硬膜動静脈瘻に脳動脈瘤は合併しやすいのか;CONDOR国際研究1,043例から

公開日:

2022年1月25日  

最終更新日:

2022年1月24日

Assessing the rate, natural history, and treatment trends of intracranial aneurysms in patients with intracranial dural arteriovenous fistulas: a Consortium for Dural Arteriovenous Fistula Outcomes Research (CONDOR) investigation

Author:

Abecassis IJ  et al.

Affiliation:

Departments of Neurological Surgery, University of Washington, Seattle, WA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:34507300]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2021 Sep
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

硬膜動静脈瘻(dAVF)の患者では合併する脳動脈瘤の頻度が13~21%と高いことが報告されているが(文献1,2),大規模な患者集団を対象にした研究はない.本研究はdAVF国際共同研究(CONDOR)に参加する北米,欧州,アジアなどの12のセンターに登録された1,043例(平均約60歳)のdAVFを解析したものである.65例(6.2%)は頭蓋内動脈瘤(96個)を伴っており(dAVF+群),978例(93.8%)は頭蓋内動脈瘤を伴っていなかった(dAVFのみ群).dAVF+群のうち10例(全症例の0.9%)は血流関連動脈瘤12個(12.5%)を伴っており,このうち6例(50%)は硬膜内に存在した.

【結論】

55例(全体の5.3%)は血流非関連動脈瘤84個を伴っており,この頻度は一般人口(2~5%)と変わりなかった.
dAVF+群のうち16例(24.6%)は動脈瘤の破裂が受診の理由であった.1例(1.5%)は経過観察中に破裂した.
dAVF+群はdAVFのみ群に比較して,dAVFは円蓋部-傍矢状洞部に多く,外頸動脈系からの血液供給が少なく,軟膜動脈からの血液供給が多かった.2群間で皮質静脈流出の頻度やBordenタイプの分布に差はなかった.動脈瘤の約半数は血管内治療(36.5%)か顕微鏡下治療(15.6%)を受けた.dAVF治療の有無と関係無く,保存的に管理された動脈瘤43個のうち6個が自然に消退した.

【評価】

従来,硬膜動静脈瘻(dAVF)の患者では合併する動脈瘤の頻度が13~21%と高いことが報告されている(文献1,2).しかし本報告は,従来の報告と異なり,dAVFの患者におけるdAVFの血流と関係のない通常の動脈瘤の頻度は5.3%で,一般人口における動脈瘤保有率と大差がないことを明らかにした点でユニークである.一方,dAVFの血流に関連した脳動脈瘤はdAVF+群の12例,全体の約1%と稀であった.これはAVMに動脈瘤が合併する頻度は約20%で,そのうち70%がAVM血流関連動脈瘤であることと著明な対照を示している(文献3).
また,本シリーズではdAVF+群65例のうち16例(全症例の1.53%,dAVF+群の17%)が動脈瘤の破裂で発症していた.これも動脈瘤を合併するAVMでは65%が動脈瘤の破裂で発症すると報告されていることと好対照である.
こうした記載を読むと,dAVFに伴う動脈瘤の頻度は一般人口並みかわずかに多いくらいで,AVMに伴うそれに比較すればかなり少なく,また破裂のリスクも少なそうだと理解出来る.
もう一点興味深いのはdAVF+群65例中7例の患者では,初診時は動脈瘤のみが診断されたが,その後平均2-3年間の追跡期間中にdAVFが発見された点である.またdAVF治療の有無と関係無く,保存的に管理された動脈瘤43個のうち6個が自然に消退している.その機序については記載がないが,dAVFとそれに伴う動脈瘤がダイナミックに変化する血管病理の一部であることが示唆される.
なお,dAVFのみ群に比較してdAVF+群では喫煙(59.3 vs 35.2%)と非合法薬物の使用(5.8 vs 1.5%)が有意に多かったというデータも紹介されている.喫煙と動脈瘤の発生・破裂の関係は良く知られており,その機序については幾つかの推論があるが(文献4),dAVF+群で非合法薬物の使用が多かった意味は不明である.

執筆者: 

有田和徳