COVID‑19パンデミック下における下垂体手術をどうすべきか:Pituitary Societyのガイダンス

公開日:

2020年6月30日  

最終更新日:

2020年6月30日

Pituitary Society Guidance: Pituitary Disease Management and Patient Care Recommendations During the COVID-19 Pandemic-An International Perspective

Author:

Fleseriu M  et al.

Affiliation:

Pituitary Center, Oregon Health & Science University, Portland, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32556793]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2020 Aug
巻数:23(4)
開始ページ:327

【背景】

経鼻下垂体手術は,鼻腔,蝶形骨洞を経由するため,気道ウィルスによる医療者の感染の可能性が危惧される.本稿はCOVID‑19パンデミック下における下垂体疾患の治療のあり方に関するPituitary Society生涯教育委員会の手による指針である.本文中では,個々の下垂体疾患毎に,実践的対応の指針が示されているが,ここでは手術療法の項から抜粋して要約を紹介する.なお,これらはCOVID‑19パンデミック下における下垂体手術に関する充分なデータがない現段階での仮の指針であり,散文的であるが,現段階で唯一の国際的なガイダンスである.

【結論】

①流行と医療資源の状況次第では,予定手術患者数のコントロールが必要で,パンデミックでは,下垂体卒中例に対する緊急手術のみを行う.
②手術患者全例に,COVID-19スクリーニング検査を行う.流行状況次第では術前患者の2週間隔離,ペア鼻咽頭ぬぐい液検査,ペア血清検査,胸写あるいは胸部CTなど徹底した予防・管理を行う.
③感染者では,症状消失,スワブ検査陰性まで予定手術を延期し,下垂体卒中や悪性腫瘍疑い例のみで緊急手術を行う.
④感染者では鼻腔操作を避けるために開頭手術の選択,経蝶形骨洞手術ではドリルに代えてロンジュールやノミの使用,太い吸引管の使用を考慮する.

【評価】

COVID-19潜伏期間に予定手術(下垂体ではないが)を受けた34人中44.1%がICUへ入室し,20.5%が死亡したという武漢からの報告があるという(文献1).下垂体手術は挿管全麻下(挿管・抜管が必要)で行われ,鼻腔粘膜操作,蝶形骨洞内操作,ドリリング(汚染組織の空気拡散)を伴うため,手術室チームに重大な感染リスクがあると危惧されている(文献2).後に当事者たちによって否定されたが,2020年1月,武漢においてCOVID‑19潜伏期患者に対する経蝶形骨洞手術で,手術に関係した14人の医療者が感染したという噂がひろまり,世界の多くの下垂体センターで緊急以外の経蝶形骨洞手術が中止となった(文献3,4).
一方.COVID-19パンデミック状況で,標準的なリスク低減戦略下に行った9例の下垂体手術では,手術後患者や医療スタッフに感染は起こらなかったという報告もある(文献5).現段階では経蝶形骨洞手術によって,医療者の間にCOVID-19感染が拡がったという事実は報告されていないが,そのリスクは高く,本ガイダンスで示された指針を参考に充分の予防・管理を行うべきである.陰圧手術室の使用,完全個人防護服(PPE)の着用,ゴーグルの使用は前提である(文献6).特に感染例に対する手術ではFFP3クラスのレスピレーターマスクも必要である.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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