減圧開頭術後のベッドサイドでの経頭蓋超音波検査の診断能:頭部CTとの比較

公開日:

2026年11月6日  

Diagnostic performance of bedside transcranial ultrasound after decompressive craniectomy: a comparative study with cranial computed tomography

Author:

Kwiatkowski A  et al.

Affiliation:

Department of Clinical Neuroscience, Wrocław University of Science and Technology, Wrocław, Lower Silesia, Poland

⇒ PubMedで読む[PMID:42826408]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Oct
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

減圧開頭術(DC)は,重症頭部外傷,広範囲脳梗塞,脳出血などに伴う難治性頭蓋内圧亢進に対する重要な治療法である(文献1).一方,DC術後には血腫,水頭症,脳浮腫,感染などの合併症が生じるため,継続的な画像評価が必須である(文献2).頭部CTは標準的検査であるが,反復撮影による放射線被曝,重症患者の搬送に伴うリスクが問題となる(文献3).減圧開頭部を音響窓として利用するベッドサイド経頭蓋超音波検査(BTUS)は,非侵襲的で反復可能な画像診断法として注目されている(文献4).
本稿は,DCを受けた88例を対象に,術後2-9日にBTUSを施行し,BTUS後24時間以内に撮影された頭部CTと比較した後方視研究である.

【結論】

対象88例の平均年齢は約55歳であった.BTUSとCTの診断一致度は脳内血腫(κ =0.963),硬膜下水腫・硬膜下膿瘍(各0.903)で極めて高く,硬膜下血腫(0.875),正中偏位(0.861),水頭症(0.821)でも高かった.一方,脳浮腫では0.626と中等度にとどまった.BTUSの感度は脳内血腫および硬膜下血腫で100%,正中偏位88.9%,水頭症83.3%,脳浮腫59.4%であった.特異度は全項目で94.2-100%,陰性的中率は80%以上であった.全88例中12例でBTUSとCTの所見が一致せず,9例ではBTUSが異常を見逃し,3例ではBTUSのみが異常を示した.

【評価】

本研究は,ポーランドWrocław大学で2023年1月からの2年間にDCを行った88例を対象に,BTUSの所見と,BTUS後24時間以内に行ったCT所見を比較したものである.評価項目は水頭症,硬膜下血腫,硬膜下水腫,硬膜下膿瘍,脳内血腫,脳膿瘍,脳浮腫,正中偏位の8項目で,その結果,BTUSとCTの診断一致度は脳内血腫,硬膜下水腫,硬膜下膿瘍で極めて高く(κ >0.9),硬膜下血腫,正中偏位,水頭症でも高かった(κ >0.8).
興味深いのは,1年間でDC実施数が平均40例以上という点で,これは著者らの施設に,特に重症の脳疾患患者が集積しているためか,あるいはDC実施の適用範囲が広いためかは不明である.DC実施症例の背景を明らかにして欲しかった.
本研究では,DC術後の合併症に対するBTUSの診断能が高いことが明らかになった.DC後のベッドサイド超音波検査の有用性は以前から報告されていたが(文献4),本研究は複数の術後合併症を同一集団で比較した点が特徴である.特に血腫性病変の検出精度は高く,重症患者の院内搬送やCT撮影を減らせる可能性を示した.一方,脳浮腫の感度は59.4%にとどまり,びまん性病変や軽度の正中偏位の評価には限界がある.またBTUSでは,検者の技量や画像描出条件も診断精度に影響するはずである.
すなわち,BTUSは患者移動が不要で,放射線被爆の問題も避けられるため,DC術後のCTによるスクリーニングと経時的モニタリングを補完する手段として有用ではあるが,現段階ではCTに代わるものではない.
今後は前向き多施設研究により本研究結果を検証すると同時に,CT検査が必要となる臨床的判断基準やBTUS所見を明確にする必要がある.

執筆者: 

有田和徳