T2信号強度比で髄膜腫の硬さが予測できる:USCケック医学校の188例

公開日:

2026年4月11日  

T2-Weighted MRI Signal Intensity Ratio Predicts Intraoperative Intracranial Meningioma Consistency: A Retrospective Cohort Study

Author:

Shah I  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Keck School of Medicine of the University of Southern California, Los Angeles, CA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41677358]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2026 Feb
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

術前MRIの信号強度に基づく髄膜腫の硬さの推定指標としては,T2信号,DWI信号,ADC値などが提案されてきたが(文献1-5),日常臨床で使用可能な簡便な画像評価法は少ない.USCケック医学校脳外科は,T2信号強度を髄膜腫と中小脳脚との信号強度比(TCTI比)として定量化した.また腫瘍の硬さは,吸引可能か,腫瘍被膜が容易に折りたたみ可能か,鋭的剥離を要するか,硬く石灰化しているか,一塊切除が必要かなどの組み合わせで5段階(グレード5が最も硬い)に分けた.
2012年以降の12年間に摘出を行った188例(WHOグレード1:105例,グレード2:81例)を対象にTCTI比と硬さの相関を前向きに評価した.

【結論】

腫瘍全体のT2平均値のTCTI比は,硬さグレード3の腫瘍(平均値1.71,基準群)と比較して,硬さグレード4+5の腫瘍では有意に低く(1.41,p <.001),グレード1+2の腫瘍では有意に高かった(1.98,p <.004).腫瘍内T2値最大部分(ROI)を用いても同様であった.
一方,腫瘍の硬さとADC値との間には関連を認めなかった.
共変量調整後解析において,TCTI比は平均値および最大ROI値のいずれも,腫瘍の硬さの独立した予測因子であった.
ROC解析では平均値TCTI比のカットオフ値1.536は,感度75%,特異度100%で硬さグレード1+2とグレード4+5を区別した.

【評価】

中小脳脚は,灰白質を含まない均質の大きな白質線維の塊である.このため,最近はT2信号の内部基準として,大脳皮質ではなく中小脳脚を用いる報告が出てきている(文献6,7).著者らも中小脳脚T2信号値を標準として用い,髄膜腫のT2信号値をTCTI比(髄膜腫のT2値/中小脳脚のT2値)として定量化した.その結果,TCTI比は彼らが定めた腫瘍の硬さグレード(グレード1か2,グレード3,グレード4か5)と良く相関したという.
この相関の理由として著者らは,柔らかい髄膜腫は硬い腫瘍と比較して水分含量が高く,コラーゲン成分が少ないためであると考えている(文献8,9).水は本質的にスピン-スピン緩和時間が長く,位相の散逸が遅延するため,T2強調画像では高信号として描出される(文献10).また,柔らかい腫瘍の基質は粘液様あるいは粘液腫様組織から構成されることが多いが,これらは水に類似した物理特性および緩和時間を示す.
一方,DWIおよびADC値も腫瘍組織中の水分子拡散速度を反映するので,腫瘍内水分含量の代替指標として,髄膜腫の硬さの予測に利用できる可能性がある.しかし,本研究ではADC値と腫瘍の硬さグレードとの間に有意な相関は認められなかった.この理由として著者らは,腫瘍周囲の豊富な血流がT2信号よりもADC信号に強く影響を与える可能性や,ADC信号強度の測定信頼性や空間分解能の低さの可能性を挙げている.
腫瘍のT2値と中小脳脚のT2値は容易に測定できるので,本稿が示すように,TCTI比によって腫瘍の硬さが予測できるのであれば,それに従って適切な開頭範囲やアプローチを設定することが可能であろう.たとえ大きな髄膜腫であってもTCTI比が高ければ,小さな開頭で全摘出できることになる.今後の大規模な追試に期待したい.

執筆者: 

有田和徳

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