ガドリニウムによる動脈瘤壁全周性造影は脳動脈瘤の増大または破裂の強いリスク因子である:中国83施設1,351例の前向き研究

公開日:

2025年11月10日  

Gadolinium-Enhanced Aneurysm Wall Imaging and Risk of Intracranial Aneurysm Growth or Rupture

Author:

Liu Q  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Beijing Tiantan Hospital, Capital Medical University, Beijing, China

⇒ PubMedで読む[PMID:40920406]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2025 Sep
巻数:
開始ページ:e253209

【背景】

未破裂脳動脈瘤は年間0.6-2%が破裂すると報告されており,年齢,動脈瘤径,局在が主要な破裂リスク因子として挙げられている(文献1-5).近年,これらの因子以外に,動脈瘤壁の性状や造影効果などの血管壁イメージングを基にした破裂予測も報告されるようになっている(文献6-8).しかし,動脈瘤壁の造影効果に関するこれまでの報告の多くは横断研究で症例数も充分ではない.
本研究は,過去8年間に中国83施設で実施された3件の前向きコホート研究参加の症例1,351例(1,416個)を対象に,初診時の3テスラMRIでの動脈瘤壁造影効果が,追跡期間中の動脈瘤の不安定化(増大または破裂)の予測因子となり得るかを検討したものである.

【結論】

動脈瘤径中央値は5.8 mm(IQR:4.0-7.4),追跡期間中央値は4.0年(0.1-4.0).初診時の動脈瘤壁造影効果は全周性18%,限局性27%,造影効果なし55%であった.4年間の追跡で235個(16.6%)の動脈瘤に不安定化(増大186例[13.1%],破裂49例[3.5%])が認められた.不安定化率は全周性で36.8%,限局性で17.2%,造影効果なしで11.4%であった.
全周性造影は4年以内の不安定化を強く予測し(ハザード比[HR]3.80,95% CI 2.82-5.14),動脈瘤のサイズ比(高さ/母血管径),部位,形状,分岐部構造で補正後も独立した予測因子であった(調整HR 2.21,95% CI 1.56-3.13).

【評価】

現在の破裂および増大リスク予測モデル(PHASESスコア,ELAPSSスコアなど)において,最も重要な予測因子は動脈瘤の大きさと部位である(文献4,5).しかし,未破裂脳動脈瘤の病態の本質は動脈瘤腔内ではなく,むしろ動脈瘤壁にあるという認識が高まりつつある.ガドリニウム静注後に動脈瘤壁の造影効果が認められることがあり,これは動脈瘤壁や血管外膜血管(vasa vasorum)の炎症,動脈硬化性変化,あるいは緩徐な血流現象を反映している可能性がある(文献9-11).これまでの研究では,動脈瘤壁の造影は,増大や破裂リスクの高い動脈瘤でより頻繁に観察されることが示されている(文献6-8).しかし,従来の研究の多くは横断研究で,症例数も限られていた.
本研究は,北京天壇病院などの中国83施設で実施された前向きコホート研究の参加者1,351例(1,416個)を4年間追跡したものである.その結果,動脈瘤壁の全周性の造影を示す未破裂動脈瘤が4年間のうちに不安定化(増大か破裂)する確率は実に36.8%と高いことが明らかになっている.
今後,従来から知られている未破裂動脈瘤の破裂あるいは増大の予測因子である年齢,大きさ,形状,局在などに,この動脈瘤壁の造影パターンを加えた新たなスコアリング・システムが登場すれば,未破裂動脈瘤の破裂予測はより正確になる可能性が高い.

執筆者: 

有田和徳

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