破裂した脳動静脈奇形をいつ手術するか:15報1,026例のシステマティックレビュー

公開日:

2025年3月28日  

最終更新日:

2025年3月29日

Optimal Timing of Microsurgical Treatment for Ruptured Arteriovenous Malformations: A Systematic Review and Meta-Analysis

Author:

Orscelik A  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Division of Neuroendovascular Surgery, Medical University of South Carolina, Charleston, South Carolina, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:38912816]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2025 Jan
巻数:96(1)
開始ページ:18

【背景】

破裂した脳動静脈奇形(AVM)に対する根治的な治療は顕微鏡下摘出術(MST)であるが,MSTをいつ行うべきかについては議論が多い(文献1,2,3).本稿は15報告1,026例のシステマティックレビューで,破裂からMSTまでの時間が手術の結果に与える影響を解析したものである.
対象の各報告間で,治療前の臨床症状(GCSあるいはmRS),脳内血腫の大きさ,術後の合併症率の不均質は大きかった.
破裂からMSTまでの時間を48時間未満か以上,1週間未満か以上,2週間未満か以上,1ヵ月未満か以上に分けた.
一次アウトカムは転帰良好(mRS:0-2かGOS:4-5)とした.二次アウトカムは周術期死亡率,完全摘出率などとした.

【結論】

破裂からMSTまでの時間が48時間以上の群では48時間未満の群と比較して転帰良好率が有意に高く(p <.01),死亡率が有意に低かったが(p =.04),完全摘出率には有意差はなかった.術前に塞栓術を行った症例を除いても,48時間以上の群では,転帰良好率が有意に高かった(p <.01).SMグレード1-2か3-5に分けても,あるいはSPクラスAかクラスB-Cに分けても,破裂からMSTまでの時間が48時間以上の群では転帰良好率が有意に高かった(ともにp =.01).
破裂からMSTまでの時間を1週間,2週間,1ヵ月で分けた場合,それ未満か以上によって,転帰良好率,死亡率,完全摘出率に差は生じなかった.

【評価】

本研究は,AVM破裂から顕微鏡下摘出術(MST)までの時間が48時間以上の群では,48時間未満の群と比較して転帰良好率が有意に高く,死亡率が有意に低いことを示した.さらに,破裂からMSTまでの時間が延長するに従って転帰良好率が上昇する傾向が認められた.
ただし,48時間以上の群では48時間未満の群と比較して治療前のGCSが高く(p =.04),血腫体積が小さかった(p =.04).またSMグレードの低い(1-2)AVM患者の80.6%では48時間未満の早期にMSTが,SMグレードの高い(3-5)患者の57.6%では48時間以降にMSTが行われているなど,群間の背景因子の差が大きいことに注意をはらう必要がある.
従来,破裂AVMに対しては,特に大きな血腫を伴う場合や,急速な臨床症状の悪化を示す場合は,早期の摘出術の有用性が指摘されてきた(文献4,5).一方,AVM破裂後1-6週間の“休息期間”を置くことによる,隣接する脳の安定化とそれによる合併症率の低減も期待されてきた(文献6,7).しかしながら,長期の待期時間が医療費の上昇につながるのも事実である(文献8).さらに,この待期時間中の再破裂のリスクも無視できないであろう.
本研究結果は,血腫量が多かったり神経症状の悪化が認められるような症例を除けば,AVM破裂後少なくとも48時間は待期時間を置いた方が摘出術後の機能予後が良く,死亡率が低いことを示唆している.さらに長期の待機時間の妥当性については,今後明らかにされることを望む.

執筆者: 

有田和徳