COVID-19アウトブレイク中の急性期脳主幹動脈閉塞患者の特徴:ニューヨーク市

公開日:

2020年9月16日  

最終更新日:

2020年9月28日

Emergent Large Vessel Occlusion Stroke During New York City's COVID-19 Outbreak: Clinical Characteristics and Paraclinical Findings

Author:

Majidi S  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32755349]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2020 Sep
巻数:51(9)
開始ページ:2656

【背景】

これまでの速報によれば,COVID-19感染患者では脳梗塞患者が多い(文献1).本報告はニューヨーク市内のマウントサイナイ・ヘルスシステム傘下の8病院で,COVID-19パンデミック期間中の2020年3月21日~4月12日までの3週間で治療した急性期脳主幹動脈閉塞(ELVO)症例をパンデミック前と比較検討したものである.同病院群では,この期間に45例のELVO患者を受け入れた.患者年齢平均値は66±17(SD)歳.

【結論】

ELVO45症例のうち22例(53%)がCOVID-19陽性であった.陽性患者群は陰性患者群より若年で(59±13 vs. 74±17,OR:0.94,p=0.004),男性が多く(75 vs. 43%,OR:3.99,p=0.032),白人が少なく(8% vs. 38%,OR:0.15,p=0.027),心不全の既往が少なかった(0 vs. 19%,p=0.025).
この観察期間3週間に同病院群で受け入れたELVO患者は,その前15ヶ月間(2019年1月~2020年3月)に比較して約2倍に増えていた(45人/3週間 vs. 平均21人/3週間,推定0.78,p≦0.0001).

【評価】

このNY市における後方視的観察研究は,COVID-19パンデミック下におけるELVO患者は通常の約2倍に増えており,ELVO患者におけるCOVID-19陽性率(53%)は,その時期の一般人口における陽性率19.9%に比較して有意に高頻度であることを明らかにした.パンデミック下におけるELVO患者は,相対的に若く(50歳以下が20%),男性に多く(75%),白人が少なく(8%),心不全の既往が少なかった(0%).
COVID-19感染者に男性が多く(54~62%),予後不良であることは既に報告されているが(文献2,3),ELVO患者では男性の割合がさらに高くなっていることは注目される.
COVID-19感染者に血栓塞栓症が多い理由は十分に解明されてはいないが,高凝固状態,心臓への直接的な障害,ACE2受容体を通したウィルスの血管内皮への直接的な侵入などが疑われている(文献4).またウィルスの中枢神経への侵入が誘因となっている可能性も示唆されている.
本論文で示されているもう一点の重要な疫学的事実は,このグループ傘下8病院のELVO患者はCOVID-19パンデミック下で増加したにもかかわらず,この病院グループ傘下の包括脳卒中センターを受診した脳卒中の患者はこの期間で減少していたという事(3月30人,4月34人,それ以前の月平均43人)である.このことは,この時期に,脳梗塞自動解析システムRAPIDで画像解析を行った全米の脳梗塞患者数が減少していたという事実と一致している(文献5).
すなわち,COVID-19パンデミック下ではELVO患者が増えているにもかかわらず,脳卒中患者が受診行動を抑制している可能性,搬送システムの混乱や機能低下が脳卒中患者のトリアージや受け入れを阻害していた可能性,救急現場がCOVID-19患者対応で手一杯であった可能性などを推測することが出来る.
何れにしても,パンデミック下で受診したELVO患者が心血管系に既往のない若年者であれば,COVID-19陽性患者である可能性を考えながら初療に当たる必要性を示唆している.
本稿は今後日本にも訪れるかもしれないCOVID-19パンデミック下における脳卒中医療体制を構築する上で重要な情報を提供している.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

岐浦禎展