発症後4.5時間から24時間の脳梗塞患者に対する経静脈的tPA(アルテプラーゼ)投与:中国におけるHOPE試験

公開日:

2026年2月20日  

Author:

Zhou Y  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, the Second Affiliated Hospital of Zhejiang University, School of Medicine, Hangzhou, China

⇒ PubMedで読む[PMID:40773205]

ジャーナル名:JAMA.
発行年月:2025 Sep
巻数:334(9)
開始ページ:788

【背景】

脳梗塞発症後4.5時間を超えてからの経静脈的血栓溶解療法(IVT)の安全性および有効性については,いまだ不明である.本研究は発症後4.5時間から24時間の経静脈的アルテプラーゼ投与に関して,中国26施設で実施されたオープンラベルRCTである.対象となったのは発症後4.5時間から24時間に受診した急性期脳梗塞患者で,脳灌流画像上で救済可能な虚血領域が存在し,機械的血栓除去の対象にならなかった372例(年齢中央値72歳).これらの対象患者は虚血コア体積 ≤70 mL,低灌流(トレーサー到達時間 >6秒)組織体積/虚血コア体積比 ≥1.2,低灌流組織体積と虚血コア体積の差 ≥10 mLなどの条件を満たしていた.

【結論】

186例にはアルテプラーゼ0.9 mg/kgが投与され,186例には標準的な薬物療法が実施された.有効性に関する主要アウトカムは発症90日後のmRS:0-1とした.
主要アウトカムはアルテプラーゼ群で40%,対照群で26%で得られた(調整リスク比1.52[95%CI,1.14-2.02],p =.004).
発症後36時間以内の症候性頭蓋内出血はアルテプラーゼ群で3.8%,対照群で0.51%で認められた(調整リスク比7.34[95%CI,1.54-34.84],p =.01).
発症90日までの全死亡は両群とも11%であった(調整リスク比0.91,p =.76).

【評価】

現在世界中で実施されている,急性期脳梗塞に対する経静脈的血栓溶解療法(IVT)の標準的治療時間枠は,症状発現後4.5時間以内であるが,急性期脳梗塞患者の大多数は発症4.5時間を超えて脳卒中センターに着院しており,IVTの適応とはならない.適切な患者選択に基づいて治療時間枠を24時間まで拡大できれば,IVTの恩恵がもたらされる患者は大幅に増加するはずである(文献1).先行するEXTEND試験およびその後のメタアナリシスでは,最終健常確認後4.5〜9時間(wake-up strokeを含む)に来院し,画像上で灌流ミスマッチ(救済可能な虚血領域が十分に存在する)を示す患者では,アルテプラーゼによるIVTが90日後の機能予後良好をもたらすことが示された(文献2,3).さらに,側副血行が良好な患者では,救済可能な虚血組織が24時間を超えて残存し得ることが示唆されている(文献4,5).
既にテネクテプラーゼに関しては,2024年に結果が報告されたTRACE-3試験で,血栓回収療法にアクセスできない前方循環(ICAかMCA)大血管閉塞患者においては,発症後4.5〜24時間のテネクテプラーゼ静注によって機能予後が改善することが報告されている(文献6).
本HOPE研究は2021年からの3年間に中国26施設で実施されたもので,CT灌流画像により救済可能な脳組織が十分にあると推定され,かつ血栓回収治療を受けなかった急性期脳梗塞患者(後方循環を含む)では,発症後4.5〜24時間のアルテプラーゼ静注は,症候性頭蓋内出血を増加させるものの,90日後の機能予後の改善(mRS:0-1の頻度の上昇)をもたらすことを明らかにした.近年の報告では,遠位中間径動脈閉塞(MEVO)患者は血栓回収療法の利益を受けないことが示されている(文献7,8).一方本試験では,対象患者の37%が主幹動脈閉塞ではなく遠位部動脈閉塞であった.
本HOPE研究の結果は,血栓回収が困難なセンターや時間帯に発症4.5時間を超えて搬入された患者では,たとえ遠位部動脈閉塞の患者であっても,十分な灌流ミスマッチ領域があれば,24時間以内のアルテプラーゼ静注が機能予後の改善をもたらすことを示唆している.本邦でも今後,多施設研究が行われることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳