公開日:
2020年9月24日最終更新日:
2020年9月29日Consequences of the COVID-19 Pandemic on Manuscript Submissions by Women
Author:
Kibbe MR et al.Affiliation:
Division of Vascular Surgery, UNC Department of Surgery, Chapel Hill, NC, USAジャーナル名: | JAMA Surg. |
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発行年月: | 2020 Aug |
巻数: | Online ahead of print. |
開始ページ: |
【背景】
COVID-19パンデミックの影響は感染者のみならず社会の広範な領域に及び,性や人種などに基づく既存の社会格差や不平等を拡大している.COVID-19パンデミック中の2020年3月15日~4月15日に,2個のプレプリント・サーバー(arXiv.orgとbioRxiv.org)に投げ込まれた論文数は,男性論文が女性論文の数を上回って増加している(文献1).また,12個の医学雑誌上で2020年に出版されたCOVID-19関係の論文1,893本の筆頭著者の女性割合を同じ雑誌上で2019年に出版された85,373本のそれと比較すると19%も低い(文献2).
【結論】
UNC血管外科のKibbe MRは,自らが編集長を務めるJAMA Surgeryへの論文投稿数の変化からこの問題の深刻さを再検討している.2020年4月と5月に,同誌に投稿された論文の執筆者における女性の割合は,2019年の同時期に投稿された論文に比較して,筆頭著者で4%,コレスポンディングで7%減少していた.この結果と既報の2本を併せて,Kibbe MRは,COVID-19パンデミックは女性研究者の子育てや家事に関わる時間を増やし,研究時間を削り,論文投稿数を減らしており,これは女性研究者の将来のアカデミック・キャリアー形成や在任期間に悪影響を与えるであろうと推測している.
【評価】
最近のCOVID-19に関する膨大な論文の中でも特に注目を引く異色のエディトリアルである.参考までにKibbe MRの記載したエピソードを紹介したい.「パンデミックの期間はテレメディスン,テレカンファランス,バーチャルトークも増えてきた.女性研究者や女性スタッフがこれらの仕事を行っている最中に,彼女たちの子どもによってセッションが妨げられるのは見てきたが,男性の同僚達が同じ目に遭うのは見たことがない.」
さらに彼女は,この問題の解決は容易ではないと述べながらも,まず女性研究者・スタッフが働きやすい時間シフトへの変更,教育機関では彼女たちの在任期間の延長,研究費終了期間の延期や研究費の翌年への持ち越しなどを具体的に提案している.これらの取り組みが子育て期間中の女性研究者・スタッフの燃え尽きを防ぎ,パンデミック以前に設定した彼女達のゴールへの達成を支援することになるだろうと述べている.
執筆者:
有田和徳関連文献
参考サマリー
- 1) COVID-19アウトブレイク中の急性期脳主幹動脈閉塞患者の特徴:ニューヨーク市
- 2) COVID-19陽性患者の虚血性脳卒中リスクは高い:ニューヨーク市におけるインフルエンザ患者との比較
- 3) COVID-19パンデミックが脳卒中救急に及ぼす影響:米国における脳梗塞自動解析システム(RAPID)使用患者数の変化から
- 4) COVID-19陽性若年者における脳主幹動脈閉塞の5例:NY Mt. Sinai病院から速報
- 5) COVID-19陽性患者における脳血管障害の実態:武漢華中科技大学病院
- 6) COVID-19死亡者密度問題IV 2020/8/17:感染者致死率(IFR)・全人口年間死亡率(PMR),そしてインフルエンザと「アジア太平洋の奇跡」