未破裂動脈瘤治療後のDWI高信号病変の意義:ヘルシンキ大学の169例

公開日:

2026年5月25日  

The Helsinki Unruptured Intracranial Aneurysm Quality of Care study: a prospective observational study

Author:

Raj R  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Helsinki University Hospital and University of Helsinki, Helsinki, Finland

⇒ PubMedで読む[PMID:41349033]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2025 Dec
巻数:144(3)
開始ページ:507

【背景】

未破裂動脈瘤に対する治療の安全性に関する検討で一般に用いられているmRSスコアは術後合併症の検出感度に限界がある可能性がある.
本稿は,ヘルシンキ大学で前向き登録された未破裂動脈瘤治療症例の中から2022年12月から2024年8月に治療が実施された169例(血管内治療120例,外科手術49例)を対象に,治療後のDWI-MRIにおける高信号の意義を検討したものである.
治療後3ヵ月後の時点で,98%の患者はmRS 0-1であった.mRS悪化は6%,新規神経学的症状は4%に認められた.全体として,治療前に就労していた患者の97%が3ヵ月以内に復職した.
治療後の新規DWI病変の発生率は63%であり,治療群間に差は認めなかった.

【結論】

6個以上のDWI病変は血管内治療群で多かった(14% vs 0%,p =.012).一方,10 mm以上のDWI病変は手術群で多かった(20% vs 8%,p =.016).DWI病変の85%は無症候性であったが,DWI病変の存在は新規の神経症状の出現と相関した(15% vs 2%,p =.006).DWI病変出現と治療後3ヵ月のmRS 0-1の頻度は相関しなかった(有り群96% vs 無し群100%,p =.298).10 mm以上のDWI病変出現は転帰不良と関連し(mRS 0-1の頻度は,有り群84% vs 無し群99%,p =.005),mRS悪化リスクの増加とも関連していた(有り群21% vs 無し群1%,p =.016).

【評価】

mRSスコアならびに重篤な脳卒中発生率は,未破裂脳動脈瘤の治療の主要な安全性指標として一般的に用いられている(文献1-4).しかし,mRSスコアでは手術後合併症の検出感度に限界があることが知られている(文献5).一方,未破裂脳動脈瘤治療後の,DWI-MRIで検出される無症候性の新規の脳梗塞(silent brain infarcts)の発生率は,血管内治療後で47%,クリッピング手術後で最大44%に達する(文献6,7).あらゆる脳虚血性病変は脳機能に長期的影響を及ぼすリスクを有しており,これらのsilent brain infarctsも脳機能にとって長期かつ未解明の影響をもたらしている可能性がある(文献8,9).
本稿の著者らは,現代の未破裂脳動脈瘤の治療は虚血負荷ゼロを目標とすべきであり,この目標を看過している現行の標準治療は,もはや時代遅れである可能性があると考えている.
本研究は,この観点から,術後DWIによる虚血性病変評価と,mRSなどの日常的に用いられている臨床転帰指標との関連を検討することで,現在の未破裂脳動脈瘤治療の安全性および有効性を評価したものである.
その結果,未破裂脳動脈瘤治療後の新規DWI病変の発生率は血管内治療群,手術群ともに63%であり,治療群間に差は認めなかったが,6個以上のDWI病変の発生は血管内治療群で多く,10 mm以上のDWI病変は手術群で多かった. DWI病変の大部分は無症候性であったが,DWI病変の存在は新規の神経症状の出現と相関し,特に10 mm以上のDWI病変出現は転帰不良と相関した.
著者らはこの結果を受けて,未破裂脳動脈瘤治療後には,臨床転帰およびmRS転帰が良好であっても,新規DWI病変は高頻度に認められる.mRSのみでは,治療に関連した虚血による神経学的影響を十分に捉えられない可能性があり,DWIによる評価は,有用な追加情報を提供し得るとまとめている.
確かに,DWI病変はmRSには反映しきれない,軽度の高次脳機能障害を惹起する可能性があり,今後の未破裂脳動脈瘤治療の評価ならびに治療法の比較にあたっては治療後のDWI病変の正確な評価が必須となるかもしれない.

執筆者: 

有田和徳