中脳周囲くも膜下出血の原因としての脳底動脈穿通枝の破裂

公開日:

2026年4月9日  

Basilar artery perforator rupture as the cause of perimesencephalic subarachnoid hemorrhage

Author:

Raz E  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, NYU Langone Health and Bellevue Hospital, New York, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41576368]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Jan
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

中脳周囲くも膜下出血(pmSAH)は全ての非外傷性くも膜下出血の5-10%を占め(文献1-3),原因としては従来,静脈性出血が想定されてきた(文献4-8).米ニューヨーク大学ランゴーン医療センター脳外科は,自験のpmSAH症例を対象に脳底動脈穿通枝の関与について検討した.
2023年からの2年間で経験した非外傷性くも膜下出血患者152例のうち,Rinkelの基準(文献1)に基づいてpmSAHと診断された22例を対象として,出血源検索のためのDSAと同時にコーンビームCT(CBCT)を用いた高解像度3D血管造影を行った.

【結論】

検査結果を脳血管画像診断の経験が豊富なエキスパート2名が読影し,画像品質が悪い9例を除外し,高品質の13例を解析の対象とした.13例中8例(61%)では,破裂部位を示唆する脳底動脈穿通枝の局所的突出が認められた.そのサイズは全て1 mm未満であった(0.4-0.8 mm).
この8例を含むpmSAHの22例全例で,再出血や血管れん縮はなく,良好な神経学的な回復を示した.
追跡DSA-CBCTが施行された6例全てでこれらの脳底動脈穿通枝の異状は消失していた.
pmSAHでは,他に原因が発見されない場合,静脈性出血と判断する前に,このような動脈性の原因を疑うべきである.

【評価】

pmSAHの多くは,再破裂や血管れん縮を引き起こすことは稀で,大部分は良性の経過をとることが知られている.その原因としては従来,静脈性出血が想定されてきた.この静脈起源説によれば,pmSAH症例ではRosenthal脳底静脈がGalen静脈ではなく硬膜静脈洞へ流入するために破綻しやすいと想定されてきた(文献4-8).
本稿の著者らが,pmSAHに対しDSA-CBCTを用いて脳底動脈穿通枝の構造を詳細に解析したところ,約6割の患者で穿通枝上に動脈瘤様拡張が認められた.従来想定されてきた静脈性出血説を否定するものとなっている.脳底動脈穿通枝の動脈瘤様拡張の病理学的本態は明らかではないが,著者らは,穿通枝の部分的引き抜きまたは解離によって生じた仮性動脈瘤の可能性あるいは真性の動脈瘤の可能性の両者を考慮している.
興味深いのは出血後3ヵ月目に追跡DSA-CBCTが行われた6例全例でこの動脈瘤様拡張が消失していたことである.
したがって現段階では,pmSAHの原因が脳底動脈穿通枝の動脈瘤様拡張であったとしても,pmSAHは予後良好な疾患であるという従来の臨床的な判断を変更する必要性はなさそうである.
いずれにしても,なぜ脳底動脈穿通枝のみに動脈瘤様拡張が生じるのか興味深い.近年,Photon counting detector CT(PCDCT)などの微細な頭蓋内血管構造の描出が可能なCTが臨床現場に導入されつつあるので,今後頭蓋内穿通動脈の高精細画像による評価が可能になるであろう(文献9,10).より多くのpmSAH症例を対象とした研究で,本稿の主張が検証されることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳

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