公開日:
2026年3月10日Medical Management and Revascularization for Asymptomatic Carotid Stenosis
Author:
Brott G et al.Affiliation:
Department of Neurology, Mayo Clinic, Jacksonville, FL, USA| ジャーナル名: | N Engl J Med. |
|---|---|
| 発行年月: | 2026 Jan |
| 巻数: | 394(3) |
| 開始ページ: | 219 |
【背景】
無症候性の高度内頚動脈狭窄に対する血行再建術の適応は定まっておらず(文献1),症候性患者に限定している国もあるが,米国では血行再建術が行われている患者の7-8割が無症候性とのことである(文献2).
2014年から北米などの5ヵ国155施設で実施された本CREST-2試験は,高度(70%以上)の無症候性頚動脈狭窄患者を対象とした2個のRCTで構成されている.
このうちステント試験では,内科的治療(集中的内科的管理)群629例と,内科的治療+頚動脈ステント留置術(ステント)群616例を比較した.
内膜剥離術試験では,内科的治療群623例と,内科的治療+頚動脈内膜剥離術(内膜剥離術)群617例を比較した.
【結論】
主要評価項目は,無作為化から44日以内(周術期)のすべての脳卒中または死亡,あるいはその後4年までの追跡期間中(術後期)の同側虚血性脳卒中.
ステント試験における4年間の主要評価項目発生率は,内科治療群で6.0%,ステント群で2.8%であり,絶対差は有意であった(p =.02).
内膜剥離術試験における4年間の主要評価項目発生率は,内科治療群で5.3%,内膜剥離術群で3.7%であり,絶対差は有意ではなかった(p =.24).
無作為化後44日以内の周術期において,ステント試験の内科治療群では脳卒中または死亡を認めなかったが,ステント群では脳卒中7例および死亡1例が発生した.内膜剥離術試験の内科治療群では脳卒中3例,内膜剥離術群では脳卒中9例が発生した.
【評価】
本CREST-2試験で対象となった高度内頚動脈狭窄とは,超音波検査で最大収縮期血流速度230 cm/秒以上を示す70%以上(明記されていないが,おそらくNASCETで)の狭窄を有し,以下のいずれかを満たすことを要件とした:拡張末期血流速度100 cm/秒以上か内頚動脈/総頚動脈最大収縮期血流速度比4.0以上.また,本研究でいう集中的内科的管理とは,血圧,LDLコレステロール,高血糖およびHbA1c,生活習慣因子(喫煙,肥満,身体活動不足)の適切な管理を指している.
確かに,本試験の対象になったような高度狭窄を有しながら無症状の患者は稀ではない.いわゆる生活習慣病のコントロールだけで良いのだろうかと思いつつ少しハラハラしながら経過観察しているのが,臨床現場の実情ではないだろうか.
本研究の結果,内科治療群と比較してステント群では主要複合評価項目(周術期脳卒中または死亡,あるいは術後4年以内の同側脳卒中)のリスクが有意に低下したが(2.8% vs 6.0%),内膜剥離群では内科治療群と比較して有意差は認めなかった(3.7% vs 5.3%).血行再建術(ステントあるいは内膜剥離術)群におけるこれらの低い術後脳卒中発生率は従来の報告と同様であった(文献3-6).
一方,副次評価で最も頻度が高い「有害事象」は,割り当て治療ではない血行再建術の実施で,ステント試験では内科治療群18.8%,ステント群4.7%,内膜剥離術試験では内科治療群21.0%,内膜剥離術群7.1%であった.すなわち内科治療のみでフォローしていると,約20%が新たな罹患内頚動脈領域の症状出現,狭窄の進行などにより,4年以内に血行再建へ移行していることになる.なお,割り当て後4年間の死亡は,どの群も8-11%で差はなかった.
今回発表されたCREST-2試験の結果を受けて,今後日本でも無症候性の高度内頚動脈狭窄に対するステント設置が増加する可能性がある.
しかし,本試験においてステント設置を行った術者は予め熟練度が評価されたエキスパート達であったことには注目すべきで,初心者が安易に手を出す病態では無いことを示唆しており,注意が必要である.
また,主要評価項目発生率の差が3.2%ということは,NNT(治療必要数)は31である.すなわちステント治療による利益が得られるのは31人に1人ということになり,現段階では決してパフォーマンスの高い治療とは言い難い.
また,このCREST-2試験の追跡期間中央値はステント試験で3.6年,内膜剥離試験で4.0年となっているが,対象患者の年齢が約70歳ということを考慮すれば,平均余命は15年くらいあるわけで,今後,内科治療群とステント治療群の脳卒中罹患率の差が開いていくのか狭まっていくのかは是非知りたいところである.この課題に対する解答は,CREST-2対象患者の追跡期間を最大10年間延長するC2LOE研究が現在進行中であるので(文献7),やがて明らかにされると思われる.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Vikatmaa P, et al. Variation in clinical practice in carotid surgery in nine countries 2005-2010: lessons from VASCUNET and recommendations for the future of national clinical audit. Eur J Vasc Endovasc Surg 44:11-7, 2012
- 2) Otite FO, et al. Trends in the utilization of different carotid revascularization modalities in the United States over a 17-year period. Neurology 105(8):e214104, 2025
- 3) Reiff T, et al. Carotid endarterectomy or stenting or best medical treatment alone for moderate-to-severe asymptomatic carotid artery stenosis: 5-year results of a multicentre, randomised controlled trial. Lancet Neurol 21:877-88, 2022
- 4) Brott TG, et al. Stenting versus endarterectomy for treatment of carotid-artery stenosis. N Engl J Med 363:11-23, 2010
- 5) Halliday A, et al. Second asymptomatic carotid surgery trial (ACST-2): a randomised comparison of carotid artery stenting versus carotid endarterectomy. Lancet 398:1065-73, 2021
- 6) Brott TG, et al. Long-term results of stenting versus endarterectomy for carotid-artery stenosis. N Engl J Med 374:1021-31, 2016
- 7) Stojadinovic E, et al. Long-Term Observational Extension Study of an International Stroke Prevention Clinical Trial: Methods and Opportunities. Cerebrovasc Dis. 18:1-7, 2025
参考サマリー
- 1) 頚動脈ステントの周術期合併症の頻度は低い:CREST-2レジストリー(C2R)
- 2) ポストCREST時代におけるCEAとCASの米国での動向
- 3) 症候性の軽度の内頚動脈狭窄に対するCEAは有用か:MUSIC研究
- 4) 頚部内頚動脈狭窄に対するステント留置後の再狭窄のリスク因子は何か:バッファロー大学の12年間632例の検討
- 5) 非高度狭窄(NASCET<70%)でもMRIにおける複雑性頚動脈プラーク所見があれば脳梗塞再発のリスクは高い:CAPIAS試験
- 6) NASCET狭窄率70~99%の高度で無症候性内頚動脈起始部狭窄はどのくらい危ないのか:手術なしでの3,737例の追跡
- 7) 臨床現場でのCASとCEAの比較:米国の手術症例前向き登録データベース(NSQIP)の84,191例から
- 8) 頸動脈ステント後の中等度以上再狭窄の頻度はCEAより高いが,脳梗塞再発リスクは高まらない:ICSS長期フォローより
- 9) 内頚動脈狭窄症への血流再建手術が認知機能とデフォルトモードネットワークに及ぼす影響:神戸大学の27例
- 10) 内頚動脈狭窄症の患者における視機能低下の回復はCEAとCASどちらが有利か