医原性脳アミロイド血管症に関する57報告94症例のスコーピング・レビュー:日本が最多

公開日:

2026年11月3日  

Iatrogenic cerebral amyloid angiopathy: a scoping review

Author:

Ikeda S  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Kansai Medical University, Hirakata, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:42601217]

ジャーナル名:J Neurol Neurosurg Psychiatry.
発行年月:2026 
巻数:
開始ページ:

【背景】

脳アミロイド血管症(CAA)は,脳軟膜・皮質の小血管壁にアミロイドβ(Aβ)が沈着し,脳葉型脳出血,大脳皮質表在性の鉄沈着,認知機能障害などを来す疾患で,通常は高齢者に発症する(文献1,2).一方近年,若年期に屍体硬膜移植や死体下垂体由来成長ホルモン投与を受けた患者が,数十年後にCAAを発症する医原性CAA(iCAA)が注目されている(文献3,4).その発症機序として,ヒト由来組織を介したAβ seedの伝播を支持する知見も蓄積している(文献5).特に日本では過去に屍体硬膜の移植が広く行われたため,iCAAを見逃さないことが重要である.関西医科大学神経内科のIkedaらは,過去の報告例のスコーピング・レビューを行い,日本人症例の特徴や発症年齢による臨床像の違い等を検討した.

【結論】

57報94例が解析対象となった.国別では日本からの29例が最多で,英国13例,イタリア11例が続いた.Aβへの曝露イベントは頭蓋内手術が77例(81.9%)と大半を占め,曝露源が判明した例では屍体硬膜が44例(46.8%)で最も多かった.初回曝露年齢中央値は4歳,CAAの初発年齢中央値42歳,潜伏期間中央値36年であった.初発症状は急性脳内出血58例が最多で,痙攣10例,一過性局所神経症候/脳表くも膜下出血(TFNE/cSAH)10例,認知機能障害8例が続いた.日本の症例は全例が頭蓋内手術歴を有し,外傷を契機とする手術が多かった.55歳以上で初発した症例では急性脳出血が少なく,TFNE/cSAHや認知機能障害が相対的に多かった.

【評価】

本研究は,散発的な症例報告にとどまっていたiCAAを94例まで集約し,曝露時年齢,潜伏期間,発症時年齢,初発症状等を明らかにしている.特に潜伏期間中央値36年という所見は,若年期のAβへの曝露が数十年後のCAAに結びつき得ることを示している(文献6,7).また,高齢発症例で急性脳出血が少なく,TFNE/cSAHや認知機能障害が相対的に多いことは,通常の高齢者散発性CAAとの鑑別が困難となることを示唆している(文献8).日本からの報告が多い点は,日本ではかつて死体由来硬膜移植が広く行われた歴史と整合する(文献9).
一方,本研究は症例報告・症例集積研究に基づくため,出版・紹介バイアス,APOEや病理評価の欠損等、限界も多い.したがって国別頻度や年齢群差を実際の疫学的差と解釈すべきではないかも知れない.
しかし,原因不明の若年性CAA患者では遠隔期の脳外科手術歴を必ず調べるべきであるという,日常診療に直結する本論文のメッセージは重視すべきであろう.
ちなみに,凍結乾燥ヒト屍体硬膜(Lyodura,ドイツのBブラウン社)は,1970年代から1990年代にかけて,硬膜欠損に対する補填材料として,世界中,特に日本で大量に使用された.このLyoduraはプリオンで汚染されており,その結果,Lyodura移植後10年以上を経過した患者にCJDが多数発生したが,その過半が日本人であったのは,日本におけるLyodura使用症例数(年間約2万例)を反映したものと思われる.

執筆者: 

有田和徳