常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)患者における未破裂脳動脈瘤の増大,新規動脈瘤発生,SAH発生のリスクは?

公開日:

2026年11月6日  

Development of a prediction model for aneurysmal events to guide imaging surveillance in autosomal dominant polycystic kidney disease

Author:

Miyamoto S  et al.

Affiliation:

Department of Endovascular Neurosurgery, Toranomon Hospital, Minato-ku, Tokyo, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:42826403]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Oct
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

わが国における常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の有病率は,人口10万人当たり42.8人と推定されている(文献1).ADPKD患者では,頭蓋内動脈瘤の有病率は8-13%と高いが(文献2),動脈瘤増大や破裂リスクについては十分明らかになっていない(文献3,4).虎ノ門病院のMiyamotoらはPKD集積2施設で,2003-2024年に脳画像検査を受けた成人ADPKD患者1,267例のうち,未治療脳動脈瘤があり,追跡画像が得られた132例を解析対象として,動脈瘤の増大,形態変化,新規形成,破裂(SAH)の複合アウトカムの発生リスクを解析した.対象患者の年齢中央値は59歳,動脈瘤最大径中央値は3.1 mm.

【結論】

37例(28%)に複合評価項目が発生した.多変量解析では,多発性動脈瘤のみが有意な独立予測因子であった(OR 5.56,p<0.001).高血圧(OR 3.60,p=0.063)とADPKDの家族歴(OR 2.24,p=0.131)は有意ではなかったが,予測モデルに採用した.予測スコアは高血圧1点,ADPKD家族歴1点,多発性動脈瘤2点の計4点とし,0点を低リスク,1-2点を中リスク,3-4点を高リスクとした.モデルのAUCは0.724,ブートストラップ補正後は0.726であった.導出集団における5年間の複合イベント累積発生率は低リスク群0%,中リスク群18%,高リスク群67%であった.検証集団ではそれぞれ0%,12%,46%であった.

【評価】

一般人口における小型未破裂脳動脈瘤の自然歴を検討したSUAVe研究でも,高血圧や多発性動脈瘤が破裂や増大と相関していることが指摘されており,ADPKD患者を対象とした本研究の結果と整合する(文献5).また,ADPKDでは遺伝子変異型と動脈瘤形成との関連が報告されており,本研究で家族歴を予測モデルに含めた点は理解可能である(文献6).本予測モデルは動脈瘤を合併したADPKD患者の画像追跡対象の選択や追跡間隔の決定に有用と思われる.
ただし,本研究における主要評価項目はSAHではなく,増大,形態変化,新生を含む複合イベントであり,破裂リスクを直接予測したものではないことに注意が必要である.また,本論文のテキスト中では追跡期間ならびにSAHを含めた複合イベントの内訳が明らかにされていないので各評価項目毎のリスクは推定できない.
今後,多施設研究で,より多数例の長期追跡によって,動脈瘤の増大・形態変化・新生・破裂といった各イベント毎の発生率と予測因子が明らかになることを期待したい.
本稿はADPKD患者に発見された動脈瘤のその後の変化に関する予測モデルを提示している.しかし,ADPKD患者全体における脳動脈瘤合併のリスク因子,脳動脈瘤スクリーニングの適応,脳動脈瘤が無かった患者におけるその後のスクリーニング検査のあり方についても今後の検討課題と思われる.

執筆者: 

有田和徳