公開日:
2026年6月12日Endoscopic endonasal approach for craniopharyngioma resection in 604 cases: tumor classification, treatment strategies, and surgical outcomes
Author:
Cai K et al.Affiliation:
Department of Neurosurgery, Beijing Tiantan Hospital, Capital Medical University, Beijing, China| ジャーナル名: | J Neurosurg. |
|---|---|
| 発行年月: | 2025 Dec |
| 巻数: | 144(4) |
| 開始ページ: | 901 |
【背景】
頭蓋咽頭腫に対する摘出術の第一選択が経鼻内視鏡手術(EEA)であることは既に語り尽くされた感があるが(文献1-4),全摘出率,再発率,術後合併症の発生を左右する因子については十分にわかっていない.本稿は,中国北京市・天壇病院脳外科のチームが2019年からの約4年間で3種類のEEAモダリティー(視交叉-下垂体間経由,視交叉上・終板経由,斜台経由)を用いて摘出術を行った頭蓋咽頭腫604例の解析である.腫瘍の視床下部への浸潤の程度についてはPugetグレード(文献5)を用いた(0:なし,I:圧排・偏位のみ,II:明らかな浸潤).
【結論】
全摘出(GTR)は89.7%で達成された(初発腫瘍93.7%,再発腫瘍78.8%).非全摘出(NGTR)の独立危険因子は,再発腫瘍,腫瘍体積増大,PugetグレードII,高度石灰化であった.多変量Cox解析では,PFS(無増悪生存)低下と独立して関連した因子はNGTR,PugetグレードIならびにII,嚢胞性腫瘍,石灰化であった.
髄液漏の発生率は3.8%であった.成人例では,低アルブミン血症および大きな硬膜欠損が髄液漏の独立危険因子であった.
小児例では,成人例と比較してGTR率が高く,髄液漏の発生率は低かった.VEPモニタリングにより術後の視機能悪化率は低下した(6.7% vs 12.6%,p =.015).
【評価】
北京市の天壇病院(Beijing Tiantan Hospital)は脳外科を中心とする巨大な三次医療センターで,総病床数1,650床のうち脳神経センターが約600床を占めている.本稿は,この天壇病院でわずか4年間に単一術者(Gui S)による内視鏡下摘出術が実施された604例という膨大な数の頭蓋咽頭腫に関する後方視的な解析で,全摘率,再発率,術後合併症を左右する因子を明らかにしている.主な結果をまとめると全体でのGTR率は89.7%と極めて高い.初発頭蓋咽頭腫症例の下垂体茎温存率は46.1%であった.GTR率は,下垂体茎切除群で95.0%,温存群で92.2%であり,切除群でやや高値を示したが有意差は認めなかった(p =.229).非全摘出(NGTR)の独立危険因子は,再発腫瘍,腫瘍体積増大,PugetグレードII,高度石灰化であった.また,PFS(無増悪生存)低下と独立して関連した因子はNGTR,PugetグレードIならびにII,嚢胞性腫瘍,石灰化であった.
一方,髄液漏の発生率は,全期間では3.8%であったが,2019年の7.4%から2023年には1.6%に急速に低下している.この理由について著者らは,術者の経験の重要性が示されたと述べているが,ピッツバーグ大学で神経内視鏡手術を学んだ責任著者(Gui S)が,帰国後母国の北京・天壇病院で急速に経験を積んだことを反映しているものと思われる.しかし,この4年間で具体的に手術手技上の何が変わったのかを明らかにしてほしかった.
なお,術後副腎皮質機能低下症および甲状腺機能低下症は,それぞれ442例(73.7%),456例(76%)で認められたとのことであるが,最近のシリーズやメタアナリシスによれば,頭蓋咽頭腫に対するEEA後の新規下垂体機能低下症の出現は30-50%前後と報告されており(文献6-8),本研究のシリーズの90%という高いGTR率を達成するためにかなり積極的な手術が行われたことが窺われる.また,術後視機能悪化は8.8%で認められたが,VEPモニタリング使用例では視機能悪化率は有意に低下した(p =.015)という.やはり,頭蓋咽頭腫のEEAではVEPモニタリングは必須であろう.
さらに,著者らは以前に,頭蓋咽頭腫症例では一般人口よりも内頚動脈の未破裂動脈瘤が多いことを報告しているが(文献9),本シリーズでも成人例における未破裂動脈瘤合併率は7.6%で,未破裂動脈瘤合併の最年少症例は28歳であった.この結果を受けて著者らは,28歳以上の成人頭蓋咽頭腫患者では術前CT血管撮影をルーチンに施行することが推奨されると述べている.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Jamshidi AO, et al. A modern series of subdiaphragmatic craniopharyngiomas. J Neurosurg. 131(2):526-531, 2019
- 2) Moussazadeh N, et al. Endoscopic endonasal versus open transcranial resection of craniopharyngiomas: a case-matched single-institution analysis. Neurosurg Focus. 41(6):E7, 2016
- 3) Lei C, et al. Approach selection and outcomes of craniopharyngioma resection: a single-institute study. Neurosurg Rev. 44(3):1737-1746, 2021
- 4) Chen Y, et al. Impact of three surgical approaches on the therapeutic efficacy of intraventricular craniopharyngiomas: a single-center retrospective analysis. Neurosurg Rev. 46(1):238, 2023
- 5) Puget S, et al. Pediatric craniopharyngiomas: classification and treatment according to the degree of hypothalamic involvement. J Neurosurg. 106(1 Suppl):3-12, 2007
- 6) Figueredo LF, et al. Current Role of Endoscopic Endonasal Approach for Craniopharyngiomas: A 10-Year Systematic Review and Meta-Analysis Comparison with the Open Transcranial Approach. Brain Sci. 13(6):842, 2023
- 7) Park HR, et al. After Extended Endoscopic Endonasal Resection of Craniopharyngiomas: Two-Institution Experience. World Neurosurg. 103:465-474, 2017
- 8) Taweesomboonyat C, et al. Factors predicting outcomes of endoscopic endonasal approach in craniopharyngioma patients. J Neurosci Rural Pract. 15(1):74-80, 2024
- 9) Cai K, et al. Adult craniopharyngioma concomitant with unruptured intracranial aneurysms: incidence, risk factors, and treatment strategies. J Neurosurg. 141(6):1712-1722, 2024
参考サマリー
- 1) 大型のう胞性頭蓋咽頭腫に対する二段階内視鏡手術戦略
- 2) 4 cmを超える巨大頭蓋咽頭腫の手術は開頭か内視鏡下の拡大経鼻経蝶形骨洞手術か:北京天壇病院の73例
- 3) 4 cmを超える巨大な頭蓋咽頭腫の治療
- 4) 頭蓋咽頭腫では術前MRIにおける後部視床下部への進展が術後の肥満を予測する
- 5) 経鼻内視鏡単独手術による頭蓋咽頭腫の全摘出の予測因子は何か:ワイルコーネル医科大学の111例
- 6) 成人頭蓋咽頭腫に対する全摘手術の亜全摘手術に対するメリット:メタ解析
- 7) 下垂体茎を切るか切らないか:頭蓋咽頭腫に対する経鼻内視鏡手術
- 8) 成人頭蓋咽頭腫には内頚動脈の未破裂脳動脈瘤が多い:頻度,リスク因子,治療戦略
- 9) 小児頭蓋咽頭腫に対する経蝶形骨洞手術
- 10) 扁平上皮乳頭型頭蓋咽頭腫に対するBRAF-MEK阻害剤の効果と安全性に関する第2相試験:NEJM