病コントロールが得られる症例の割合は増加していた(文献4,5,6).
著者らは,本研究の結果を受けて,特に標準薬物療法で先端巨大症の良好なコントロールが既に得られている症例では,薬物の投与間隔延長は考慮されて良いと述べている.
臨床現場では既に実行されている工夫を追認した,そうでしょうという感のある研究結果である.効果は同じで,患者負担や医療コストの低減につながるのであれば,積極的に導入したい改良である.
本研究では,パシレオチド(4週間毎注射推奨)や経口オクトレオチド(1日2回内服推奨)(未発売,文献7)のEDIsについては報告がないため,言及されてはいないが,これらの薬剤も標準投与期間での疾病コントロール次第ではEDIsの対象に上がってくると思われる.
本稿が執筆されたのは,COVID-19パンデミックの最中であり,医療資源の枯渇,医薬品の配送遅滞等が危惧されていた時期であり,著者らは考察の中で,そうした危惧がある時期にこそこのような議論が必要であると述べている.しかし,そういう状況下でなくても,医療提供者には常に,患者負担の低減と医療コストの削減に向けた努力が求められているように思う.

<コメント>
本研究は,先端巨大症に対し,標準投与間隔を超えた投与間隔(extended dosing intervals:EDIs)での薬物治療がその効果を維持しながら,患者への負担,医療費の軽減につながっているかを検討したものである.予想された結果として,EDIsは患者に好まれ,医療費は軽減された.また臨床的な効果,安全性は標準投与と同等であった.以上よりGH,GF-1が良好にコントロールできるのであれば,EDIsを検討してもよいと考えられる.しかし本論文の対象としたほとんどの研究は,観察期間が1年以内であり,長期のものはFranckらの研究の5年間のみである(文献6).また個々の研究の対象患者数も少ない.今後,より長期間EDIsでの薬物治療を施行された患者のアドヒアランス,合併症の進行,QOL,予後への影響の評価が必要である.(東京女子医科大学内分泌内科学 大月道夫)

執筆者: 

有田和徳