脳底動脈急性閉塞に対する血栓回収の効果は心原性塞栓でも動脈硬化性閉塞でも一緒: 中国ATTENTIONレジストリーより

公開日:

2026年5月5日  

Impact of cardioembolism versus large-artery atherosclerosis etiology on endovascular treatment for acute basilar artery occlusion: an analysis from the ATTENTION registry

Author:

Zhang C  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, The First Affiliated Hospital of Anhui Medical University, Hefei, China

⇒ PubMedで読む[PMID:41931841]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2026 Apr
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

中国のATTENTION試験(RCT)は,急性脳底動脈閉塞に対する血栓回収治療が薬物療法単独と比較して良好な転帰をもたらすことを2022年に報告した(文献1).では,閉塞の病因が動脈硬化性(LAA)か心原性塞栓(CE)かによってその効果に違いはあるのか?
本稿はATTENTION試験を実施した施設を中心に,中国48施設で継続している前向き登録研究(ATTENTIONレジストリー)に基づいて,この問題を検討したものである.対象は2017年以降に急性脳底動脈閉塞に対して血管内治療が実施された1,739例(LAA 855例,CE 884例)である.CE群はLAA群に比して高齢であった(p <.001).

【結論】

LAA群では114例(17.4%)にタンデム閉塞を認め,52例(8.0%)で急性期血管形成術が施行された.
再灌流成功(mTICI 2b-3)はCE群で有意に高かった(84.7 vs 79%,p =.001).
発症90日後のmRSスコア分布はLAA群とCE群で同等であり,中央値はいずれも5(IQR 2-6)であった.mRS 0-1,0-2,0-3の割合にも有意差は認められなかった.90日死亡率および3日以内の症候性頭蓋内出血の発生にも両群間で有意差はなかった.発症から6時間以内および6時間超で治療された患者に分けても,90日後mRSスコア分布に差はなかった.年齢や性別も転帰に影響を与えなかった.

【評価】

急性脳底動脈閉塞は全虚血性脳卒中の約1%を占めるが,患者の80%が重度の障害または死亡に至る重篤な疾患である(文献2).急性脳底動脈閉塞に対する血栓回収の初期のRCTであるBESTやBASICSは,薬物療法単独に対する血栓回収の優位性を示すことはできなかった(文献3,4).しかし近年のATTENTIONおよびBAOCHE試験では,血栓回収治療が薬物療法単独に対して優越することが示されている(文献1,5).
脳底動脈閉塞の病因が心原性塞栓であっても動脈硬化性閉塞であっても,血栓回収治療の効果と安全性は同一なのかという疑問は当然ながら起こってくる.
一部の研究では,心臓または大血管由来の塞栓による脳底動脈閉塞症の患者では,動脈硬化による閉塞の患者よりも血栓回収後の臨床転帰が良好であるとされているが(文献6,7),他の研究では病因間で臨床転帰に差はないと報告されている(文献8,9).本研究は1,739例という過去最大の症例数の急性脳底動脈閉塞を対象に,病因の違いが血栓回収の効果と安全性に与える影響を検討したものである.病因については,心原性塞栓は,心房細動や粗動,左室内血栓,弁膜症,心腔内腫瘍などに関連した急激な閉塞と定義し,動脈硬化による閉塞は,脳底動脈における動脈硬化性変化,他血管領域における動脈硬化の存在および心原性塞栓源の欠如を示すものとした.その結果,再灌流成功率(mTICI 2b-3)は心原性塞栓群で高かったが,治療後の臨床転帰は病因に左右されなかった.こうした傾向は,治療開始時間を発症後6時間前と後に分けても変わりはなかった.
この結果は再灌流の成功=転帰良好という予測に反するものであるが,著者らはこの理由の一つとして,動脈硬化による脳底動脈閉塞の場合,慢性的な血管狭窄により側副血行が発達していることが多く,これが脳血流の維持,梗塞体積の縮小,機能回復の改善に寄与する可能性があると推論している.
本研究の結果は,急性脳底動脈閉塞の病因が動脈硬化による閉塞であることをもって血栓回収治療を忌避すべきではないことを示唆している.この結果は今後,他施設あるいは中国以外の症例で検証されるべきであろう.

執筆者: 

有田和徳

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