80歳以上の超高齢者における膠芽腫の社会背景と予後因子:米国癌データベース(NCD)の578例

公開日:

2025年3月28日  

最終更新日:

2025年3月29日

Clinical Predictors of Overall Survival in Very Elderly Patients With Glioblastoma: A National Cancer Database Multivariable Analysis

Author:

Gendreau J  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, Maryland, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:38940573]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2025 Feb
巻数:96(2)
開始ページ:373

【背景】

人口の高齢化とともに,80歳以上の超高齢者の悪性脳腫瘍は稀ではなくなった.本研究は,米国癌データベース(NCD)から,1989-2016年に登録された膠芽腫患者のうち80歳以上の超高齢者578例を抽出し,高齢者(65-79歳)2,836例と比較して患者背景や予後因子を解析したものである.
高齢者と比べて超高齢者ではメディケア受給者が多く(90% vs 83%),私的医療保険加入者が少なく(9% vs 15%),治療のための移動距離が短く(中央値12.8マイル vs 17.3マイル),複数の腫瘍を有していた(26% vs 20%)(すべてp <.001).

【結論】

患者背景因子やMGMTのメチル化など腫瘍の特異性調整後の比較では,高齢者と比して超高齢者は肉眼的全摘出(35% vs 40%),放射線治療(57% vs 77%),化学療法(47% vs 77%)を受けたものは少なかった(p <.041,p <.001,p <.001).多変量解析では,超高齢者においても肉眼的全摘出,放射線治療,化学療法の実施は,それぞれ良好なOSの独立した予測因子であった(ハザード比はそれぞれ0.634,0.633,0.435,すべてp <.001).
超高齢者でも身体や経済などの条件が許せば,肉眼的全摘出,放射線治療,化学療法という積極的な治療を実施することによってOSを延長し得る.

【評価】

Brain Tumor Registry of Japan(2005-2008)によれば,本研究で定義されている高齢者(65-79歳)と超高齢者(80歳以上)の膠芽腫患者全体に占める割合は40%と5%である(文献1).その後約20年が経過しているので,両者の割合はさらに高くなっているはずである.今や膠芽腫は高齢者と超高齢者に多い疾患であると言っても過言ではない(文献2).本研究は,米国癌データベース(NCD)を対象に,米国における超高齢膠芽腫患者の背景因子や予後因子を解析したものである.社会背景では,高齢者と比較して超高齢者はメディケア受給者が多く,私的医療保険加入者が少なく,治療のための移動距離が短かかった.これらは超高齢者の経済的状況や身体的状況を考慮すれば当然と言えるであろう.
臨床像では,超高齢者では複数の腫瘍を有する患者の割合が多かった(26% vs 20%,p <.001).これは何を意味しているのであろうか.1ヵ所の腫瘍が診断の遅れによって多焦点性(multifocal)に広がったのか,もともと多中心性(multicentric)に発生したのか(文献3,4),興味深い.
さらに,実際に実施された治療の内容としては,従来の報告と同様,高齢者(65-79歳)と比較して肉眼的全摘出,放射線治療,化学療法を受けた割合が少ないことを明らかにしている(文献5,6,7).これは年齢が上昇するに従ってフレイルや臓器機能障害が進むことにより,積極的な治療対象から除外されがちなことを反映しているものと思われる(文献7,8,9).
一方超高齢者の中でも,肉眼的全摘出,放射線治療,化学療法の実施は良好なOSの独立予測因子であった.身体活動性が高く各種臓器機能が保たれている患者では,こうした標準治療の適用となるであろう.同時に超高齢者では,手術侵襲をできるだけ低減したり,寡分割放射線照射をとり入れるなどの工夫も必要であろう(文献10,11,12).

執筆者: 

有田和徳

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