中等径または遠位動脈閉塞による虚血性脳卒中に対する血栓回収療法は無効:フランスにおけるDISCOUNT試験

公開日:

2026年8月27日  

Mechanical Thrombectomy in Ischemic Stroke With a Medium or Distal Arterial Occlusion: The DISCOUNT Randomized Clinical Trial

Author:

Clarençon F  et al.

Affiliation:

Department of Neuroradiology, Department of Neuroradiology, Pitié-Salpêtrière Hospital, Paris, France

⇒ PubMedで読む[PMID:42485024]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2026 Jul
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

2025年に報告された中等径または遠位血管閉塞の急性閉塞(MDVO)に関する2つのRCT(ESCAPE-MEVO,DISTAL)は血栓回収療法の有用性を支持していないが(文献1,2),2026年に報告された2つのRCT(ORIENTAL-MeVO,DISTALS)ではMDVOに対する血栓回収に肯定的な結果が報告されている(文献3,4).
本DISCOUNT試験は2021年11月からフランスで実施されたRCTである.対象は,MDVOによる急性虚血性脳卒中患者で,発症8時間以内に受診したか,最終健常確認から24時間以内で発症しFLAIR画像に高信号を認めない成人244例.年齢中央値は75歳,NIHSS中央値は8(IQR 6-12).

【結論】

対象患者を内科治療単独群(n =121)と内科治療+血栓回収群(n =123)に割り付けた.217例が3ヵ月までの追跡を完了した.
3ヵ月時点の良好な臨床転帰(mRS 0-2)は血栓回収群72/116例(62%),対照群81/119例(68%)で,調整オッズ比0.73(95%CI 0.40-1.31,p =.29)であった.血栓回収療法を受けた100例では,受けなかった患者と比較して症候性頭蓋内出血(11% vs 3%,p =.008),くも膜下出血(13% vs 2%,p <.001),塞栓の新規領域への移動(5% vs 1%,p =.04)が多かった.死亡率に有意差はなかった(6% vs 8%,p =.49).

【評価】

本研究(DISCOUNT試験)の結果を要約すると,中等径または遠位血管閉塞による急性虚血性脳卒中に対する血栓回収療法は臨床転帰を改善せず,出血リスク増加を伴ったということになる.このDISCOUNT試験における予定登録数は488例であったが,中間解析後,血栓回収群で症候性頭蓋内出血が増加し,かつ無益性が示されたことから,安全性モニタリング委員会の勧告により試験は中止され,登録数244例で終わっている.
著者らは,本DISCOUNT試験においてMDVOに対する血栓回収療法が有意な利益(3ヵ月時点のmRS 0-2の患者の高い割合)を示さなかった理由として,①本試験では,対象患者の66%では静注血栓溶解治療(IVT)が無作為割り当て時に開始済みまたは開始予定であり,IVTを含む最良の内科治療単独がMDVO患者で既に高い有効性を有することを反映している可能性,②症候性頭蓋内出血が血栓回収群で3倍以上多かったこと,③対象患者が高齢(中央値75歳)で,NIHSS中央値が8と低かったこと,このことから,より若年で重症の患者は,対照群への割り当てが治療機会の損失になりうると治療担当者が判断し,登録されなかった可能性があること,④症状発症から血栓回収開始までが258分と長かったことなどを挙げている.
一方,先行するORIENTAL-MeVO試験は,中間径動脈の閉塞を有する中等症から重症(NIHSS ≥6点)の脳梗塞で,発症後24時間以内に来院した成人563例を対象としたRCTである(文献3).その結果,内科治療+血栓回収療法は内科治療単独と比較して,機能的自立(mRS 0-2)を有意に改善することを明らかにしている.ORIENTAL-MeVO試験では,約4割がM2閉塞であった.注意しなければならないのは,このDISCOUNT試験では約6割がM2閉塞であったが,M2でも島皮質中間高より遠位のM2閉塞のみが対象となっていたことである.この症例選択の違いが有効性の差に反映された可能性は否定できないように思われる.
現在,オーストラリア主導の新規プロトコールでの国際RCT(FRONTIER-AP-X,ACTRN12621001746820)が進行中である.この試験は従来報告されているRCTの結果を受けて,対象患者はM2/M3閉塞のみ,NIHSS ≥8,ペナンブラ・ミスマッチ ≥10 mL,ratio ≥1.2などとより限定されている.その結果に期待したい.同時に,従来報告されているRCT(ESCAPE-MeVO,DISTAL,ORIENTAL-MeVO,DISTALS,DISCOUNT)の結果を統合し,どのMeVO・MDVO患者が血栓回収療法の真の恩恵を受けるかが明確化されることを期待したい.また,MeVO・MDVOに対して現在用いられている血栓回収デバイスの多くは脳主幹動脈閉塞(LVO)用デバイスを小型化したものにすぎない.デバイスの最適化も今後の課題であろう.

執筆者: 

有田和徳