公開日:
2026年5月25日最終更新日:
2026年5月26日Microsurgical management of tentorial dural arteriovenous fistula: an analysis from the Consortium for Dural Arteriovenous Fistula Outcomes Research (CONDOR)
Author:
Hallak H et al.Affiliation:
Department of Neurological Surgery, Washington University in St. Louis, Missouri, USA| ジャーナル名: | J Neurosurg. |
|---|---|
| 発行年月: | 2026 Apr |
| 巻数: | Online ahead of print. |
| 開始ページ: |
【背景】
小脳天幕部の硬膜動静脈瘻(dAVF)は頭蓋内dAVF全体に占める割合は低いが,静脈側副路が乏しいため,95%は出血か皮質静脈逆流による神経症状を呈する(文献1,2).このため,その多くは緊急手術の対象とされる.近年,dAVFの多くは血管内治療(塞栓術)により根治が可能であるが,小脳天幕部のdAVFはその特有な解剖学的な背景のため,他部位の頭蓋内dAVFと比べて血管内治療が困難で,顕微鏡手術を必要とすることが多い(文献3).
本稿はdAVF国際共同研究(CONDOR)に登録された161例の小脳天幕部dAVFのうち,手術(動脈化静脈の起始部と関連静脈洞の離断)が施行された44例(27%)の後方視的解析である.
【結論】
52%は塞栓術不成功後の救済治療として手術が施行された.64%は出血発症で,27%は非出血性の神経脱落症状で発症していた.診断から手術までの期間中央値は15日(3-80)であった.手術アプローチは瘻孔部位によって使い分けられたが,後S状静脈洞アプローチが最多の44%であり,次いで正中後頭下アプローチ24%,後頭アプローチ15%が続いた.
手術成功は90%で達成された.感染や術後脳内出血などの周術期合併症は11%に認められたが,永続的神経障害は2%のみであった.
平均3年間の追跡期間中,2例(5%)で皮質静脈逆流の再出現を伴う瘻孔再発を認め,1例(2%)で新たな非出血性神経脱落症状を認めた.
【評価】
dAVF国際共同研究(CONDOR)に1990年以降に登録された全頭蓋内dAVF 1,360例のうち161例(11.8%)が小脳天幕部dAVFであった.本研究は,161例の小脳天幕部dAVFのうち手術が施行された44例(27%)の後方視的解析である.この44例の瘻孔の部位は,Lawtonらの分類によれば(文献1),テント静脈洞部が最も多く38%,続いて上錐体静脈洞部24%,直静脈洞部21%,Galen静脈部7%,静脈洞交会部7%,小脳天幕切痕部2%であった.
一般に小脳天幕部は静脈側副路が乏しく,この部位のdAVFは皮質静脈やくも膜下静脈への逆行性流出,静脈瘤形成などを来しやすく,結果として,他部位のdAVFと比較して出血リスクが高い(文献12,4,5).実際,本研究対象の64%が出血発症であり,他部位のdAVFにおける累積24%と比較して著しく高率であった(文献6,7).また,非出血性神経脱落症状27%も他部位のdAVFの16%を上回っていた(文献6,7).本研究の対象となった44例のうち,23例(52%)は塞栓術不成功後の救済治療としての手術であった.血管内治療失敗の原因としては,主要な流入動脈がテント動脈(tentorial artery)であったこと,流入動脈と流出静脈の合流部であるfistulous pouchを塞栓物質が完全に充填できなかったことが挙げられている.
一方,本研究シリーズにおける小脳天幕部dAVFに対する手術(動脈化静脈の起始部と関連静脈洞の離断)の成功率は90%と高く,既報と同様であった(文献1,8,9).手術後の神経学的合併症率は2%のみであった.
今後,流入動脈,関連静脈洞,流出静脈などの因子の総合的な評価に基づいて,どのような小脳天幕部dAVFであれば血管内治療ではなく手術が治療の第1選択になるのか,明らかになることを期待したい.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Lawton MT, et al. Tentorial dural arteriovenous fistulae: operative strategies and microsurgical results for six types. Neurosurgery. 62(3 Suppl 1):110, 2008
- 2) Lewis AI, et al. Management of tentorial dural arteriovenous malformations: transarterial embolization combined with stereotactic radiation or surgery. J Neurosurg. 81(6):851-859, 1994
- 3) Borden JA, et al. A proposed classification for spinal and cranial dural arteriovenous fistulous malformations and implications for treatment. J Neurosurg. 82(2):166-179, 1995
- 4) Goto K, et al. Combining endovascular and neurosurgical treatments of highrisk dural arteriovenous fistulas in the lateral sinus and the confluence of the sinuses. J Neurosurg. 90(2):289-299, 1999
- 5) Collice M, et al. Surgical treatment of intracranial dural arteriovenous fistulae: role of venous drainage. Neurosurgery. 47(1):56-67, 2000
- 6) Guniganti R, et al. Consortium for Dural Arteriovenous Fistula Outcomes Research (CONDOR): rationale, design, and initial characterization of patient cohort. J Neurosurg. 136(4):951-961, 2022
- 7) Koch MJ, et al. Outcome following hemorrhage from cranial dural arteriovenous fistulae: analysis of the multicenter international CONDOR registry. Stroke. 52(10):e, 2021
- 8) Hatano T, et al. Surgical treatment of tentorial dural arteriovenous fistulae located around the tentorial incisura. Neurosurg Rev. 36(3):429-435, 2013
- 9) Gross BA, et al. Surgical treatment of high grade dural arteriovenous fistulae. J Clin Neurosci. 20(11):1527-1532, 2013
参考サマリー
- 1) 治療で一旦閉塞した硬膜動静脈瘻再発のリスクとリスク因子:北京市首都医科大学の510例
- 2) 篩板部DAVFに対する血管内治療は動脈経由より静脈経由が成功率が高い:中国浙江医科大学第二医院の26例
- 3) 硬膜動静脈瘻に対するガンマナイフ治療の長期成績:Mayoクリニックの222例
- 4) 硬膜動静脈瘻に脳動脈瘤は合併しやすいのか;CONDOR国際研究1,043例から
- 5) くも膜下出血を呈した頭蓋頚椎移行部動静脈瘻(CCJ-AVF)に対する治療はいつ行うのが良いのか:日本国内51例の解析
- 6) 横断性脊髄症を示す頭蓋頚椎移行部動静脈瘻:日本の多施設共同研究における27例
- 7) 頭蓋頚椎移行部動静脈瘻に対する顕微鏡下流出静脈遮断術は安全で有効:米国13施設の前向き登録研究
- 8) 頭蓋頸椎移行部動静脈瘻に対する治療は脳外科手術と血管内治療のどちらが良いか:日本脊髄外科学会による97例の検討