術前CT所見に基づく慢性硬膜下血腫の再発予測スコアの作成

公開日:

2026年5月6日  

Recurrence prediction in chronic subdural hematomas: a risk stratification score based on 118 consecutive patients

Author:

Lioi MC  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery Policlinico Umberto Primo, Rome Sapienza University of Rome, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:40519875]

ジャーナル名:Brain Spine.
発行年月:2025 May
巻数:5
開始ページ:104286

【背景】

外科的治療後の慢性硬膜下血腫の文献上の再発率は2.3-33%とかなりばらついているが,10-20%前後とするものが多い(文献1-4).それでは再発のリスク因子は何か?
ローマ・サピエンツァ大学脳外科は,自験の118例を対象に頭部単純CT所見における再発リスクを解析した.血腫濃度は高吸収(CT値 >40-50 HU)と低・等吸収(≤40 HU)に分けた.大脳皮質萎縮の評価には全般的皮質萎縮(GCA)スケール(0:なし-3:高度萎縮)を用い,なし(0)とあり(1-3)に分けた.血腫内部構造はNakaguchiの分類(均一型,上下分離型,層状型,索状型)を用い(文献5),均一型か上下分離型/層状型か索状型に分けた.

【結論】

全体での再発は15例(12.7%)で認められ,各リスク因子毎の再発オッズ比は,大脳皮質萎縮あり(OR =25.20),高い血腫濃度(OR=10.39),Nakaguchi分類の均一型か上下分離型(OR =4.86)であった.オッズ比に比例して各リスク因子に点数を割り当てた.すなわち,大脳皮質萎縮あり5点,高い血腫濃度2点,Nakaguchi分類1点.
総スコアは0-8点となり,低リスク群(0-2点),中等度リスク群(3-5点),高リスク群(6-8点)の3群に層別化した.
再発率は段階的に増加し,低リスク群では0%,中等度リスク群では11.76%,高リスク群では25.71%であった.
本モデルはAUC:0.736と良好な識別能を有していた.

【評価】

慢性硬膜下血腫の再発の要因として,脳の萎縮(弾性低下)(文献6),再出血素因(抗凝固薬の使用など)(文献7),手術の種類(文献8),周術期管理(文献9,10)など多くの因子が報告されている.
本稿はローマ・サピエンツァ大学脳外科における118例を対象にした再発リスクの評価である.術前の臨床的重症度(Markwalder scale)では,grade 0(無症状)の症例はなく,grade 1(軽症)が最も多く60例(51%),次いでgrade 2(傾眠傾向または見当識障害)が40例(34%),grade 3(混迷)が18例(15%)であった.手術手技は穿孔洗浄+ドレナージ術で,臨床的再発は血腫に関連する神経症状の再出現または増悪がみられ,再入院または追加治療を必要とした場合と定義した.
本研究では二項ロジスティック回帰解析によって,術前CTにおける大脳皮質萎縮,高い血腫濃度(CT値),血腫内部構造=Nakaguchi分類(均一型か上下分離型)が再発と関連していることを明らかにしたが,その中では,最大のオッズは大脳皮質萎縮(OR =25.20)で,高い血腫濃度(OR =10.39),Nakaguchi分類(OR =4.86)が続いた.著者らがこの3つの因子を組み合わせた再発予測グレーディングシステム(0-8点)を作成したところ,高い識別能で再発を予測したというのが結論である.
このグレーディングシステムを用いて,手術前の段階で高い再発率が予測される症例に対しては,長期のドレーン留置,薬物療法の追加,中硬膜動脈塞栓術などの再発防止策を取ることが可能になるかも知れない.
一方本研究では,従来再発リスクとの関連が報告されている肝疾患,凝固障害,糖尿病などの併発症,術前の抗凝固薬や抗血小板薬の使用と再発との関係は検討されていない.今後はこれらのリスク因子を含めた総合的で簡便な再発リスク予想スコアが登場することを期待したい.

執筆者: 

有田和徳

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