脳室内進入を伴う膠芽腫の摘出術では進入側脈絡叢の電気凝固が術後水頭症を予防する:UCLAの290例

公開日:

2026年5月5日  

Choroid Plexus Cauterization Prevents Postoperative Hydrocephalus in Adult Glioblastoma Resection With Ventricular Entry

Author:

Harper SD  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, David Geffen School of Medicine, University of California, Los Angeles, Los Angeles, California, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:41972763]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2026 Apr
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

膠芽腫細胞は側脳室壁に隣接する脳室下帯へ浸潤する傾向を有する(文献1).このため,造影領域を超えた脳室下帯の切除がPFSを延長する可能性が報告されている(文献2,3).しかし,そのような手術で脳室が開放された場合,術後水頭症の発生率が高まることが報告されている(文献4,5).
UCLA脳外科は,2014年以降に行ったIDH野生型膠芽腫の手術において,脳室が開放された症例に対する脈絡叢動脈電気凝固術(CPC)が術後水頭症発生を抑制するかどうかを検討した.
対象はCPCを行わなかった後ろ向きコホート260例と,単一術者(責任著者)による腫瘍摘出後にCPCが行われた前向きコホート30例.

【結論】

CPCを行わなかった260例では,25.8%に術後水頭症を認めた.水頭症を発症した症例では,再入院回数が多く(2.3 vs 0.6;p <.0001),3ヵ月後のKPSは低値であった(64.4 vs 78.6;p <.0001).全生存期間には差を認めなかった.
CPCを施行した30例では,手技に関連した合併症は認めなかった.術後MRIでは進入側の脳室の脈絡叢体積は50%減少していた.同一術者による過去のCPCなし手術35症例と比較すると,CPC実施症例では術後水頭症の発生率は有意に低下していた(3.3 vs 25.0%;p =.02320).また再入院回数も減少していた(p =.0330).

【評価】

従来から,膠芽腫手術における脳室開放が術後水頭症の発症リスクを高めることが示唆されていたが(文献4,5),本研究の後ろ向きコホート(脈絡叢動脈電気凝固縮小術を行わなかった260症例)でも,約26%で水頭症が続発していた.このうち34例(50.7%)が外水頭症,22例(32.8%)が閉塞性水頭症,11例(16.4%)が交通性水頭症であった.水頭症発症時期を早期(≤30日)と晩期(>30日)に層別化したところ,早期発症例(n =33)では外水頭症が大半を占め(23/33,69.7%),閉塞性(6/33,18.2%)および交通性(4/33,12.1%)は少数であった.一方,晩期発症例(n =34)では,閉塞性水頭症が最多(17/34,50.0%)となり,外水頭症(9/34,26.5%),交通性水頭症(8/34,23.5%)がこれに続いた.
一方,摘出術終了時に進入側脳室内の脈絡叢を電気凝固した症例では,水頭症の発生は1例(3.3%)に過ぎず,再入院も有意に少なかった(0.5 vs 1.1;p =.0330).明瞭な違いである.
CPCは脈絡叢からの髄液産生を減少させる手技であり,主として小児水頭症に対して内視鏡下第三脳室底開窓術と併用されてきた(文献6,7).また,小児の機能的半球切除後にCPCを実施することで術後水頭症の発生率が有意に低下したとする報告もある(文献8).CPCは比較的単純かつ安全な手技であり,CPCによって術後水頭症の発生を予防できるのであれば,限られた生命予後の膠芽腫患者の入院日数を短縮でき,QOLを高める可能性が高い.
ただし,本研究対象では,開放された脳室の修復手技がCPC群と非CPC群で一定であったのかなど,交絡の可能性も完全には否定できないように思われる.今後,手術手技標準化の上で,RCTによって本研究の発見が検証される事を期待したい.

執筆者: 

有田和徳

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